特集 2020年4月22日

見ようぜ台車!

台車が置いてある様子がひたすら出てきます。

道端にはしばしば台車が置かれていて、錆びたり壁によっかかったりしながら出番を待っている。その、しまわれているのかいないのか微妙な感じがなんかよくてこれまでいっぱい写真を撮ってきた。この機会に(なにが)見てみようぜ!
 

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

なんとなく置いてあるのを見ようぜ

いろんな資産、持ち物の中でも結構過酷な状況で保管されていると思うのだ台車は。

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がっつり錆びている。
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子供の頃、父が焼いてくれたトーストがこんなだった。「体に悪いから食うな」と言われた。
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オフロード仕様を思わせる汚れ。
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2台連なって錆びる。
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透明(フォトショップ的な)になってしまった。

道路交通法では「軽車両」に分類されるという。なんか手押しで気軽にゴロゴロやってた台車も「車両」とか言われるとこちらの背筋がシュッとなる。錆びたりしてご苦労さまです。

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車両感強めのもあった。

載せたままを見ようぜ

資材を載せたまま待機している台車もまた健気だ。

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土嚢のようなものを載せて静かに待機。ちなみに台車はカインズホームのPB製品「サイレントカート」
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重ねパイロンを載せる。重厚でかっこいい。

 

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タイヤがバースト気味だがすぐピットスタッフが駆けつけることだろう。
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海の幸をたんまり。台車になってどこかに行ってしまいたい。

物の移動を省力化するという本来の目的より常設感の高いものあって、興奮を禁じ得ない。台車の中でも「台」要素が強めのやつだ。
 

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愛媛の甘いみかん各種を販売、動く物産展だ。

台・オブ・ジ・イヤーというものがあるならば推挙したいのがこの台車上緑化作品である。 

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台車園芸というジャンルの胎動を見た。

日中はこうして陽光を浴び、夜は奥にしまわれていくのだろうか。優雅に台車に揺られながら往来に手を振る、それは枝ぶりも良くなる事だろう。

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自慢のオープンカー。心なしか得意げにみえる。
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ストッパーもいい、いい工夫。

 

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よりかかってるのを見ようぜ

台車の様態でおそらく一番多く見られるのが折りたたまれ壁によりかかっている姿。重い荷物を素晴らしい安定感で運ぶ台車もこうなっては建物の壁や室外機などに体を預けないと倒れてしまう。台車としては不条理だし悔しいだろう。
 

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室外機によりかかる。

 

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いい雰囲気でよりかかる。
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くくりつけられる。
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軒先にまとめられる。
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傘立てになる。というか車輪がひとつ無い。

奄美大島では猫とのツーショットが実現。

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ペットボトルは嫌でも台車はOKなのか。
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なんか忘れられない顔立ちだった。

崖の下にもたれかかる瀕死の台車には腐食の悲哀というか無常観を感じてしんみりしてしまった。

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落石運んでたの?
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一面こげ茶

子供の頃、夢中で見ていたロボットアニメの名作「マジンガーZ」の最終回、暗黒大将軍の派遣した強敵、戦闘獣によってマジンガーZはいろいろ溶かされたりして、いや悪なのはわかるけどそこまでしますかというくらいボコボコにされてしまう。

主人公、兜甲児(かぶとこうじ)の「どうしたんだ、超合金Zが、腐っていく......」という悲痛な、絶望的なセリフで泣きそうになった記憶がよみがえった。あの哀しみはまだ胸のどこかに存在していたのだ。それがわかっただけでもよかった。

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そばの塩ビ菅をのぞくとヤモリがいた。戦闘獣かな。
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この際だから出しとけと思って出すんだけど近くの立ち入り禁止看板がレクレーションぽかった。

背ラベルを見ようぜ

台車の見所はまだある。ハンドル部分の背中についてるラベルがいいとしかいえないぐらいいいのだ。

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こういうのがあったら.......

 

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こういうところ。がっちりとしたフレームがかっこいい。

DIAMOND・CAR SERIESとは創業70年の歴史を持つ物流・運搬機器メーカー「カナツー」のブランドである。

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かわいい書体の「トライアルカー」

折りたたんで置かれるので写真が逆さになりがちだが、こちらも創業70年以上をほこる上杉輸送機製作所「PRESTER」ブランドの「トライアルカー」シリーズである。

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黒地に金が映える「アイケー」

わりと見かける頻度が高い(私の感覚だが)「アイケー」シリーズのメーカー、石川製作所も戦後から物流機器を製造している古株だ。

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「アイケーキャリー」という表記もある。手前のムアツふとんもかわいい。

やはり物流インフラが整備された戦後間も無くに創業し、高度経済成長と共に発展したメーカーが多いのだな、名前とかも剛健でよいねえなんて思ってたらまたすごい老舗に出くわした。

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「金象印」、ゾウのシンボルかわいい。鼻の先にはショベルを持っている。

金象印がトレードマークの浅香工業の創業はなんと約350年前、WEBサイトによると1661年頃とある。「頃」というのがしびれる。

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台車はこんな感じ。和歌山県で撮影。

明治26年に日本で初めてショベル、スコップの優秀な製品の生産に成功、以降ショベル・スコップ事業から物流機器、さらには園芸用品などの生活用品まで事業の幅を広げている。

花屋や一般家庭で園芸用品と共に置かれているのをよく見かけたのはそういった商流の特性もあるのかもしれない。
 

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という無邪気な感慨とともに終わります。薔薇の土と金象。

雨ざらしの過酷な環境で、倒れたり寄りかかったりしながらもひたむきにそこにある姿に曇天のスポットライトぐらいのささやかな光を当てる事ができたら幸甚である。がんばれ台車、ユーアー・ザ・ダンシングクイーン、ヤングアンドスイート・オンリーセブンティーン、また会おう。

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「ラベル」じゃなくて「署名」もよい。
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