マニア注目の、文房具に占拠されたセブン−イレブン
その話題のコンビニというのが、静岡県にある「セブンーイレブン富士市中柏原店」である。
最寄り駅はJR東海道本線の東田子の浦駅。駅からは徒歩で5分ちょっとと、車が無くてもお邪魔しやすいのが超ありがたい。
なにより、古くは和歌にも「田子の浦〜富士の高嶺に雪は降りつつ」なんて詠まれるあの田子の浦であって、なんとお店のバックに(晴れてたら)富士山ドーン!という抜群のロケーションだ。
で、その富士市中柏原店のオーナーであり、SNSでは「#24時間マステが買えます」や「#24時間インクが買えます」という迫力あるハッシュタグおで業界内をザワつかせたのが、こちらの「なかちゃん」さん。
うーん、すでにもう背後の棚が気になる。これは確かにアレだ。普通のコンビニの文房具棚とは完全に別物のやつだな。
っつか、そもそもそのマステ専用什器(店頭ディスプレイ用棚)は相当がっつりした文房具店じゃないと置いてないやつだし。
なかちゃん「展示会でこの什器が置かれてたんで、『これコンビニの店内にあったら面白いよね』と思って、担当営業さんにお願いして送ってもらったんですよ」
それはまぁ、見た瞬間に「マジで!?」とは思ったし。
なので、まずはなんでこういうことになってんの?から、きちんと伺っておきたい。
24時間マステが買えるコンビニができるまで
そもそもの始まりは、今も続くコロナ禍だったそうだ。
来客減で売上げが大きく下がり、オーナーであるなかちゃんと旦那さんの間で「普通にコンビニやっててもこのままじゃ無理だな…」という見解になったそう。
なかちゃん「夫に「どうしようか?」って訊かれたんで、え、じゃあ文房具売っていい!?って(笑)」
元々かわいい文房具が好きだったのに加えて、コロナ前にドライブがてら行った静岡県島田市のマスキングテープ専門店「ヨハク社」さんにハマッていたのが大きかった。
なかちゃん「その時点ではヨハク社さんには1回お邪魔しただけだったんですが、ポップアップストアみたいなことをさせてもらえないか?と勢いでメッセージ送ってみたんです」
コンビニ店内におけるヨハク社ポップアップストアは、2021年3月から約8ヶ月ほど開催されたのだが、わりと好評だったこともあり、このまま終わってしまうのはもったいない。
じゃあ改めて文房具売ってみよう!ということで、現在のこのかたちになっていったのだそう。
とはいえ、いま日本国内のあるセブン−イレブンが約2万1千店。その中で、ここまで文房具に特化した店舗はおそらく他にないだろう。
つまり前代未聞ということだ。あくまでも個人的なイメージなんだけど、コンビニの本部ってそういうのをなかなか許してくれなそうな気がするのだ。
なかちゃん「フランチャイズを維持するためのルールがあって、それは絶対に重要。なので、その範囲内でどこまでできるのか?をひとつひとつ確認していったんです」
これはいいのか。駄目ならどこを改善するべきなのか。具体的にどこがルールに抵触しているのか。そういったことを全てフランチャイザー(本部)側に聞いて、少しずつ形を作っていったのだそう。うわー大変そう。
さらに大変そうなのが、仕入れだ。
なんせ、なかちゃんが売りたいと思っている文房具のほぼ全てが、セブン−イレブンの流通上に無いものばかり。なので、オーナーのなかちゃん個人が現金による直接取引で、文房具メーカーや問屋とやりとりしているのだ。
届いたら届いたで、検品して値付けをして、さらにひとつひとつPOSレジ(コンビニなどで販売情報を集中管理できるレジシステム)に商品登録をしなきゃいけない。
しかも従業員さんは文房具のことをしっかり分からないので、この作業もなかちゃん一人で行わねばならない。それは作業量的にちょっとキツすぎないか。
なかちゃん「いやでも楽しいんですよ。「わーこれ欲しい」とか「全部買ったらどえらいことになるな」とか言いながら作業して」
そりゃ自分で選んで発注した製品なんだから、欲しいのは当たり前なんだけど、気持ちは分かる。
なかちゃん「なんでこんな素敵なモノが自分の店で買えるの!?ってテンション上がっちゃう。最高ですよ」