特集 2019年4月3日

隠し扉に憧れて

スパイ映画とかによく出てくる隠し扉を自宅に作った

人間は「隠し扉」に憧れがある。誰だってそうだ。私だってそうである。例にもれず、筆者の中学生の時に抱いた夢は、忍者屋敷に住むであった。甲賀の里で本物の忍者屋敷を見た際の記憶は今も鮮明だ。いつか自分が家を建てる時には、絶対に忍者屋敷にすると誓った。20年ほど月日が流れ、自分の家を建てることになった。夢をかなえる時が来た。

父は数学教師。母は国語教師。姉2人小学校教師という職員室みたいな環境で育つ。普段はTVCMを作ったり、金縛りにあったりしている。

前の記事:「モチモチの木」を餅で作った(ありがとう茗荷くん)


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とはいえ、まだ土地しかない

前の住人の建物を解体して更地にしただけの状態。土くれや石ころがあるだけでなにもない。家もないのに、隠し扉だけ作るわけにもいくまい。家が建つのは7月。遅い!この溢れ出る隠し扉欲をどこにぶつけたらいいのか。うんうんと悩んでいたが、いい案を思いついた。現状、くたびれたガレージだけが残っている、まずはそこに大工さんに扉をつけてもらい、「部屋」にすることにした。

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かっこいい扉ができました

かくして部屋ができた。ガレージの奥行きは、6mくらい。そこそこ奥行きがある。入り口の高さは160cmと低いのだが、中に入ると200cmくらいの高さはある。

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前の住人は背の低いセダンか何かをとめていたのであろう

ガレージは、日曜大工をする場所と、物置として使いたい。しかし、日曜大工をすると大量の粉塵が出る。物置にあるものに粉塵がふりかからないように、空間をふたつにわけたい。

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こんな感じにしたい

奥の部屋を隠し部屋にしよう。壁をつくるおおよその工程はこんな感じ。

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2×4材を天井でつっぱって、柱にする
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柱に板材をビス止めして壁に
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扉をとりつける
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壁と扉に化粧板を貼り付け、扉を隠す

以上である。工程は簡単。しかし、丸5日くらいかかった。現状の土地には何もない。コンセントも使えないし、トイレもない。無人島とさほど変わらない状況である。3度くらい心が折れかけたが、父が手伝ってくれたのでなんとか形にできた。私ひとりだったら21回くらい心が折れただろう。そんなわけでなんと隠し扉は完成したわけであるが、これから作る人のために、制作で困ったところを中心に紹介させていただきたい。
まず、最初に計測を行った。ガレージはぴったりきっちりとした長方形だと思っていたのだが、測ってみると、ななめだったり、でこぼこだったりと、随分といびつだったので、現場で調整しまくることになった。もうちょっと丁寧に測ればよかったのかもしれないが、計測する機器もなければ、技術もないので、現場で騙し騙し進めるのが、楽であった。

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計測が完了したのでカツ丼をほおばりながら設計をする
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父ははじめて、なか卯に来たらしい

ちなみにこの日は、父の車に乗って現場に向かったのだが、到着直前にガレージのカギを私が忘れていることに気づき、もう一度家にとりに戻るということになった。2時間のロス。まったく成長していない息子の姿をこれでもかと見せつける形となった。

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ホームセンターでの買い出し

昨今、空前絶後の2×4のつっぱりブームであり、各社プラスチック製の手軽なものから金属製のおしゃれなものまでいろいろ出しているが、ひとつ1000円〜2000円とそこそこする。

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充実のラインナップ

今回はこういう小洒落たものではなく、業務用のものを買う。つっぱり部分の金具と材木固定用の金具をあわせても600円くらい。

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私は工業っぽさ全開のこちらの方が見た目も好き

こちらを6セット購入した。本来はつっぱる箇所にはクッション材をかますようだが、コンクリートであればいらないだろう。

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続いて木材

横幅360cmくらいの壁と扉を作ろうと思ったら、砦でも作るの?というぐらいアホほど木材がいることがわかった。2×4材や板材も買いまくる。コークスレッドやL字金具は家にあるのを使った。それでも3万円以上かかった。

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途中から合算するのをやめました
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気をとりなおして必要な長さに木材をカットしてもらう

