特集 2020年6月8日

ナンバープレートの地名の文字を愛でる会

気づいてほしい、このかわいさ

つい先日の2020年5月11日、新たに17地域がナンバープレートのご当地ナンバーに仲間入りした。

筆者は新たなご当地ナンバーの登場にワクワクしていた。ナンバープレートに書かれている地名の文字が好きなのだ。いてもたってもいられないので、ここらで「ナンバープレートの地名の文字を愛でる会」を開催する。

埼玉生まれ、神奈川育ち、東京在住。会社員。好きなキリンはアミメキリンです。右足ばかり靴のかかとがすり減ります。(インタビュー動画)

前の記事:日常をゲームの攻略本のようにしてワクワクする

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愛でよう、ナンバープレートの地名

さて、冒頭で述べた新たなご当地ナンバー17種がご覧のとおり。

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数字が全て「20-46」なのは、大小の曲線と直線でバランスよく構成されていてサンプルとして優秀だからみたいです。へえ〜 出典:国土交通省

その地域らしさを詰め込んだ背景デザインも気になるが、今回の主役は文字。この記事を通して彼らの魅力が少しでも伝わればいいな、というのが今回の記事のテーマである。

「ナンバープレートの地名の文字を愛でる会」、お声がけしたメンバーは以下の4名だ。

 
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日下田さん:デザイナー。趣味でフォントを集めるほど文字が好き。
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手がけているTシャツがとてもかわいい
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Karen Ujiさん:デザイン専門学校時代、タイポグラフィ(文字のデザイン)を学んでいた。同じくデザイナー出身。
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Ujiさんのイラストのこの素敵な文字と配色!

そしてデイリーポータルZからは以下の2名でお送りします。

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林雄司:デイリーポータルZ編集長
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北向ハナウタ:筆者

地名フォントのかわいさは、「おしゃれ寄り」と「不思議寄り」のふたつある

 さて、現在交付されているナンバープレートは全133種。
※ご当地ナンバー58種はこちら。古くからのものはまとまっていないため興味ある方は各自検索ください!

参加者には事前に全ナンバープレートをお見せして好きなものを5つ選んでいただいた。泣く泣く候補から外したものも多く、それぞれ何を選んだのかとてもワクワクしている。

まずは筆者から。

5位:飛鳥

北向:じゃあ発表はじめますね、まずは「飛鳥」です。
全員:あー!

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みんなにこやかな顔(お二人は顔出ししてないけど終始笑顔でした、ありがたい)

日下田:このナンバープレート欲しいですよね、飛鳥ナンバーって言いたい。
北向:やっぱり「鳥」の下の「灬」ですよね、この斜めの角度の揃い方…!名前もデザインもわかりやすく格好いい…

5位はつい先日発表された新しいナンバーから選出した奈良の「飛鳥」。

選定ポイントは何より「鳥」のスタイリッシュさなのだけど、実はこの飛鳥より人気の「鳥」を使った地名がこのあと出てくることになる。

4位:山形

北向:4位はこちら、山形

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見て、この「形」!

日下田:あー山形!そうですよね!
北向:何よりこの「形」の「彡」が「三」になっているところが、もうかわいくて。

ナンバープレート全種を並べても、ここまで大胆に斜めの画(かく)を水平にしている文字はなかった。なんでそんな独自路線を走るんだ山形。

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「形」、鳥居が左に走っているようにも見えますよね

地名を眺めていると、「かわいさ」の種類が大きく二つに分かれることに気づく。

ひとつが先の飛鳥みたいな「デザインしてやるぞ!」という洗練されたかわいさ。一方で他ではあまり見かけないような不思議なバランスのものもあって、それもまた魅力なのだ。

