家飲みをワンランクアップ
「居酒屋に行きたいけど行けないから、ちょっとでも似た空気を感じてお酒を飲みたい」と始めた試みでしたが、「居酒屋のトイレ空間にどっぷり浸かる」という別種の楽しみができました。
オンライン飲み会・家飲みがややマンネリになってきた方、バーカウンターなどを設置するほどではないけど雰囲気を変えて家で飲みたい方におススメしたくあります。もちろん、「居酒屋のトイレファン」にも是非です。
ピースボートさんありがとうございました。
自分の家のトイレを居酒屋のトイレみたいにして、オンライン飲み会をワンランクアップさせました。
コロナ禍が続き、居酒屋に行けない日々が続きます。
しゃあないのでオンライン飲み会という形で友達と飲みつ語りつして、ある程度の満足感は得られていますが、 やはり居酒屋という場所が持つあの雰囲気は味わえません。とても懐かしく思います。
特に、独特の空気を醸し出すあの居酒屋のトイレがものすごく恋しいのです。
私は学生街にあるリーズナブルな居酒屋を利用していたのですが、そういう所のトイレは独自のアイテムがちりばめられていました。ほの暗い個室に浮かぶ過剰なほどの貼り紙、ちっさい洗面台、アメニティコーナー……。
ちなみにうちのトイレはこんな感じです。
人ん家のトイレって感じで、居酒屋っぽさはありません。これだと、オンライン飲み会の途中でトイレ行くと「あ、自分の家や」と落ち着きはしますが、居酒屋のトイレ特有のあの雑多さはありません。
思慕やまぬ居酒屋のトイレをおうちに再現して、ちょっとでも居酒屋気分を楽しんでみたくなりました。
リフォームみたいな大改造はできませんが、小道具でもりもり演出していきましょう。
私が行くような「学生向けの安くてわいわいしたムードの居酒屋」のトイレには、十中八九スタッフの紹介ボードが貼ってあると言っても過言ではありません。そこには、若いスタッフの笑顔の写真、彼らのあだ名やプチ情報が添えられています。
私は引っ込み思案なので、こういう元気いっぱいの紹介を見るたびに、「私はここで働いたら浮くんやろな・・・」と思ってしまいます。
今後このような楽しげ紹介ボードに参加する可能性は低いことでしょうし、一世一代、自分だけでこのボードを作ってみましょう。
まずは従業員(私)の撮影です。
小道具をこまめに変えます。
つぎに、写真を紙焼きして輪郭にそって切っていきます。
私の従業員度高すぎです。この時点で求人広告みたい。
こういう飾りもちまちま作ってみます。ああいうスタッフ紹介ボードって結構手間かかってますよね。
写真やネームプレートもろもろを貼り付け……。
色んなキャラの人がいる明るい職場風ボードができました。よくよく顔を見てみると全員同一人物なのが猟奇的です。じっと見てると、「居酒屋をワンオペできりもりし続けてどうかしてしまい、多重人格で9役してる人」にも見えてきてゾッとします。
あとから備え付けたからでしょうか、居酒屋の個室トイレの洗面台は相当ちっちゃいです。洗面器はでかめの皿くらいの大きさしかないので、ダイナミックに手を洗うことは不可能です。
家に洗面台を増設することは難しいので、それっぽいものをしつらえようと思います。
洗面器は「黒い深皿」というイメージがあるので、ニトリで購入、そして蛇口はコーナンで銅の金具を買って、なんとかこねくり回してみます。
こんな感じでしょうか。
棚の幅がめちゃくちゃ狭い印象ですが、現実にもこれくらいせせこましいのあるのでよしとします。もちろん水はでません。
アメニティも充実させました。
コットン・綿棒・ウェットティッシュに、私が「あると嬉しいなあ」と思う糸ようじとメガネ拭きクリーナーをセッティングしました。便器のうしろの小高い棚に置いてみました。
こういうカゴのそばに、たまに異業種のチラシが置いてありますよね。「店主どうしが仲いいのかな」と想像が膨らみます。架空のエステサロンのチラシを作りました。なんか私の中で、「トイレにあるといえばエステサロンのチラシ」というイメージが強かったのですが、これって個人的なイメージなんでしょうか?ぜひ皆さんの声をお聞かせください。
居酒屋のトイレになくてはならいもの、それは「名言」です。毛筆風の文字で書かれたそれを、用を足しながら漠然とながめる(そして読むそばから忘れる)のは、今思うと嫌いではない時間でした。
偉人の超有名な格言というよりも、「お店の人が書いたのかな?」という感じの見たことのない金言が多かったように記憶しています。そのひそみにならって、自分でオリジナル名言にチャレンジしてみます。
全然思いつきません。
いざ作ろうとすると結構難しい。うまいこと言おうとするとどうしても恥ずかしさでストッパーがかかってしまいます。昔の自分に頼ろうということで、スマホにメモした過去の言葉でめぼしいものをピックアップします。
「居酒屋のトイレにかざってもギリええかな」というのが見つかりました。
見つかって一安心ですが、当時の自分はこれをメモってどうしようとしたのかが謎です。
