青山 vs 赤坂 vs 六本木 vs 麻布 vs 広尾
白金高輪に続き、港区の強そうな街をまとめて可視化する。
群雄割拠の戦国時代みたいな図になった。
この図だけで1時間ぐらい眺めていられる。気づいたことを列挙すると
・麻布が取っ散らかってる
・広尾はコンパクトにまとまってる
・青山が西のほうまで伸びて赤坂と混ざっている
・六本木通りがあるのに六本木は意外とコンパクト
こんな感じか。街の境目を見てみよう。

よく見ると街の境界が道じゃないところが多い。なんだこれは……。
特にこの部分。赤坂と六本木を分けるのは、道ではない何かだ。
この辺りは坂が多い。乃木坂、けやき坂、桜坂。アイドルグループみたいな名前の坂は全部この辺りにある。ということは、山だ。山の高低差が街を隔てているのではないだろうか?
国土地理院の標高マップを重ね合わせてみた。
国土地理院の色別標高図にOpenStreetMapの情報を重ね合わせて作成。
赤坂と六本木の間に大きな高低差がある。その部分に線を引いてある。六本木は坂の上、赤坂は坂の下である。
道以外にも「高低差」が街の境目になっていたとは。「高低差」は坂道とは垂直方向の境目である。地図上で道を見るだけでは浮かび上がってこない情報だ。
せっかくなので六本木と赤坂の境目に来てみた。左にあるのは氷川神社。坂を下ると赤坂だ。
より傾斜が分かりやすい写真を撮った。
神社の石の段数で傾斜が伝わりますかね?六本木は坂の上。赤坂は坂の下。
建物名を可視化して分かったこと:
高低差が街を分けることもある
話は変わるが、あの取っ散らかっていた麻布の建物たちも、もう少し掘り下げたい。昔はどうなっていたのだろう。
1944年撮影の航空写真にOpenStreetMapの情報を重ね合わせて作成。
現在「麻布」と名のつく建物のいくつかは、1944年時点で広い土地だった場所に密集している。四角で囲んだ部分がそれだ。
当時広い土地だったところが後に開発され、現在、ビルやマンションが建っている。そういうストーリーのようだ。逆に、当時から戸建て住宅がビッシリ建っているようなエリアはいまもビルやマンションが少ない。可視化して浮かび上がったのは街の歴史だ。
建物名を可視化して分かったこと:
可視化されないエリアは昔から戸建てが多い
浦和 vs 大宮
最後に浦和と大宮を可視化したい。"禁断" という感じがする。
くっきり分かれていて気持ちがいい。
いまでこそ同じ「さいたま市」だが、元は浦和市と大宮市だったし、今も「浦和区」「大宮区」として地名が残っている。建物名に「浦和」「大宮」が入っているのも自然だし、変なところはひとつもない。不思議なところは何一つなく、やや面白味に欠ける。
でも、だからこそ気になるのが最前線の様子。
浦和軍と大宮軍が接触している地帯、どうなってるんだろうね。本当に趣味が悪いという自覚はあるが、やっぱり気になる。
もっと拡大してみる。最前線はこうなっている!
ハイツ浦和 vs 大宮第2スカイハイツ のさいたまダービーが繰り広げられていた。ハイツダービーでもある。
産業道路を挟んで対峙するハイツ浦和と大宮第2スカイハイツ。 絶対に負けられない戦いをここに見た。おわり。
どうやって可視化したか
最後に、どうやって可視化したのかを簡単に紹介したい。
特定の地名を含む建物名を知るには、OpenStreetMapの情報を使った。地図のオープンデータだ。そして、Overpass Turboというサイトを使えば、簡単にOpenStreetmapの情報を抽出することができる。
数行のスクリプトを書くだけ。
スクリプトの中身はこんな感じ。
[out:json][timeout:25];(
way["building"]["name"~"大宮"](35, 139, 36, 140);
relation["building"]["name"~"大宮"](35, 139, 36, 140);
);
out center;
(地名部分は適宜修正して下さい。また、(35, 139, 36, 140) は検索対象の緯度経度のパラメータなので、東京付近以外を対象にしたい場合は適宜修正してください。)
なお、実際には「2つの街の色分け」が必要だったので、スクリプトの実行結果をJson形式で出力し、Pythonで読み込んで重ね合わせて表示している。foliumというライブラリを使うと簡単にできます。
編集部からのみどころを読む
編集部からのみどころ
思った以上にくっきり分かれていて気持ちがいい…!地図で調べるだけでなくこまめに現地訪問したうえで、その上でさらに過去までさかのぼって資料を調べるという、手の尽くされた調査で熱意の伝わってくる記事でした。
一軒家には地名がつかないというのも確かにという感じで面白いですし、その話が最初白金台のところで出てきて、あとで麻布でまた出てきて知識として使われるのがアツいと思いました。伏線回収って感じで。(石川)
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