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マンション本体はかなり簡易的なつくりだったが、それでも十分に発光マンションを目の当たりにしたときのオオ……!!という感激を、ぎゅぎゅっと凝縮できた。
……つまりシートが張られた足場と光さえあればなんでもいい感じになるのでは?
余ったパーツで石のための小さな足場セットもこしらえてみる。
去年の暮れ、住んでいるマンションの外装工事が始まった。
なにやら部材が積まれているなと思ったら、あれよあれよという間にマンションの周りにぐるりと足場が組まれ、シートが張られ、気がついたらマンションが発光しているではないか。
その姿がかっこいいので、工事が終わって見られなくなってしまう前に、ミニチュアを作ることにした。
発光といったって、マンションが特別にライトアップされているわけではない。共用廊下の電灯の光に、張り巡らされたシートが電気傘の役割を果たし、マンション全体が発光して見えているのだ。
まずこの真っ暗な空に定規を当ててスッと切り抜いたようなシルエットがいい。
垂直と平行、足場がガッチリと組まれ、シートがピンと張られている、鳶さんの丁寧な仕事の証だ。
それからこの薄く柔らかい光具合、なんとも言えぬ生命感。
どことなく羽化したてのセミの羽に似ている。
構造物としてのかっこよさと生命感があわさって、遠くから眺めると大きな繭のようだ。
帰り道、交差点の向こうでマンションが光っているのを見つけるのが一日を締めくくる楽しみだったのだが、どうやら工事はあと数ヶ月で終わってしまうらしい。
工事が終われば足場は解体され、普段のマンションの姿に戻る。
初めてマンションが発光しているのを見たときの感慨など、あっさり忘れてしまうのだろう。いかんいかん、そんなの寂しいぞ!
なんとか工事が終わる前につくることができた。これで未来永劫、いつでも発光マンションを愛でられるというわけだ。
まずは足場づくりだ。
足場は人が何人も乗れる強度を持ち、かつその場で組立て・分解をしなければならないだけあって、考え抜かれた構造だ。
足場の部材そのものの良さについては、過去にライターの伊藤さんたちが深淵を覗きに行っている。
この「はかなき名脇役」を永遠に手元に残すことができる、素晴らしいプロダクトがこの世にはあるんですよ。
足場のプラモデル。こんな地味(滋味)なモチーフがあるのか!!と見つけたときは衝撃を受けた。
小さくたって一人前だよ!と声がどこからか聞こえてくるようだ。
さて問題なく組み立てられることを確認したあとは、
最小単位の組み方さえわかれば、おなじことの繰り返しである。スポティファイで落語百選を延々と聞きながら、半日がかりで足場を組んだ。
骨組みが出来たところで、次はシェードとなるシート張りである。
運良く足場は市販品を見つけたが、ここからはおそらく前人未到の地。
とりあえず実物をよく観察しようと外へ出た。
作業中、開け放していた窓の外でガチャンと音がして鳶さんと目があった。
作業中のマンションの住人がまさにそのマンションの模型を作っているのを目撃したらさぞ気味が悪かろう。慌ててカーテンを閉めたが、一層あやしかったかもしれない。
最後に明かり部分を作ったら完成だ。
足場セットと組み合わせてみよう。
マンション本体はかなり簡易的なつくりだったが、それでも十分に発光マンションを目の当たりにしたときのオオ……!!という感激を、ぎゅぎゅっと凝縮できた。
……つまりシートが張られた足場と光さえあればなんでもいい感じになるのでは?
余ったパーツで石のための小さな足場セットもこしらえてみる。
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