特集 2023年5月9日

宮下公園のホテルがペラペラに見える理由

ペラペラに見えるのはデザイナーの意図通りなのか

ここまで、ホテルがペラペラに見える理由について探り、「側面が見えないいびつな形」「板チョコを想起させる外観」という2つの可能性にたどり着いた。

ここでさらなる疑問が生じる。ホテルがペラペラに見えるのは、デザイナーの意図通りなのかどうかだ。これはもう聞くしかない。

不躾ながら、sequence MIYASHITA PARKを手掛けた三井不動産ホテルマネジメントにダメ元で問い合わせてみた。もちろん何重にもオブラートに包んで丁寧に。

ほどなくして返事が来た。

建物形状について
明治通りに沿った敷地形状となっており、建物形状もそれに合わせたものとなっております。

なるほど、そもそもホテルがいびつな形なのは、土地の都合上仕方なかったのだ。事前にホテル建設前の土地の形を見ておくべきだった。

 ホテル建設前の2017年の航空写真。(国土地理院空中写真CKT20176-C27-25を加工。)

確かに、土地が台形である。……でもそれなら建物も台形にするのが自然ではないだろうか?実際の建物はキュッとくびれており、それがペラペラ感につながっている。

土地に合わせて建物も台形にすればこのようなくびれは生まれないはず。台形ならペラペラ感は若干マシになりそうだ。いったいどうして…。

ここからは推測だが、建物を土地に合わせて台形にすると、側面の多くの客室が斜めになってしまう。そうなると見栄えが悪く、また、建材も特注品でコストがかさむのかもしれない。

そこで、1か所にくびれを設けることで、斜めの客室を減らすことを選んだのかもしれない。

そのしわ寄せが3列の部屋に来ているが、それはもう「そういうデザインの部屋」として受け入れられているのだろうか。

斜めの部屋の間取りが気になってきたので調べたところ、 一級建築士の方の宿泊レポート が見つかった。張り出した部分にはテーブルが置かれ、有効活用されているようだ。

また、三井不動産ホテルマネジメントに外装デザインの意図についても教えてもらった。

外装デザイン意図について
外装コンセプト:「SUHAKO」
「平面に見せたい」という意図はありませんでしたが、すり鉢状の外装ユニットPCカーテンウォールにより、 目の錯覚で中央のガラス部分に意識が集中するため、客室に意識が集中するようなデザイン意図としています。
また、屋上塔屋の外装までをワンボリュームで構成することで、 大きな塊の中にピースがあるような設えを目指しました。
色調については渋谷のダイバーシティーを表現してます。 クリエイティブな人がここに集まり、ここに集い、ここから旅立ち、またSUHAKO(あえてスハコであってスバコで無く英語)に 戻って来てほしいという想いでデザインさせていただきました。

平面に見せたいという意図はなかった。板チョコのようなマス目は、客室を見てほしいという想いによるものだった。

そしてまだら模様は渋谷のダイバーシティ(多様性)を表していた。

私のセンスがなさ過ぎてペラペラだの板チョコだの、斜に構えた受け取り方をしてしまっていた。 このホテルはクリエイティブな人々にとってのSUHAKOだったのだ。


私もSUHAKOに混ぜてほしい。

事の発端は「ホテルがペラペラに見える」であった。私はホテルに込められたデザイナーのメッセージを正しく受信することは出来ていなかった。しかし、ペラペラのメカニズムを探索したり正しいデザイン意図を尋ねたりして記事にする行為は面白く、それはわずかながらもクリエイティブなものであった。結局はデザイナーの狙い通りになっているのかもしれない。

今度泊まりに行きたいです。

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