特集 2024年6月28日

漫画・アニメ・ゲームに登場した架空の路線図を鑑賞する

『エヴァンゲリオン』は立体的な路線図が使われている ?

西村:続いては『劇場版エヴァンゲリオン破』です。2009年の作品ですね。 

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『劇場版エヴァンゲリオン破』©カラー

井上:あー……何かに似てそう……。

西村:第3新東京市新交通システム路線図です。これ、ちょっとおもしろいのが、第3新東京市ってジオフロント、地下都市があるんですよね。だから、おそらくなんですけど、この路線図、地表の部分の路線図と地下の路線図を、斜め上から俯瞰した形になってるんです。

井上:はいはい、なるほど。

西村:実在の路線図で複数の階層、たとえば地下鉄、路面電車、モノレールみたいに、高さをつけて3D的(?)な視点で描いた路線図ってちょっと見たことないというか、あまりないと思うんです。これ、すごく斬新ではあるんですけど、ただこの描き方って路線図としてはちょっと見づらいと思うんですよ。

大森:そうですね、レイヤーとレイヤーを繋ぐものが、また違った路線に見えてしまうから。見た人が全員、頭の中で違う階層だっていう見方をしてくれればいいんですが。

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階層の表現は難しいです

西村:これ、自分でグリグリ動かせればいいんでしょうけど……現実の路線図ではなかなか無いですね。

大森:実はこないだ、千葉大の授業でそれをやった学生が一人いましてね。名古屋なんでJRだけちょっと違うというだけなんですけど、なかなかね、すごかったですよ。

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名古屋市営地下鉄路線図のリデザイン案(吉田百花さん制作)

井上:おー、すごい。たしかに、考え方としてはこれですね。

大森:ただ、この駅と駅を繋ぐときに、やっぱり何か重なっていると分かりづらいから、はっきり分けたほうがいいよ、と。

井上:意図としては、細い線でつなげて同じ駅だということを示したいわけですね。

西村:これ、路線図の表現手法としては挑戦的というか、おもしろい表現ですよね。見やすいかどうかは別として。

大森:今までそれこそ10年ぐらい授業やってきても初めてでしたね、こういうレイヤーの発想から描いてきたのは。

西村:『エヴァンゲリオン』を見て思いついたのかな?

大森:いやー、どうでしょう(笑)

井上:『エヴァンゲリオン』の路線図は斜め線は45度ぐらいですかね?

大森:路線図の描き方としては、それこそ初三郎みたいに鳥瞰図的に遠近感をつけて描くという方法もあるんですよね。授業でも路線図の線は縦と横、斜めの角度を揃えて描きましょうという路線図手法を使う一方で、都心部の込み入った部分と郊外の間が空いて駅の密度が低いところの差が大きい場合は、スペースを上手く使うという意味でも、パースを付けたり鳥瞰図的に描くのもありで、わりとそういう描き方でも見る人の脳はついてきてくれるわけですよ。

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鳥瞰図的手法で制作された大森さんの路線図。紀伊半島が大きく強調されている

井上:マンションのチラシによく載ってる路線図。あれはけっこう鳥瞰図になってて、本当は遠いのに近くに見えるんですよね。ああいうの「マンション路線図」って言ってますけど、あれわりと鳥瞰図になっている路線図ありますね。

大森:話が(『エヴァンゲリオン』の路線図に)もどりますが、もしこれを鳥瞰図風に描くのであれば、現状は駅の◯が全部正面を向いていますよね。これにもパースを付けて描いて「遠近法だよ」というのを、見る人の脳に訴えかけるように描くのがいいかもしれないですね。

井上:線は斜め上からみた視点でかいてあるんだから、駅の◯もそれに合わせて斜めにしたほうが分かりやすいと……斜め上からの視点っぽくなっているのはシュツットガルトの路線図とかがそうですね。古いやつですけど。