そういった後者の「不思議かわいい」部門にあげたいのがこの山形である。のちに発表する林さんも、わりとこの不思議かわいい文字が気になる派だった。

3位:練馬

北向:3位はかぶらないんじゃないかなと思ってるんですけど、練馬
全員:あっ。

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全員「かぶりました!!!」

えっ、133種あって全員かぶるとかあるのか!じゃあ、ということで練馬の話は最後尾のUjiさんの発表時に回すことにした。

この”練馬全員かぶり”から、テレビ会議特有の出だしの緊張感がほどけた感じがした。地名を愛でる会のグルーヴが芽吹いた瞬間だ。

2位:奈良

2位に挙げたのが奈良。先ほどの飛鳥といい、奈良県勢がつよい。

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シンメトリーな「奈」がかわいい

日下田:かわいい〜。
北向:見るからにかわいいですよね、この「奈」。
Uji:どこかアイドルっぽさを感じますね。
北向:アイドルっぽさ!
Uji:華やかさというか、「大」と下部分と、花が開いているような…

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奈良のかわいさ図解

Ujiさんの”アイドルっぽさ”という表現が印象的だ。そうか、奈良は地名界のアイドルだったんだ。

1位:滋賀

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北向「1位は、滋賀です」

全員:あ〜〜滋賀〜〜。

滋賀は自分が「ナンバープレートの文字かわいいな」と思ったきっかけの、思い入れのある地名だ。これはもう、誰が見てもかわいいのではないだろうか、推しの地名である。

林:「滋」、ヒエログラフみたいですよね。
北向:あ〜、祈ってる人みたいですね。
Uji:何かをしゃべっているみたい。
北向:屋根がある場所で。
日下田:「祈り」の文字だったんだ…
※個人の感想です

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滋賀ってすごい慈しみ深い地名だったんだ

北向:「賀」も。下の払いの出てる位置が革命ですよね。
日下田:初めて見たときにこんなことしていいんだ、って思いました。
Uji:3Dプリントにしたら安定感ありそうですね。
北向:あー、「滋賀を置くならこう」って感じだ。

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溢れ出る滋賀のかわいさ

文字ひとつとってもみんな注目しているところが違う。これは楽しいぞ、自分の知らない文字の良さがいろんな角度からにじみ出てくるのだ。

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キーワードは”墨だまり”

2人目は日下田さん。
文字集めが趣味とのことでお声がけしたのだけど、会がはじまってからのテンションの高まりと笑顔から本当に文字が好きなのだな〜という熱が伝わってくる。どんな地名が出てくるのだろう。

5位:江東・香川

日下田:2つあって、「江東」と「香川」なんですけど…
Uji:あ〜〜かわいい(声が漏れるように)

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へぇ!どちらもノーマークだった

日下田:ナンバープレートの文字を見ると、どれも結構正方形にしたがっている(横に広い)印象なんですね。
そのなかでこのふたつは東の田、香川の日の部分が引き締まっていて、現代的だな〜と感じました。
Uji:(おおきく頷く)
林:へぇー、第2世代ですね。

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ふところ:画と画が構成している内側の空間のことで、ふところが広い書体はおおらかな印象、狭い書体はひきしまった印象を与えます。<モリサワ フォント用語集より>

日下田:今ふところの小さい字が流行っているイメージなんですけど、この「香川」は昔からある地名のフォントなのに洗練されているのがおもしろいなあと。
林:そういう目線があるんだな〜。

林さんと同じく、そういう目線があるんだな〜!と思いながらふんふん話を聞いていた。普段からフォントを見ている方々の視点はとても新鮮で興味深い。

実はもうひとつあった5位が「練馬」。飛ばします。

4位:青森

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 北向:青森!わかる〜。
日下田:月のデカさがいい…。さっきの「香川」と逆で、おおらかな感じ。

日下田さん曰く、ナンバープレートは”墨だまり”っぽさがチャーミング、とのこと。
墨だまりとは、”線が重なる箇所に溜まったインク”の部分のことだそうだ。写植特有の雰囲気を再現し、やさしい印象になる。すごい、今日勉強になるな…!