こちらのコーナンでは、ワンカット30円なのだが、コーナンのアプリを落とすと、なんと!木材10カット無料!すごい!それも何回も使えるそうだ!(1日に1回という上限はあり)

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こちらがそのアプリ

「1カット30円ってことは、300円引きってこと?たいしたことないよね?」と思った人は今すぐここで正座しなさい。一度でも日曜大工をやったことがある人なら、まっすぐに板を切ることの難しさ、そして道具を揃えるとお金も結構かかる(丸ノコと定規を買うだけで1万くらい)ことに同意いただけるはずだ。木クズだって大量にでる。それを全てコーナンが引き受けてくれるのだ。値段の話ではない。通常のカットのお願いですら「数百円でこんなに働いていただくなんて申し訳ネェ……」という気持ちでいっぱいになるのに、さらに10カット無料なんて太っ腹すぎる。そして、木材の量が凄まじいので、無料の貸し出し車両を借りた。

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ありがとうコーナン

材料が揃ったので、組んでいこう。

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柱をつっぱり金具で床と天井に固定(レンチで締める)
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柱が立ったら板をとりつける
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つづいて、トビラの枠組みを作る

トビラのフレームは、2×4材ではなく、もっと細い材を使った(軽くするため)。

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蝶番の位置を確認しつつ
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ノミで、トビラの枠材を削って蝶番を埋め込む

なりゆきで寸法を確認せずに進めていたら、壁と扉の位置がめちゃくちゃズレていた。もうこれでいいかなと思って進めようとしたが、父が「重力を利用して垂直を出したら、壁と扉の平行も出せそう」と言ってきた。具体的にはひもに重りをつけてぶら下げるだけなのだが、確かにやってみたら平行が出た!

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頼もしすぎる年金受給者

今日のうちに柱と壁を全部立ててしまおう!と息巻いていたが、柱の数を2本少なく購入していたようで(そうです、私のミスです)、できる作業はここまで。あいからわずダメな息子っぷりを父に見せつけている。
家に帰ると、父がこんな風な化粧板はどうだ、とアイデアを出してくれた。

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Naughty Dogのロゴみたいである

素敵ではあるが、忍者屋敷にポップさは必要ない。LAST OF USのような重厚感は必要なのだが。泣く泣く不採用とした。
2日目。足りなかった2×4材の買い出し行う。

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壁がたったぞ!

余談だが、家の構造のひとつ、「2×4工法」って、この2×4材を使った工法のことだと恥ずかしながら知らなかった。2×4材は安くて身近なので、まさかこれで家が建つとは思っていなかった。でかい柱、線で支えるんじゃなくて、家の壁や床、天井など、面で支える方式らしい(段ボール箱みたいなイメージ)。強度もしっかりあるんだとか。今回の壁作りも2×4を柱にして、板を貼って壁を作っているので、2×4工法といっていいだろう。脱線してしまったが、壁と扉を真上からみるとこんな感じになる。

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化粧板で隠すわけですね

扉は内開き。短冊状に縦に長い板を貼ることによって、壁と扉の間にできる隙間を隠す構造だ。トビラを閉めた時のストッパーもとりつけよう。

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こちらも枠材を彫り込み、埋め込む

写真を撮る余裕があんまりなくて、父の制作姿しか撮影していない。今回の記事は、年金をもらっている男性がひとりで隠し部屋を作っているみたいになっているが、私もがんばって作っていたことを知ってください。いろいろ大変だったが、これでおおよその構造は完成だ。

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裏側はこんな感じ。
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最後に壁と扉に化粧材を貼ろう

今回は薄いヒノキ板が1枚300円と安かったのでこちらを選んだ(とはいえ、量が多いので1万円以上したが)。化粧板にコークスレッドを打ち込み、壁の構造材(横に渡してある2×4材)と固定する。

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さくさくと進んで楽しい!

