特集 2021年6月21日

人力綿あめ?インドの伝統菓子「SoanPapdi」は日本の家庭でも作れるか

インドの伝統菓子で、SaonPapdi(ソーンパプディ/ソアンパプディ)というものがある。糸状の飴が折り重なったお菓子で、まろやかで口の中でほどける美味しさだ。

作り方を調べたところ、非常に興味深い動画を発見した。これをどうにか自宅でできないだろうか。筆者の長い戦いが始まる。

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの花屋。花を売った金で酒を買っている。

前の記事:SUBWAYの推しカスタマイズを募ったら、めちゃくちゃ美味しいサンドイッチに出会えました

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SoanPapdiというお菓子をご存知だろうか。

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こういった箱に入っておりまして
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このようにぎっちり詰まっており
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質感はこんな感じです。

調べたところ、インドの伝統菓子らしい。学生時代のバイト先でお土産にいただき、あまりの美味しさにバックヤードでSoanPapdiをほおばる妖怪と化した時から、長年このお菓子のファンだ。
見た目は綿菓子のようだが、サクサクしていて層状に剥がれる。口当たりはとろけるようにまろやかで、カルダモンが爽やかに香る。
「ピシュマニエ」という名前のよく似たお菓子がトルコにもあるらしい。

輸入食品店でみかけるたびに購入しては妖怪の姿になっていたが、あるときこんなことを思った。
「このお菓子、綿あめみたいだけど実際どうやって作っているんだろうか…」

すぐさまYouTubeで「SoanPapdi」と検索したところ、驚くべき動画がでてきた。

Ghee SOAN PAPDI Making Team Skills | How it's Made Soan Papdi Recipe | Indian Sweet Making Video(投稿者:Big Food Zone)

ぜひこちらをご覧いただきたいが、あまりにも衝撃的だったため、動画のキャプチャでも紹介させていただきたい。

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まず粉と油を炒め
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飴を溶かし
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たいへんに熱そうな飴をこね
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炒めた粉と油のペーストを和えて伸ばす!
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男二人がかりで伸ばす!
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すると、なんと飴がふわふわの糸状に!
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糸状の飴をほぐして丸め、型につめたら完成

海外の職人さんの動画にすぐアクセスできる、なんといい時代だろう。
しかしこの作り方は予想外だった。使い込まれた鍋でダイナミックに煮られた砂糖が、なぜこんなにも美しい絹糸状になるのか。

いま日本で入手できるSoanPapdiは、こういった職人さんの技を再現したマシンメイドだろうが、それにしたってものすごく美味しいのだ。手づくりはどれほどの美味しさだろう。

なんとかして家で作れないかYoutubeを見漁り続けたところ、自宅でできるレシピを紹介している動画が何本か見つかった。これはやってみるしかない。

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未知の材料、そして実験スタート

この記事は、筆者が手製SoanPapdiにたどり着くまでの、長い戦いの記録である。すぐにレシピにアクセスしたい方は、だいぶ下までスクロールしていただきたい。

最初に採用したレシピがこちら。複数の動画から集計したものだ。

・べサン粉…150g
・マイダ粉…75g
・ギー…125g
・砂糖…175g
・水飴…50g
・水…150g
・グリーンカルダモン…5g

レシピを調べ始めた頃の筆者の困惑をお察しいただきたい。「べサン粉」や「マイダ粉」とはなんなのか。日々この世界で食事をしているはずなのに、急に聞いたこともない名前の粉が台頭してきた。
しかし、レシピに書いてあるからには存在しているのである。べサン粉はひよこ豆の粉、マイダ粉とはインドでよく使われる小麦粉らしい。ちなみに「ギー」とは、バターを煮詰めてつくった高純度の油のことで、なにやら身体によろしいとのことだ。

筆者の家から歩いて行けるところにハラルフード(イスラム教徒向け食材)の店があり、行ってみたところ、べサン粉もマイダ粉も当然のように売られていた。

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ギーだけはキロ単位の巨大な缶しか売られておらず、Amazonで買いました。右奥はホールのグリーンカルダモン。

べサン粉とマイダ粉をレジに持って行ったところ、お店の方に「Are you Muslim?(あなたはイスラム教徒なの?)」と訊かれ、驚いてとっさに「No I'm not, just a fan of foods.(いいえ、私はただの食べ物のファンです)」というアホすぎる返答をしてしまった(本当はイスラム圏の食べ物のファンです、と言いたかった)。

ともあれ、これで材料はそろった。さっそく作ってみよう。

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まずはフライパン中火でギーを熱し、液体状になるまで溶かす。
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そこにべサン粉とマイダ粉を投入。焦げないように木ベラで混ぜ続ける。