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墨だまりが特徴的なのがA1明朝などのシリーズ。天気の子、などのタイトルフォントにも使われているそうだ。はー、見たことある!
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言われてから眺めると、ああ〜墨だまり、と思う。墨だまりを感じる、感じるぞ

ナンバープレートの文字は総じて丸みを帯びている。これは推測だけど、プレートをプレスする際に、文字に角があるとうまく処理できないのではないだろうか。とのこと。

なにせこのフォント、統一されたものでもなく、どこの会社が作っているかも非公開とのことで詳細がつかめないのだ。我々にわかることはただひとつ、この文字がいい感じだ、ということ。さあさご両人、深いことは考えず引き続き目の前のいい感じの文字を愛でるぞ。

3位:岡山

3位は「”岡”がつく地名はたぶん5つあったんですけど、これが一番顔に見える」との理由で岡山。

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岡崎と比べてもとかなり印象違う。岡山の「岡」はごきげんな犬っぽさありますよね

2位:岩手

日下田:2位は岩手。もうかわいいでしょう、っていう。

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かわいいよなあ、実は筆者も幻の6位にあげていたのがこの「岩手」だったのだ

日下田:岩手の岩の、「石」の部分ですよね、かわいい。
林:3秒見るともう岩に見えなくなりますよね。気づかなかったけどこんな形してたんだ。
北向:上の山をとっちゃうともう「石」には見えないですね、すごいギリギリのバランス…

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いや、岩手かわいいだらけだな

日下田:岩手のナンバーはじめて見たんですけど、こんなのあったんだって。

確かに、東京近辺で暮らしているとなかなか岩手ナンバーの車を見かけない。今まで知らなかったかわいい地名っていっぱいあったのだ。もったいないことをしていたな。

1位:鳥取

日下田:1位は鳥取で。
林・Uji:あ…(二人とも鳥取をランクインさせていた)
北向:かぶりのため息が。
日下田:みんな…!

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大人気、鳥取

日下田:「取」の1画目、そんな伸ばしちゃうんだって。鳥も4つ点が揃っちゃうんだ…って。
Uji:「取」、背負い投げしてるような感じに見えますね。

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わかる、見えてくる

日下田:すごい動的ですよね。「耳」の左下もかなり隙間があいてる。右に伸びる1画目を短くして、「又」を上あげたら普通のバランスなんですけど…

そっか、そう言われると右へ回転する動きが見えてくるようだ。不思議度が一番高かったとのことで、他をおさえ「鳥取」が堂々1位にランクイン。

日下田さんのフォントのトレンドなどを交えた解説のおかげで、文字の新しい見方が拓けた気がした。今まで文字を裸眼で見ていたところに眼鏡をかけさせてくれたような感じだ。

ロゴっぽさ、そして進化の過程っぽさを感じる文字たち

3番手は編集長の林さん。やっぱり5位は「練馬」とのことで4位からスタート。

4位:佐世保

林:4位は長崎の佐世保です。
北向:わー、佐世保!(頷く)

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この「保」がね、いいですよね

林:「保」の右下、カタカナの「ホ」ですよね。普通くっつけるのに気になって。ナンバープレートの文字って、漢字ができる成り立ちの途中みたいなんですよね。

言われてみると、多少簡略化されたその文字たちは、文字の進化の過程のようにも見えてくる。象形文字から段々と漢字になるような、漢字からひらがなに変わるような。その一種の幼さがかわいさの要因なのかもしれない。

3位:鳥取

3位は人気の鳥取

林:鶏肉屋っぽくていいんですよ。ロゴっぽさがある。
日下田:あ〜、Tシャツに「鳥」だけ1文字入れてもかわいいですね。

さすがTシャツを数多く作っている日下田さんの発想だ。鳥Tシャツ、ちょっとほしいな。

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とにかく鳥取に3人が熱い

2位:和歌山

林:2位は和歌山です。
日下田:へ〜!
北向:和歌山!ノーマークでしたね
林:和歌山、よくできてなくないですか?
全員:

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和歌山のよくできてなさ!?

