特集 2023年11月13日

旅先でマンタ(イトマキエイ)を買って食べた

マンタを料理する

さてマンタといえば、クジラなどを銛で獲って生活している南の島の漁師達を追ったドキュメンタリー番組で、島民がマンタをザクザクと切り分けているのを見て、すごい身の厚さだなと思った覚えがある。

発泡スチロールの蓋を開けて、その映像を急に思い出したのだ。すごい身の厚さだ。

内蔵の処理などはすでにやっていただいたので、調理は難しくないだろう。ネットでマンタの捌き方を調べるのも野暮なので、フィーリングでやっていく。カフェなのに大きなまな板とよく切れる包丁があって、本当にありがたい。

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鮮度がよいからなのか、嫌な臭いはまったくない。
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こりゃと大変だ思いつつ、こんな経験なかなかできないぞと静かに興奮している。
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背側の皮は黒く、腹側は白い。魚というよりも肉っていう感じ。
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ヒレの真ん中に骨がある。普通のエイなら軟骨なのだが、サイズがでかいので普通に骨だ。干してエイヒレにしたいが、この厚さだと絶対に腐る。
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ヒラメを五枚に降ろす要領で、骨から身をはがしていく。切り出すとマグロの柵にしか見えない。
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部位によって身の質が結構違い、ここは牛のモモ肉みたいに赤い。
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せっかくだから肝ももらってきた。でかいな。
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とりあえず煮よう。サイズ感がわかりにくいけど、一切れが豆腐一丁くらいある
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唐揚げにすれば間違いないはず。
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ソテーにしようと思ったが、この切り方だとまったく火が通らなかった。
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近くにあるオリジヌという、佐渡の食材を見事に扱う店のシェフを呼んだところ、フォアグラのように肝を焼きだした。こういう店です。
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マンタのフルコース

そんなこんなでマンタのフルコースができあがった。

夜中に車で家を出て、直江津港から朝のフェリーに乗って佐渡へと渡り、突然マンタの半身と渡り合ったので、体はものすごく疲れているのだが、頭だけはやたらと冴えている。

こういう予想外の展開こそが、自分にとっては旅の醍醐味だなと思った。

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マンタを食べてもらうため友人に集まっていただいた。切り身のお土産付きだよ。
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マンタの煮つけは私の切り方が大きすぎて味が染みなかった。クセはまったくなく、カジキや脂のないブリのような味。七面鳥くらい大きな鳥の胸肉のようでもある。白い皮側がおいしいという意見も。
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見た目がマグロっぽい刺身は、熟成させていない釣りたてのキハダマグロの味がした。旨味と脂はちょっと薄いが、ヅケやネギトロにしたり、マヨネーズと混ぜてしまえば、ほとんどの人がマグロだと思うだろう。ちょっとトコロテンの風味(海藻っぽさ)がある。
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唐揚げはやっぱり間違いのない味。ほぼ鶏肉。さっぱりしているので油を補うとおいしくなるようだ。
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繊維っぽいところをソテーにしたら、マグロの尾の身のステーキのようになった。これはコースのメインを張れる味だ。
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前に宮城県の女川港で水揚げされたホシエイを肝刺にしたらおいしかったので、マンタの肝も食べてみる。念のため寄生虫をよく確認した上で、胡麻油でレバ刺しにしてみた。
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エゴマの葉っぱで巻いて食べると最高。もはや記憶の彼方となった牛のレバ刺しを思い出させるが、それよりもさらにクリーミー。まったくクセがないのは鮮度のおかげか。ただし、うますぎるので二切れで十分なのはホシエイと同じ。栄養価が高すぎる気がする。
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シェフが焼いてくれたレバーソテーにロシアンタラゴンを添えて。外側を香ばしく焼いたことで、素材が持つ本来の力強さが活性化された。これは海のジビエだ。レアな中心部の食感と濃厚さが生チョコレートみたいで驚く。ウイスキーが欲しくなる味。

マンタ(として売られていたイトマキエイ)は、未知の食材としてとてもおもしろく、なかなかおいしい魚だった。勢いで買ってみてよかった。そして半身にしておいて本当によかった。今思えばマンタジャーキーにして保存するという手もあったか。

食材としての特性がかなりわかったので、次はもっとおいしくできると思うが、漁師さんも狙って捕る魚ではないので、おそらく二度とマンタを調理する機会はないだろう。それでも、またなにか珍しい魚との出会いはあるはずだ。

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