最初はそぼろ状で、いまにも焼け固まりそうなのだが、不思議なことにしばらく混ぜているとペースト状になる。

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一体なにがどう反応しての変化なのか全くわからない。根拠なく「乳化した」と思うことにした。

そのうち甘く香ばしい香りがしてきたら、火を弱める。電動ミルで砕いたカルダモンを投入。

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自宅にある電動ミルがコーヒーミルしかなく、コーヒー豆を挽くといまだにカルダモンくさい。

ざっと全体を混ぜたらペーストの完成、火からおろす。
ちなみに、SoanPapdiの作り方動画が現地の言語で紹介されたものしか見つからず、各工程における"完成"の根拠がなにもない。オリジナル根拠で進行させていただく。

ペーストの粗熱をとっている間、飴を溶かす。ここから猛烈に熱い飴&オイリーなペーストを素手で扱いながら撮影をしているため、お見苦しい写真が多いがどうぞご容赦いただきたい。

まず砂糖、水飴、水を鍋に入れ、たまにかき混ぜながら沸騰させる。

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しばらく煮立たせ、冷水に垂らし入れると玉状にまとまるようになったら注意深く様子を見始める。120℃を超えたあたりで火を止め、あらかじめギーを塗っておいたバットに投入。
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ここからは料理というよりタイムアタック&我慢大会となる。常温に置かれた飴が固まり始めるからだ。
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1分もたたずこの状態に

ギリギリ触れそうだぞ!というところで飴をあつめ、こね始める。

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畳んで伸ばし、を繰り返していると、だんだん空気を含んで白くなってくる

これ以上は伸びないぞ…!というところで、先ほどのペーストを塗り込む。するとなぜか飴が少しだけ伸びるようになる。

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ペーストをつけては伸ばし、つけては伸ばしを繰り返し…
完成したものがこれだ。

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まあ、なんて美味しそうな玉子そぼろ!

どうして?

なぜ飴を伸ばしていたはずなのに、玉子そぼろができあがるのか。不幸中の幸いといっていいのか、味はSoanPapdiそのものだ。サクサクとした口あたりはなく、SoanPapdi味のハイチュウといった雰囲気。

何が起こったかを説明させていただきたい。

飴が熱々の状態では問題なく伸びていたのだが、ある時を境に全く伸びなくなってしまった。ナイフで切ったようにバキバキ割れてしまうのだ。
ペーストを塗り込むことによって、柔らかさは一時的に回復するが、またすぐに伸びなくなってしまう。というか、職人さんの動画のように美しい糸状にならない。

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ボロボロのすいとんみたいなものがうまれる

このあとも様々な飴の温度で試してみたが、同じような結果になってしまった。
失敗SoanPapdiはすべて筆者の茶菓子となる。私はこれから1日に何度ティータイムをはさむことになるのか。

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実験は深夜まで続く……
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SoanPapdiは見て学べ

飴を引く腕が限界を迎えたため、Youtubeに投稿されている作り方動画をはじめから見直すことにした。
そして、2点ほど重要なことに気がついた。

さきほど紹介した動画の、このシーンをご覧いただきたい。

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Ghee SOAN PAPDI Making Team Skills | How it's Made Soan Papdi Recipe | Indian Sweet Making Video(投稿者:Big Food Zone)
https://youtu.be/W8EPwubuq7A より

少々見づらいが、砂糖の粒が大きいのがお分かりになるだろうか。筆者が使っていたのは上白糖で、雪のように白く粒が小さい。対してこちらの砂糖は、やや透明感があり大粒だ。

もしや、インドで流通している砂糖が、日本の砂糖と別物なのではなかろうか…?

急いで他の動画を確認してみたところ、皆一様にこの粒子の大きい砂糖を使っていた。
もし砂糖の種類によって、加熱した際のふるまいが変わるとしたらどうだろう。インドの砂糖がどういった種類のものか特定できなかったため、上白糖よりも粒が大きいグラニュー糖に変更してみることにした。

また、別の作り方動画で、飴を溶かす際にレモンを投入している方がいた。最初は味付けのためかと考えていたが、どうやらレモン汁を飴に混ぜることで、固まりづらくなるらしい。

グラニュー糖とレモン、この2点を踏まえてできたレシピがこれだ。

・べサン粉…100g
・マイダ粉…25g
・ギー…75g
・グラニュー糖…90g
・水飴…25g
・水…75g
・グリーンカルダモン…3g
・レモン汁…2tsp

先ほどのレシピから全体的に減量させた。失敗した際に大量のSoanPapdiもどきが残されてしまうからである。量が多いとそのぶん筆者のティータイムが増えてしまう。

途中までの作業工程は割愛するが、グラニュー糖とレモンの成果は確かにあった。

ご覧いただきたい、飴が絹糸状に伸びている。

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美しい!