順調に思えたのだが、めちゃくちゃ構造材の位置を見誤りビスの位置を外して穴だらけにしたり、ガレージの形がいびつだからという理由では説明がつかないくらいメタメタに隙間ができたりした。

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適当に板を切って埋め木パテで穴を埋める

パテは乾くとやすってもなかなかとれないので、穴と関係ない場所のパテは布でふきとっておけばよかったと後悔した。

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でもひとまず全部貼れたぜ!色でも塗ろうか
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養生テープをはって、ニスを塗る

今回はワトコオイルを使った。全ての傷や汚れを覆い隠してほしいから濃い色(チェリー)を選んだ。

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よしよし
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ん?
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色味が強すぎて塗らない方がよかったやつ?

ワトコオイル自体の色味はとても綺麗なのだが、この空間には強すぎる。禍々しくみる。

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床にペンキが漏れて、血のようだ
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圧倒的ホラーゲームのフィールド感

色味はちょっとあれだが、乾くとちょっとだけ落ち着いた色になった。なにはともあれ、ちゃんと壁だ!どこが扉で開くのかはパッと見はわからない!ちゃんと壁に見せるために使えないダミーのコンセントを壁に埋め込んだりもしています。

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コンセントは300円くらい

しかし、「これ、どうやってあけるの?」と思われた方もいるだろう。ここからが隠し扉の隠し扉たる所以である。しかと見てください!

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ガレージの奥、壁があるな……
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棚があるけど……
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なんでこんなところに古語辞典……?
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……
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カチャン……
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キィイイイイ……
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隠し部屋だ!


 

映像でもご覧ください

心のチェックボックスに、彫刻刀でチェックマークがゴリゴリと刻み込まれる音がする。「隠し扉を家に作る」人生でやらなければいけないことをひとつ達成した。次はカギの構造についてご説明しよう。

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こんな感じ

図で書くとややこしいが、本をひっぱると、それに連動してワイヤーが引っ張られ、かんぬきの役割をしていた金具が持ち上がる……というシンプルな仕組み。かんぬきが持ちあがりすぎて一周しないように木でストッパーを取り付けた。ちなみに、本の構造はこのようになっている。

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本の中身は木

辞書はブックオフにて200円で買ったもの。普通の本だと、上から見た時に木が入っていることがバレる。しかし、辞書ならブックケースで覆われているからバレない!こちらに蝶番をつける。

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蝶番をとりつけて、本棚にも固定
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本にはワイヤーと固定するためのフックをとりつけておく

はい!こちらで隠し扉を開けるための仕組みは完成!しかし、勘のいい人ならお気づきだろう。「これ、ドアノブないのにどうやって閉めるの……?」と。心配には及びません。

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扉に小さな穴をあけて、溝きりをしております

穴に、こちらのよくわからない金具を突っ込むと小さなドアノブになり、ひっぱると扉が閉められるという仕組み。これで隠し扉の仕組みは全てである。しかし、実はもうひとつ隠し要素があるのだ。

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先ほどのダミーのコンセント
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ん?
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……ひきだせる!
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なかに……
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カギ!

……こうして、家の鍵や大切なものを仕込む仕掛けになっているんですね。コンセントのカバーと差込口は先ほど2つで300円くらいとお伝えしていたが、それに、100均の透明のケースをとりつけただけ。コンセントの差込口を分解して、透明ケースとくっつきやすいように平らにしてグルーガンで接着する……みたいな工程はあるが、そこまでできたら、あとは、透明ケースと同じ大きさの穴を壁にあけて埋め込むだけだ。

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1時間もかからず完成する

これひとつあるだけであなたのお宅も忍者屋敷になるのでおすすめである。以上!隠し扉と仕込みコンセントの作り方でした!


隠し扉をつくってみて

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父よ、ありがとう
後半は一人で制作をしていたのだが、休みのたびに手伝いにいこか?と連絡をくれる優しすぎる父であった。ありがたさがすごい。

隠し扉を作るには、5日くらいかかるが、仕込みコンセントは穴を開けていい壁さえあれば、1時間もかからずできて満足感もあるのでおすすめである。今思えば、仕込みコンセントで一記事にしてもよかったのではないかなという気もする。でも、いいのだ。休日を5日費やし、材料費も3万円以上かかったが、これでうちは、まごうことなき忍者屋敷になったのだから。惜しむべきはこちらを記事として世に出してしまうことである。隠し扉は、住人意外、誰にも知られていないからこそ価値があるのだから。しかし、実は今度、建てる家にも……ゴホン、ゴホン……。
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