土地を買ったが、まだ更地の状態。家が建つのはまだまだ先。この溢れ出る隠し扉欲をどこにぶつけたらいいのか。悩んでいたが、いい案を思いついた。くたびれたガレージに扉をつけて、部屋にする。そして隠し扉をつけるのだ。まずは大工さんに扉をつけてもらい、「部屋」にすることにした。
かくして部屋ができた。ガレージの奥行きは、6mくらい。入り口の高さは160cm。中に入ると200cmくらいの高さはある。
ガレージは、日曜大工をする場所&物置として使いたい。しかし、日曜大工をすると大量の粉塵が出る。物置にあるものに粉塵がふりかからないように、空間をふたつにわけたい。
奥の部屋を隠し部屋にしよう。壁をつくるおおよその工程はこんな感じだ。
以上である。工程は簡単。しかし、丸5日くらいかかった。なぜなら、現状の土地にはインフラが何も通っていないからだ。コンセントも使えないし、トイレもない。無人島とさほど変わらない状況である。3度くらい心が折れかけたが、父が手伝ってくれたのでなんとか形にできた。これから作る人のために作り方をお伝えさせていただきます。
まず、最初に計測を行った。ガレージはぴったりきっちりとした長方形だと思っていたのだが、測ってみると、ななめだったり、でこぼこだったりと、随分といびつだった。現場で騙し騙し進めるのが、楽であった。
ちなみにこの日は、到着直前にガレージのカギを私が忘れていることに気づき、もう一度家にとりに戻るということになった。行きと帰りで2時間のロス。まったく成長していない息子の姿をこれでもかと見せつける形となった。
突っ張り棒は、各社プラスチック製のものから金属製のおしゃれなものまでいろいろ出しているが、ひとつ1000円〜2000円とそこそこする。
今回は業務用のものを買う。つっぱり部分の金具と材木固定用の金具をあわせても600円くらいで安い。
こちらを6セット購入した。本来はつっぱる箇所にはクッション材をかますようだが、コンクリートであればいらないだろう。
横幅360cmの壁と扉を作ろうと思ったら、砦でも作るの?というぐらいアホほど木材がいることがわかった。2×4材や板材も買いまくる。コークスレッドやL字金具は家にあるのを使った。それでも3万円以上かかった。
こちらのコーナンでは、ワンカット30円なのだが、コーナンのアプリを落とすと、なんと!木材10カット無料!すごい!それも何回も使えるそうだ!(1日に1回という上限はあり)
通常のカットのお願いですら「数百円でこんなに働いていただくなんて申し訳ネェ……」という気持ちでいっぱいになるのに、さらに10カット無料なんて太っ腹すぎる。そして、木材の量が凄まじいので、無料の貸し出し車両を借りた。重ねてありがたい。
材料が揃ったので、組んでいこう。
トビラのフレームは、2×4材ではなく、もっと細い材を使った(軽くするため)
なりゆきで寸法を確認せずに進めていたら、壁と扉の位置がめちゃくちゃズレていた。もうこれでいいかなと思って進めようとしたが、父が「重力を利用して垂直を出したら、壁と扉の平行も出せそう」と言ってきた。具体的にはひもに重りをつけてぶら下げるだけなのだが、確かにやってみたら平行が出た!
