クリーニング屋さんを定休日にする
ちょうど、撮影で使うために編集部から送ってもらった学ランをクリーニングに出す用事があったのだ。クリーニング屋さんを定休日にしに行こう。
看板と学ランを脇に抱えてクリーニング屋さんに向かう。職場でよくお世話になるお店だから撮影を快諾してくれるはずだ。
クリーニング屋に着いたとき軒先には店の方がいて、挨拶すると「今日はどうしたの」と返してくれた。よし、仕事着じゃなくても顔で認知されている。折衝しよう。
窪田:あの、この学ランをクリーニングしてほしいんですけど
店主:は~い…こん定休日の看板は何なと?
窪田:(今からこの店を定休日にするンだよ!!)あの、この、定休日の看板の横で、服持ってがっかりしてる写真が撮りたくて、かわいそうで面白いなと思って、いいですか
店主:あ~!(笑) いいばいいいばい。入口閉めてカーテンとか下ろそか?
窪田:いえ、そこまでは大丈夫です!!!すぐやります!
…パシャ!!
シャッターが下りてないし店が開いてるかと思いきや定休日の看板が立っててダメなやつだ。中に誰かいる気配がして、融通きかせてくれたらいいなあと外から少し覗き込んだりする、あのときのむなしさだ。
窪田:ありがとうございます。最高です。
店主:他の店でも撮らんといけんね
窪田:お店はもう大丈夫なんですけど、ほかには滝とかもいいなって思ってます。滝、分かりますか?滝が定休日なんですよ
店主:はいはい。定休やけど水流れとるやんみたいな、ブラックユーモアみたいなね
…優しい。会話がじんわり沁みた。察しが良すぎるだろう。
元来僕は口下手で、頭で考えていることを口で喋ってもあんまり人に伝わらなくて、それで、その腹いせとして文章を書いているのだ。なのに、祖父といいクリーニング屋さんといい、分かってくれる人ばかりじゃないか。
そろそろ俺の祭りは終わるのかもしれない。
そういうわけで、理解がよすぎるクリーニング店、高千穂の三国屋さんを今後ともよろしくお願いします。
それでは最後、宣言通り滝を定休日にしにいこう。
滝を見る
撮影によく使う勝手知ったる滝があり、そこにやってきた。宮崎県北の五ヶ瀬町にある「うのこの滝」というスポットだ。
意気揚々と歩いていたら後ろから二人組の方がやってきて、道を譲った。絵を描くんですか?と声をかけられたので、冗談の撮影ですと答えた。
歩くこと数分、滝のもとにたどり着いた。
滝はどうやら定休日ではないようで、落ちる水はごうごうと音を立ててうるさいくらい。ここは過度に観光地化されておらず、周りも自然の形そのままで残っているのが好きなポイントだ。
じゃあそういうことなんで、場所が空くのを待って滝を定休日にします。
自分でやっていることながら、定休日ってなにが?という感想がつい漏れる。たとえ干ばつで水が枯れていたとしてもそれは臨時休だろう。
滝、岩壁、陽光。人間の感興をそそるこれらのものが一体になっても「定休日」の持つ力には遠く及ばず、休みで残念だなという気持ちになるのだ。よもやこれほどまでとは。
最後に定休日の滝の現地レポートをしてお別れです。滝の音に負けじと声を張ったら喉潰れました。
記事に使わなかった写真
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