銀座周辺をみてほしい
日比谷からちょっと下の方、銀座・日本橋周辺を注目してほしい。
PXという建物、その横に高島屋があり、よくみると屋上になぜか象がいる。
よく見ると謎が多い。
米軍の軍隊内で日用品や食べ物を売る店のことをPX、ポストエクスチェンジと呼ぶ。売店のことだが、GHQは、銀座の松屋と服部時計店(和光)を接収して、PXとして使っていた。
高島屋の屋上の象は唐突にあるので面食らってしまうが、検索すると、この時期、実際に日本橋高島屋の屋上で象を飼っていたことがわかった。
高島屋が子供たちを元気づけるためにメスの子象を購入。1950(昭和25)年にタイのバンコクから来日した。
やってきた当時は、汐留から日本橋まで中央通りをパレードし、クレーン車で屋上に吊り上げられ、そのまま飼育され話題となった。名前は高島屋から一文字とって高子と名付けられ、子供たちに大変な人気があったという。
その後、高子は1954(昭和29)年に上野動物園にお嫁入りした後、多摩動物園に移り、1990(平成2)年まで生きていた。
四谷にあった国会図書館と大蔵省
続いては視線をぐっと上に戻し、四谷周辺に注目してほしい。
現在では、永田町にあるはずの国会図書館、霞が関にあるはずの大蔵省が、四谷にあることになっている。
国立国会図書館は、現在の永田町に本館ができる前は、赤坂離宮、現在の迎賓館の建物が図書館として使われていた。
大蔵省は、霞が関にあった庁舎がGHQに接収され、当時は四谷にあった四谷第三小学校の校舎を庁舎として利用していた。
財務省のサイトによると、GHQは接収した霞が関の大蔵省庁舎に、教会、ボーリング場、ビヤホール、スナックバー、ダンス遊技場などを作り、ラウンドワンみたいに改造して使っていたらしい。
名称が変わった学校
官庁などに比べると、大学は今と同じ場所にある大学が多いけれど、名称が変わっている。というパターンも多い。
牛込や江戸川橋あたりをみると、物理大学、紅陵大学と、見慣れない大学が書いてある。
物理大学は、かつて東京物理学校と呼ばれていた東京理科大学のことだろう。夏目漱石の『坊っちゃん』の主人公は、東京物理学校を卒業して数学教師をやっている設定になっていたはずだ。
紅陵大学にかんしては、現在の拓殖大学である。
拓殖大学の拓殖とは「植民地を開拓して移り住むこと」を意味しており、元々、満州、台湾といった当時の日本の植民地で活躍できる人材を育成するための教育機関として開学された。
GHQの占領統治が始まった年の翌年1946(昭和21)年に、名称を拓殖大学から紅陵大学に変更し、占領統治が終わった1952(昭和27)年に拓殖大学に名称を戻している。
資料(※拓殖大学『右手に文化の炬をかかげ』2000年)によると、占領統治を行うアメリカに配慮して名称を変更したとされているが、この際、紅陵大学の他に、小石川大学、アメリカ大学、大和大学、昭和大学、扶桑大学、茗荷谷大学、興業大学などの改名候補もあったらしい。アメリカ大学や大和大学といった、当てこすりみたいな名前だったら面白かったが、そっちは選ばれなかったようだ。
ただし、実際にGHQが名称を根拠に閉学を迫ったような事実があったのか、はっきりしたことはわからない。