今日のうちに柱と壁を全部立ててしまおう!と息巻いていたが、柱の数を2本少なく購入していたようで(息子のミスです)、できる作業はここまで。あいからわずダメな息子っぷりを父に見せつけている。
家に帰ると、父がこんな風な化粧板はどうだ、とアイデアを出してくれた。
素敵ではあるが、忍者屋敷にポップさは必要ない。不採用とした。
2日目。足りなかった2×4材の買い出し行う。
家の構造のひとつ、「2×4工法」は、この2×4材を使った工法のことだと知らなかった。2×4材は安くて身近なので、まさかこれで家が建つとは思っていなかった。でかい柱、線で支えるんじゃなくて、家の壁や床、天井など、面で支える方式らしい(段ボール箱みたいなイメージ)。強度もしっかりあるんだとか。今回の壁作りも2×4を柱にして、板を貼って壁を作っているので、2×4工法といっていいだろう。脱線してしまったが、壁と扉を真上からみるとこんな感じになる。
扉は内開き。短冊状に縦に長い板を貼ることによって、壁と扉の間にできる隙間を隠す構造だ。トビラを閉めた時のストッパーもとりつけよう。
写真を撮る余裕があんまりなくて、父の制作姿しか撮影していない。今回の記事は、年金をもらっている男性がひとりで隠し部屋を作っているみたいになっているが、私もがんばって作っていたことを知ってください。いろいろ大変だったが、これでおおよその構造は完成だ。
薄いヒノキ板が1枚300円と安かったのでこちらを選んだ(とはいえ、量が多いので1万円以上したが)。化粧板にコークスレッドを打ち込み、壁の構造材(横に渡してある2×4材)と固定する。
今回はワトコオイルを使った。全ての傷や汚れを覆い隠してほしいから濃い色(チェリー)を選んだ。
ワトコオイル自体の色味はとても綺麗なのだが、この空間には強すぎる。禍々しくみる。
色味はあれだが、乾くとちょっとだけ落ち着いた色になった。なにはともあれちゃんと壁だ!どこが扉で開くのかはパッと見はわからない!
「これ、どうやって扉あけるの?」と思われた方もいるだろう。ここからが隠し扉の隠し扉たる所以である。しかと見ていただきたい。
映像でもご覧ください
心のチェックボックスに、彫刻刀でチェックマークがゴリゴリと刻み込まれる音がする。「隠し扉を家に作る」人生でやらなければいけないことをひとつ達成した。次はカギの構造についてご説明しよう。
図で書くとややこしいが、本をひっぱると、それに連動してワイヤーが引っ張られ、かんぬきの役割をしていた金具が持ち上がる……というシンプルな仕組み。かんぬきが持ちあがりすぎて一周しないように木でストッパーを取り付けた。ちなみに、本の構造はこのようになっている。
辞書はブックオフにて200円で買ったもの。普通の本だと、上から見た時に木が入っていることがバレる。しかし、辞書ならブックケースで覆われているからバレない!こちらに蝶番をつける。
はい!こちらで隠し扉を開けるための仕組みは完成!しかし、勘のいい人ならお気づきだろう。「これ、ドアノブないのにどうやって閉めるの……?」と。心配には及びません。
穴に、金具を突っ込むと小さなドアノブになり、ひっぱると扉が閉められるという仕組み。これで隠し扉の仕組みは全てである。しかし、実はもうひとつ隠し要素があるのだ。
……こうして、家の鍵や大切なものを仕込む仕掛けになっているんですね。コンセントのカバーに、100均の透明のケースをとりつけただけ。コンセントの差込口を分解して、透明ケースとくっつきやすいように平らにしてグルーガンで接着する……みたいな工程はあるが、そこまでできたら、あとは、透明ケースと同じ大きさの穴を壁にあけて埋め込むだけだ。
これひとつあるだけであなたのお宅も忍者屋敷になるのでおすすめである。以上!隠し扉と仕込みコンセントの作り方でした。
隠し扉をつくってみて
後半は一人で制作をしていたのだが、休みのたびに手伝いにいこか?と連絡をくれる優しすぎる父であった。
隠し扉を作るには、5日くらいかかる。仕込みコンセントだけでいえば、穴を開けていい壁さえあれば、1時間もかからずできて満足感もあるのでおすすめである。今思えば、仕込みコンセントで一記事にしてもよかったのではないかなという気もする。でも、いいのだ。休日を5日費やし、材料費も3万円以上かかったが、これでうちは、まごうことなき忍者屋敷になったのだから。惜しむべきはこちらを記事として世に出してしまうことである。隠し扉は、住人意外、誰にも知られていないからこそ価値があるのだから。しかし、実は今度、建てる家にも……ゴホン、ゴホン……。