これだ!このテクスチャが見たかったのだ!!と思ったのもつかの間。

できあがったものがこちらである。

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うにフレーバーのさきイカ????

なぜだ。なぜさきイカに。途中まで絹糸のようだったではないか。
何が起こったかというと、ペーストを塗り込むほどに飴がくっ付き合い、ぶちぶち切れてしまうようになったのである。伸ばせば伸ばすほど自重で切れ、癒着し、糸はイカとなった。

もう打つ手はないのだろうか。

発見は奇跡のように訪れる

その後も同じレシピで試してみたが、さきイカが増えるばかりであった。

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むしろ、よりさきイカらしくなってきた

2日間飴を練り続けて腕はヘナヘナだし、指は火傷を負っている。
なかば自暴自棄で、失敗したSoanPapdiをバットのままIHコンロにかけた。もう疲れたよ。全て溶けてしまってくれ。

一息つき、すぐキッチンに戻って驚いた。
最初は、飴と油分が分離して溶けるだろうと思っていたのだ。
それがどうだ。飴と油分が混じり合い、白く柔らかいペースト状になっている。

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少し冷めたそれを練ってみて直感した。私は、いま真理にたどり着こうとしているのではないか。本当に欲しかったものはこれではないのか。

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直感は徐々に核心に変わる。油と馴染んだ飴はやわらかく、固まる速度が遅い。練るほどに空気を含んでふわふわになり、追加のペーストを加えたら糸状にほぐれた。

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やわらかく軽いこの質感!これだ!!!

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ついに完成したSoanPapdiがこちら。

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かなりそれっぽい!!!

筆者の腕力ではこれ以上伸ばすことが叶わなかったが、Youtubeのレシピ紹介動画で見た姿にはなった。より細く伸ばすには上腕二頭筋のトレーニングが必要だ。

ナイフで切るとザクザクとパイ生地のように割れ、それでいてふんわりとしている。味もまろやかで、口の中でほぐれる優しい甘さだ。とてもおいしい。
市販品はシャクシャクした歯ごたえがあるため、この辺りが大きな違いといえよう。

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さきほどのさきイカと比較すると分かりやすい。

偶然から完成してしまったが、さらなる実験の末、比較的安定して作れる下記のレシピを編み出した。

・べサン粉…100g
・マイダ粉…25g
・ギー…75g
・グラニュー糖…90g
・水飴…25g
・水…75g
・グリーンカルダモン…3g
・レモン汁…2tsp

①ギーを中火にかけて溶かし、べサン粉、マイダ粉を加えて混ぜながら加熱する。ポタージュ状になるまで根気強く混ぜ続ける。

②サラサラになったら弱火にし、ミルで粉状にしたカルダモンを投入。ざっくり混ぜたら火からおろす。

③フライパンを一度洗い、グラニュー糖、水飴、水、レモン汁を入れ、中火にかける。沸騰してからはなるべく触らずフライパンを回すようにして混ぜ、きつね色の135℃あたりで火からおろす。ギー(分量外)をたっぷりと塗ったバットに注ぐ。

④すぐに硬化がはじまるため、溶けたギーと混ぜながら菜箸ではがし、手で折りたたんでは伸ばし…を繰り返す。この工程でループ状に形成し、輪っかを広げては2重に折りたたみ、としていくと後々楽である。

⑤やや伸ばしづらくなってきたところでペーストを表面に塗り込み、さらに伸ばす。だんだん糸状にほぐれてくるため、限界がくるまで伸ばす。

⑥折りたたんでタッパーなどの型につめたら完成。しばらく放置すると型の形にパリッと固まる。

飴を伸ばしながら、太さが均一にできるかが腕の見せどころだ。
インドの職人さんを目指してチャレンジしてみてほしい。


飴伸ばし職人への道は険しい

欧米圏では「Dragon's Beard(龍のヒゲ)」という名前で、同じように飴を伸ばして作るお菓子が存在しているようだが、そちらではペーストをまぶさず、煎ったコーンスターチを絡めながら作っていた。
1人では伸ばせる飴の長さに限界があるようで、今回作ったSoanPapdiもインドの職人さんのふわふわ感には及ばない。自宅で美しい絹糸状の飴を作るノウハウをご存知の方がいたら、ぜひご教授いただきたい。

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