デジタルリマスター 2022年11月17日

道のまっすぐ具合を確かめる(デジタルリマスター)

地図を見るのが好きだ。

知らない場所でも、行った気分になったりできる。ただ、もっと面白いのは、知っているはずの場所で何か新しい発見があることだ。

近場の地図を眺めていて、気になることがあったので、確かめてきました。

2007年2月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

前の記事:街にある文字は何を伝えようとしているのか

> 個人サイト ツイッター(@mitsuchi)

どこまでもまっすぐな道があった

東京の中野坂上という場所に用があり、地図を眺めていた。用があった場所は画面下の方南通り沿い。

ふと、南西の方角に向かってまっすぐ伸びている道があるのに気がついた。

だからどうした、とお思いかもしれない。しかし地図好きにとっては見逃せない点があるのです。

  • 東京にはまっすぐの道は少ない
  • 大通りでもない細い路地ならなおさら

細くてまっすぐな道。これはレアです。どこまで伸びているか、ぜひ確かめなくてはならない。そんな義務感から、地図を辿ってみた。

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確かめに行かねばなるまい

こんな細い路地が中野から多摩川までまっすぐ続いているなどというのはほとんど奇跡だ。

例えていえば住宅地の中を約10kmの滑走路のような道がずっと続いているようなものではないだろうか。

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こんな道が住宅地を貫いているのに違いない。

上の写真のような道を想像しつつ、実際に確かめに行ってみた。

実際の場所はこう

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まっすぐな道の出発点。妙法寺付近。(東京都杉並区)

ふつうの路地だった

うん、ふつうの道だ。学校帰りに友達と遊んだよくしってる道だよ。

住宅地に滑走路が通ってるわけなんてないんだよ、と思いながら、それでもやっぱりこの道がまっすぐ多摩川まで続いているなら、終点まで行ってみたい。そう思った。

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この道は荒玉水道道路というらしい。
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両側は住宅地の風景そのまま。
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道の下には水道が通っているらしい。

由来をさぐろう

しばらく行ったところに、杉並区郷土博物館の案内があった。この道がなんなのか、ちょっと調べてみることにした。

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杉並区郷土博物館。いかにも郷土という入口。

中に入り、学芸員の方に尋ねてみた。

明治のはじめ、近代水道の始まりのときに、多摩川から杉並のあたりまで地下に水道管を通したのが由来らしい。

・そのころは原野だったのでまっすぐひけた。
・せっかくだからその上を道路にした。

ということのようだ。それ以来、この道は基本的にはだれにもじゃまされずのびのびとまっすぐ延びているのだ。

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昭和4年に書かれたというよく読めない漢字の地図を見せていただいた。そこにも・・
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荒玉水道道路は載っていた(矢印の下を左右に走る道)。中央やや左を上下に走るのは井の頭通りで、これも水道が下に通っているためまっすぐらしい。
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後はダイジェストで

そこから約10kmの道を多摩川まで向かった。基本的に風景は今までの感じと変わらないので、道のりの写真を少しだけ。

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方南通りとの交差点付近。自転車のお兄さんがぼくを追い抜いていく。まっすぐの道を走るのは気持ちよさそうだ。
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途中で2箇所だけ道が寸断される。ひとつはここ、甲州街道。もうひとつは京王線の桜上水駅付近。
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世田谷通りを抜けると、多摩川が近い。段丘を見下ろす広い視界になり、うれしい。

そして終点

まっすぐ伸びているという以外、それほど劇的でもない道のりを多摩川までやってきた。

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多摩川についた。
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土手に寝てみたり。

最初に想像していたような特別な道ではなかった。ああ、こういう路地あるよね、と思いながら、ずっと自転車を漕ぎ進めていた。


まっすぐな、ふつうの道

そしてたどりついた多摩川。いつもより感慨深くみえるかな、と思ったけど、そうでもなかった。土手には工事現場が雑然と広がり、人々はいつもどおり散歩をしていた。

帰り道、もときた道を途中まで引き返してみた。もしかしたら逆から見た風景はちょっと違うかもと思ったからだ。でも見えたのはいつもの住宅街だった。

まっすぐな道があり、ぼくはそれを地図で見つけて、そしてやってきた。そういう日もあるかなあ、と思った。

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