③ちょっとレトロな写真の質感
高級感だけでなく、レトロな魅力を携えているカタログもある。
保育社のカラーブックスというか、暮しの手帖というか。思わずほっこりしてしまうこういう写真の質感、良いんだよな…。
④文章の味わい
ミニカタログ特有の文体というものがある。例えば語尾の「~しております」「~でございます」、「拵(こしら)えて」などルビを振ってまで敢えて難しい言葉を使う感じ。
丁寧過ぎる言い回しと独特のリズム感がクセになる。
※なおこの文体については乙幡啓子さんが過去に記事にしているので、ぜひご覧下さい。
⑤唐突に始まる製法や歴史の授業
写真や商品説明だけでなく、製法や原材料について詳しく書かれていることも多い。一読するだけでその道の専門家になれたような気になれてしまう。
また土産菓子は観光地や名所旧跡で売られているので、その地の歴史や伝承について解説されていることも多い。
ミニカタログは知識欲を満たす読み物としても機能するのだ。
⑥まだ見ぬ大物を知る
日本各地に超定番土産になっているお菓子があるが、そういった会社のミニカタログを見て気付くことがある。
そう、銘菓で知られる会社には当然、その銘菓以外のラインナップも存在している。しかもその中には、本来4番を任されるようなとんでもないお菓子が紛れていたりする。例えば萩の月の三全さんは、ずんだ餅もめちゃくちゃ美味しいという噂を各方面から聞く。
昨年、広島を旅行した時に地元の友人にお土産で頂いたのが、桐葉菓というお菓子だった。
友人は「うちは家族全員、もみじ饅頭じゃなくて桐葉菓派なんです」と言っていたが、食べてみると生地がモチモチで確かに美味しかった。
こういった「現地では知られているが全国的にはまだ見ぬ大物」に思いを馳せるのもまた、カタログ鑑賞の良さである。
私は私を恥じる
感覚的にも実用的にも魅力溢れるミニカタログ。だが、読者の皆様には正直に書かねばなるまい。
実は当初、この企画は少し違う方向性で考えていた。「ミニカタログ見るだけじゃ記事にならないよな」と考えて、用意されてるのは紅茶とカタログだけで肝心のお茶菓子がないティーパーティー、つまり「鰻を焼く煙だけで白飯を食わされる」的な記事にしようとしていたのだ。
つまり魅力を説こうとしている私自身が、ミニカタログを信じ切っていなかったのだ。しかし、実際には撮影場所の終了時刻が迫っているのに気づかないほど盛り上がり、余計な設定など必要なかった。
ミニカタログの世界には現在、コストカットや環境負荷低減の流れからQRコード化の方向に舵を切る気配が漂っている。私は今回の件を反省すると同時に腹を決めた。これからはミニカタログを溜め込むだけでなく、その魅力を積極的に発信していくぞ。
この文化は後世に残し得るものと確信致しております。皆様もお手元に素敵なカタログがありましたら、是非保存しておいてくださいませ。いつの日かたくさんの人々が集い鑑賞会を開催するのが、私どもの夢でございます。
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