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シュツットガルト路線図

大森:30度ですかね。これは面白いですよね。敢えて垂直水平を入れていない。

西村:これかっこいいですねー。昔の『シムシティ2000』とか、これぐらいの角度がついてて、それこそゲーム画面が鳥瞰図っぽくなってましたね。

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宇宙戦艦内の鉄道『トップをねらえ』の路線図 

西村:さっきでた『オネアミスの翼』のガイナックスが作ったOVA作品ですね。女の子がロボットに搭乗して宇宙怪獣と戦うという話です。詳しい内容はウィキペディアをご覧いただければと思いますが……。それに登場する路線図がこれですね。 

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『トップをねらえ』©BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX

西村:これ、でかい宇宙戦艦の中を移動するための鉄道があって、その路線図なんです。

井上:はー、けっこう古さがありますね。テプラで貼ってある感じがいいですね(笑)

西村:よく見ると「2022年版」ってなってますね。

大森:これはかなり大きいというわけですね。

西村:そうですね。ただ、どういう風に運行されてるのかよくわからないんですね。4路線あって、支線がけっこうあって……。ただ、いずれにせよですけど『オネアミスの翼』も『エヴァンゲリオン』も『トップをねらえ』も全部、庵野秀明が関係してるんですよね。庵野監督、確実にこっち側の人ですね。

大森:庵野監督は、そうとう鉄道が好きなんですよね。……ところで、このヱクセリヲン鉄道は、どんな鉄道なんですか? これは? コンテナみたいな感じですか?

西村:たしかに、貨物感があるといえばありますね……。ホームに入ってくる列車のシーンなんですけど、こういうのが走ってるんです。

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『トップをねらえ』©BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX

西村:車両記号、クモハらしいですよ。クモハってなんでしたっけ?

大森:クモハは運転台(ク)がついていて、モーター(モ)がついていて、普通車(ハ)ですね。ざっくりですけど、モーターつけると高いから、全部の車両にモーター付けたりしないんですよ。10両だったら、4両とか6両とか。特に、関東地方は10両編成とか長い編成が多いですけど、先頭車両って運転台が付いたり色々あるから、あんまりモーター付けたがらないんです。

井上:へー。

大森:だから、先頭車両は「クハ」(運転台・普通車)が多いんです。クモハっていうのは(長い編成が多い)関東では珍しめかもしれない。

井上:他の地方にはある?

大森:2両編成とかの地域ではそうせざるをえないんです。

西村:あー、なるほど。

大森:あと、3両編成で使ったり、あるときは6両で使ったり、地方に回したとき、そういったときに「クハ」ってモーターがないから走れないじゃないですか。そうすると、またモーターを別途つける改造とかが必要になって大変なんですよ。だから、最初からクモハを作っとこう、というのが多いですね。

井上:編成の自由度を持たせるためにクモハにしておくというわけですね。

大森:クモハさえあれば単編成でも使える……というところを考えると、このヱクセリヲン鉄道の車両は短編成かな?(笑)

西村:これ何両か連結されているように見えたので、そんなに短い編成というわけではないと思います……。

大森:あと、路線図見て思ったのは、つながっているので循環させたほうがいいような気もするんですが、これ、複線なんですかね?

西村:うーん、どうだろう複線だったような気もしますが……。

大森:あるいは、単線で行き来してるのか。これだけ複数の路線があって、駅も多い。そうとう大きいということなんでしょうね。

西村:あと、もう一つ出てくる路線図があって、ウルトラひかり号の路線図です。

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『トップをねらえ』©BANDAI VISUAL・Flying Dog・GAINAX

大森:ほう。JRなんですね。

井上:これ、長崎の方から沖縄に伸びてるんですね。

西村:鹿児島じゃなくて、そっち経由なのかと。どこまで正確に描写してるのかわからないですけれど。

大森:宇部に停車しているのすごいですね。

西村:岡山、広島で宇部に停車するのかと。これは、庵野監督が宇部出身だからでしょうね。

井上:地方の政治家が地元に鉄道を引っ張ってくる、あのノリじゃないですか。

⏩ スプラトゥーンにも路線図が

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