移動ではなく逃亡
移動中の写真は逃亡中、という言葉がぴったりの趣となった。
駐車場の監視カメラに映った自分がすごくわけありだった。
たまたま映り込んだ容疑者か、もしくはカメラが捉えた衝撃の瞬間のようだ。
あのモノクロの荒い映像になるだけで事件性が出る。
そういうカメラを買ったのでなんでも事件性を出してやろう。
駅の近くのコインパーキングは支払機にモニターがついていて、パーキング内の監視カメラ映像が映し出されている。
そこに立つとパーキングにいる自分の後ろ姿が見える。
この映像が面白くてこの駐車場の横を通るときはいつも映り込んでいる。
というナレーションをかぶせたくなる。
どうやら暗視カメラ+俯瞰、広角、日付でわけありになるようだ。
ここで使っている監視カメラをそのまま買おうと思ったが、業務用で別途録画装置などを買う必要があるものだった。冗談にしては投資が大きい。
これでモノクロの監視カメラのような物語性のある映像が撮れる。
コワーキングスペースの個室で働いているだけだが、衝撃の瞬間の直前になった。
いま僕の個展を開催しているギャラリーを撮った。このあと手前からとんでもないものが入ってくるのが容易に想像できる。
まるで展示品を盗んでいく男である。もしくは右の隙間から犬が滑りながら突入してくる直前だ。
インスタのリールってそんな映像ばっかり流れてきませんか?
遊歩道の木にカメラを立てかけて撮ったところ、映像に僕がうまく収まってなかった。
だが隅っこに写っているのもまた事件性がある。
10人いたら11人が立ち小便だと思うシチュエーションである。警視庁24時だと大事件前の箸休めに挿入される映像だ。
「この男、その後交番で厳重注意となった」(ナレーション)
さまざまなところで撮影してみて、監視カメラ映像の相性が特に良かったのが倉庫だ。
僕が倉庫でイベントに使うものを袋に詰めているだけなのだが、どう見ても倉庫あらしである。
「白昼堂々と倉庫の貴重品をバッグに詰めるこの男、実は……」とナレーションがついて夕方のニュースで見るやつだ。
だいたい病院の待合室で見る。
技術的なことをいうとこのカメラは暗いところでも映るよう、人の目には見えない赤外線が映る。
赤外線が出ているとは聞いていたけど、こんなに光っているのは意外だった。
移動中の写真は逃亡中、という言葉がぴったりの趣となった。
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