林:「可」の「口」部分がやたら線が細くなっちゃってるのが。
日下田:確かに!フォントって、「線の太さが違うのに、均一に見える」ように調整してるんですけど、これ、明らかに口が細いですよね。

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ホントだ、気づかなかった…へん…かわいい…

北向:和の「禾」も変ですね。
林:木が三角ですよね。
北向:水かきみたいになってる…
林:かわいい。

林さんが「かわいい、人間らしい」とぽつりとつぶやく。なるほどなあ、隙のある感じが確かに人を惹きつける、ぶさかわ文字である。和歌山なあ。

1位:和泉

林:1位は和泉です。こう、泉感があるんですよね、ファウンテンみたいな。

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右下ワイプ、泉の”ファウンテン”を表現している様子

林:泉がほぼ左右対称ですね。知らない百貨店のロゴみたいな。
Uji:印鑑っぽいですね。
日下田:かわいいですね〜。

林さんは全体を通して文字のアンバランスさを愛でていた。和歌山など完全にスルーしてしまっていたので目から鱗だ、見落としていたなー。

 

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ナンバープレートは「作品」

ラストはUjiさん。ナンバープレートの一覧をおくった時点で「素敵な作品が多くて選ぶのがむずかしい」と、ナンバーを”作品”と呼んでいた。お声がけしてよかった〜と感じた瞬間である。

順位の優劣はない、とのことで好きな5つを選定いただいた。

1つめ:足立

Uji:まずは「足立」なんですが…
全員:あ〜!

我々のボルテージは常に最高潮、みんな文字を隈なく眺めようとPC画面に前のめりだ。

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足の曲線がね〜

Uji:足立は何と言っても「足」の足元のこのカーブ。かわいいなぁと。
日下田:いやぁこれ、かわいいですよね〜。
Uji:カーブの部分、シンメトリーではないけどちょっと上にあげちゃうんですよね。
日下田:ニコッとしてる感じがします。

どこかコミカルな印象を受ける足立。「立」のかなりタテ幅いっぱい取っている感じもかわいい。

3つめ:練馬

2つめは人気の鳥取とのことで割愛して、3つめはこれまた大人気の練馬

林:やっぱり練馬なんですよ。
北向:やっぱり練馬ですね。
林:「東」部分の払いを直角にしてるの、練馬だけですよね。意志を感じますよね。
Uji:土偶っぽい形もすごい好きです。

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練馬にさしかかり、堰を切ったように喋り出す我々

林:「糸」と「東」で雰囲気が違いますよね。
北向:別の人が作ったのかな。
日下田:へんとつくりで!?

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やっぱり練馬がキングだ。これは放っておけない

練馬ナンバーは都内在住だと見慣れているのに、という意外性も高評価。しかし全員が選ぶとは思わなかったな。

4つめ:広島

日下田:広島、そう…!(頭を抱える)
Uji:中の「ム」の包容力といいますか、おにぎりのように包むのがかわいいですね。

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「ム」の外に広がったカーブと、まだれの内向きのカーブ!

Uji:島の部分のテリトリーを持ってる感じが大好きです。ここもカーブがいいですね。

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元々そこまで曲線を感じる文字ではないはず

Uji:どこかレトロ感がある字です。
日下田:戦前に栄えていたからおしゃれなんですかね?
林:広島、軍港で栄えてますからね。

その辺りも地域差があるのだろうか、「横浜」の文字にも似たようなレトロおしゃれな空気を感じたのだ。歴史的な背景が文字から見えてくる…?

5つめ:福井

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Uji:最後は福です。
北向:そうそうそう、悩みました!
Uji:何と言ってもこの大きな「井」。
北向・日下田:おおきない!
Uji:もう少し小さくしても読めると思うんですけど、なんで広げたのか…。

日下田:しめすへんもかわいいですね。最後の点の位置が。
Uji:「ネ」が深く切り込んでるんですよね、かわいい。

四角い箇所がありながら、カーブが差し込まれるバランスが好き、とのこと。

「私はこの福と井のコンビが好きです。」とのUjiさんの言葉に一同がしみじみ頷いて、ナンバープレートの地名の文字を愛でる会はお開きとなった。


好きなモノの好きな部分を伝える、聞くことの楽しさよ

ここには収まりきらなかったけれど、「岡」と「宮」の多様さ、改定前の「愛媛」「大分」の異質さ、数字の不思議なバランスなど話は尽きなかった。自分のなかだけで「なんだかいいな」と思っていたものは、誰かと共有していくことで「どこがよいのか」がはっきりと見えてくるのだな、それはとても楽しいことなのだなと思った。

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リサーチしていたら、何も解決してないけど勢いが良い知恵袋を発見した
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