線の太さが極端な筆文字で書いていきます。
名言で使われるフォントっぽい字を書くのが意外と楽しくてテンション上がりました。挙句の果てには消しゴムハンコを彫ってまで名前の朱印を押す始末です。
※私が適当に作ったイメージ図です
居酒屋のトイレで忘れてはならないのが「世界一周のポスター」です。100万円前後で世界一周の船旅ができるというアレですね。
あれは、ピースボートという会社のポスターで、なんでも、乗船予定者がポスターを配るとその分割引を受けられるというシステムによって色んなお店に貼られているそうです。学生街の飲み屋では、このポスターとの遭遇率は相当なものでした。
ぜひこのポスターを手に入れたいところですが、待てど暮らせど「このポスターを貼ってくれ」という若者が現れないので、自分でピースボートさんに問い合わせました。
家のトイレに貼るというだけでは失礼だと思ったので、ちょっと貼る予定の場所を広げてみました。世界一周に参加したことないやつがこんなお願いして、やや酔狂かなと心配したのですが、
こういった内容のやさしい返信をもらいました。
しかもポスターは何枚か頂けるみたいです。お忙しい所大変ありがたかったので、4枚送ってもらい、恩返しとしてほんまに部室に貼ろうと思いました。
資料とセットで届きました。
私が大学生の頃よく見たポスターデザインとは違っていますが、「世界一周かあ」と空想してしまう魅力は変わらずです。
以上主要な4アイテムの他にもせっせと小道具を準備しました。3連休の最終日、大学のサークルの友達とオンライン飲み会をするということになったので、その時におうち居酒屋トイレを堪能することにします。
いつもは缶ビールに適当な残り物で済ませますが、
ちゃんとジョッキに注ぎ、ごはんも揚げ出し豆腐やからあげ、アボカドサラダなどちょっと居酒屋っぽくしてみました。(私にはこれが限界でした)
サークルの友達としゃべったり、オンラインゲームをやったり、「L'Arc〜en〜Ciel」のつづりを何も見ずに正しく書くチャレンジをしたりしてめちゃくちゃ楽しんでいたところ、
尿意は突如おとずれました。
もりあがってる話題を惜しみながら席を立ち、いつもの場所にあるトイレへ向かいます。
のれんをくぐり、ドアを開けると、
そこは居酒屋のトイレでした。
貼り紙のほか、照明を落とし、床に黒タイル(の絵を)敷いたことにより、「っぽさ」がでました。
座ると目の前に広がるのは「貼り紙攻め」です。
おすすめコースのポスターと、駅前飲み屋マップをオリジナルで作ってみました。
大学近くの居酒屋という設定にしたので、リーズナブルでがっつり系のコースメニューを揃え、そして飲み屋マップは商店街と大学の同好会がコラボして作ったということにしました。自分で作っといてなんですが、既視感ムンムンです。
酔った頭には、パッと見スタッフが全員同じ顔だとは気づきません。しかし、じっと見つめていると「え?同じ人?もしかして酔って頭が変になってる?」とぐるぐるしてきます。
この「いいことを言おうとしてるんかな?」という貼り紙も、酔った脳で理解できるいい塩梅でした。(ただ、テーブルに戻ったときにはすっかり忘れてる)
トイレのうちどっかは壊れてますよね。
不思議な状態です。
用を足しおわって立ち上がると、
世界一周のポスター。ぼんやりと「世界一周もアリやなあ……いやでもバイト辞めなあかんやろし、一緒に船乗ってる人らとうちとけられる自信ないなあ……」などと考えます。
手書きの注意に素直にしたがい、
便器のうしろの棚に目を向けます。相撲番付とアメニティです。実際に相撲番付がトイレに貼ってあるのは見たことありませんが、ナイスマッチだったので加えました。
アメニティを見ると、すぐ使わんくせに綿棒を取ってしまいたくなります。
手をかざすと明らかに小ぶりな洗面器。きゅっとコンパクトに手を洗う(パントマイムを)します。
久しぶりの居酒屋トイレ体験でした。
居酒屋のトイレでの自分の行動をつぶさに観察してみてわかりましたが、お酒を飲んで酔っぱらった状態なのに、狭い空間のいたるところに注意を向け、かなり頭を回転させて色んな情報を処理していることがわかりました。
知らぬうちに、さっきまでいたテーブルの喧騒から離れて、一人の時間を、居酒屋トイレという空間を味わっています。
居酒屋トイレって独立した一つの世界だったんですね。
「居酒屋に行きたいけど行けないから、ちょっとでも似た空気を感じてお酒を飲みたい」と始めた試みでしたが、「居酒屋のトイレ空間にどっぷり浸かる」という別種の楽しみができました。
オンライン飲み会・家飲みがややマンネリになってきた方、バーカウンターなどを設置するほどではないけど雰囲気を変えて家で飲みたい方におススメしたくあります。もちろん、「居酒屋のトイレファン」にも是非です。
ピースボートさんありがとうございました。
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