郷土玩具の魅力
どこかに出かけ、郷土資料館やお土産屋などを覗くと、郷土玩具が置かれている。郷土資料館ではガラスに入っているし、お土産屋ではホコリをかぶっていることもある。貴重ではあるけれど、人気はないのかもしれない。
上記は昭和37年に出版された保育社カラーブックスの「日本の郷土玩具」という本。この前書きに「今の子供たちからは見むきもされない」とある。昭和37年でその状況であることを考えると、郷土玩具はある意味、大人のおもちゃなのかもしれない。
全国に郷土玩具はある。地域により様々だ。今のように全国一斉販売みたいなことはなく、手作りだから、地域ごとの色が出ていて面白い。私はそんな郷土玩具を集めている。
郷土玩具を紹介します
どこかに出かける度に郷土玩具を買い求めている。高いものから安いものまである。お財布と相談しながらなぜか買ってしまう。買ってもそれで遊ぶことはないのだけれど、買っては飾っている。それらを紹介したい。
北海道の「セワポロロ」。北方民族ウイルタ族が作ったものを原型としている。「セワ」とは神のことで、神像として身近に置いた。首に巻かれている木を細く削いだものはイナウという形状で鳥の羽を意味している。
イナウはアイヌの祭神具であり、魔除けのシンボルである。私はかわいいという理由でセワポロロが好きだ。首のモコモコが成人式の着物みたいでいい。ちなみにアザラシの毛で作られているそうだ。
同じく北海道の「ニポポ」。ニポポとは木の小さな子とか人形という意味。もともとは樺太アイヌの信仰偶像だった。漁や狩猟に出る際にこれに願えば叶うとされ、小さいものを身につけておけば健康になるとも言われていた。
私のニポポは網走刑務所で作られたもの。受刑者が作るそうだ。大きさもいろいろあるのだけれど、聞いた話では大きいものは少なく、その理由は受刑者がそれを作る前に出所して行くから。薄めを開けて「見てるで!」みたいな表情が好きだ。
やっぱり北海道といえば「木彫り熊」。私が初めて買った郷土玩具がこれだ。アイヌと言われるとこの熊を想像する人も少なくないと思う。サケを咥える様に勢いのようなものを感じる。
戦後の観光ブームに乗って有名になった。そもそもアイヌは玩具を持たなかったそうだけれど、観光ブームに乗って郷土玩具として認知された。これ、結構高かった気がする。買ったあと、しばらく生活が苦しかったから。
福島の「赤ベコ」。頭が上下に揺れるのが特長だ。古くは台車付きであったそうだけれど、最近はそういうこともなく、色彩も簡略化されてきている。子育ての縁起物と言われ、七夕に織姫がこれに乗ってくるとも言われている。
せっかくなので一部の郷土玩具は当サイトの編集部安藤さんに意見を聞いた。私はいいと思っているけれど、周りがどう思っているか知るためだ。
コメントを聞いてから思ったのだけれど、欲しい度の星はいくつが満点なのだろう。
冷静に考えればただ首が揺れているだけ。それなのに、なんかいいのだ。一緒に首を振ってみよう、という気持ちになる。あと全然関係ないけれど、東京・経堂に「ベコ太郎」というステーキ屋があったのだけれど、潰れしまって悲しい。
海外を見てみよう
まだ日本の郷土玩具の紹介は続くけれど、一旦、世界に目を向けてみようと思う。もちろん海外にも郷土玩具は存在する。あまり数は持っていないのだけれど、海外に行って見つけると買うようにしている、値段と相談してだけど。
ロシアと言えばこれ、マトリョーシカ人形。中央部分をパカっと開けることができて、中にはまた同じ人形が入っている。それをまたパカっと開けると同じ人形が入っている。その人形をまたパカっと開けると同じ人形が。以下、ループ。
ロシアの市場みたいなところで買ったのだけれど、マトリョーシカ人形専門みたいなお店もあって、人気は高いようだ。値段もピンキリ。中に入っている人形が多ければ、多いほど値段が高くなる。これは少ない方であまり高くなかったと記憶している。
メキシコで買った何かだ。名前がわからない。日本で買うと高いぞ、と言われたのだけれど、そもそも日本であまり見かけたことがないので、高いのか否かもわからない。でも、かわいいから買った。箱の中に別の世界がある感じが好きだ。
どのくらいの歴史があるのかもわからない。ガイコツが歌い踊りその奥にはフリーダ・カーロがいる。いろんなパターンがあって、クリスマスを祝っているガイコツや、食事をしているガイコツもいた。私の好みで、いくつか買ってお土産として配った。
復活祭の名物「イースター・エッグ」。いろいろな国にイースター・エッグはあるけれど、上記はルーマニアのイースター・エッグだ。復活祭関係なく年中売られている。鶏の卵の中を抜いて、周りを独特の模様で彩色している。
手作りのため、それぞれ模様が違い、どれにしようかと悩む。あと、一番の悩みは卵なので持って帰る恐怖。割れやすいのだ。願うしかない。割れないでね、と。値段は都市部だと高くて、地方に行くと安く買うことができる。
日本に戻ります
今後も海外の郷土玩具を収集していきたいと思う。やはり日本のものとは異なる。例外もあるけれど、カラフルなものが多い気がする。日本の赤ベコはカラフルだけど。そういう日本を含め、世界は広いな、と思えるのが郷土玩具の楽しいところだ。
山形は米沢の郷土玩具「お鷹ぽっぽ」。米沢は笹野一刀彫で知られる城下町だった。その笹野一刀彫の一つが「お鷹ぽっぽ」である。サワグルミやアブラコなどを材に掘られている。羽や尻尾の感じがカッコいい。ものすごく木を感じることができる。
この削り方はアイヌの削りかけの技法と遺風が伝わったものだろう。
私もそう思った。「ぽっぽ」というのがかわいい。この雰囲気から「ぽっぽ」というギャップがいいのだ。米沢藩藩主「上杉鷹山」にちなみ、その徳を慕いあやかるようにとのことらしい。ちなみに「ぽっぽ」はアイヌ語で「玩具」という意味だ。
新潟県は水原町の「三角だるま」。円錐型をしており、底に土のお守りがついており、起き上がり小法師のようになっている。赤と青で大きいのと小さいのが一対のようになっている。表情がひょうきんで好きだ。
だるまなので、どっちも男な気がするけれど、どうなのだろう。
古い本を見ると三角だるまは「文字の関」でも作られているとあった。「文字の関」は北九州市門司区のこと。私は北九州出身なのだけれど、門司の三角だるまを知らない。ただ水原町の三角だるまの方が表情豊かだそうだ。
福島の会津若松の「起姫」。3センチくらいの小さな起き上がり小法師だ。青と赤があるけれど、両方「姫」だ。起き上がり小法師の傑作にあげられる一品。旧正月に家族の数よりも1つ多く買って神棚に置いておく。
ちなみに上記の起姫はビニールが付いている。本来は取るのだけれど、新車で車を買ってシートのビニールを取らない人がいる。それと同じ。私はなんか、特に理由はないのだけれど、取らないタイプ。私は車を持ってないけれど、もし買ったら意地でもシートのビニールを取らないと思う。
家になぜかあったひょうたん。いつ買ったのかなど、まったく覚えていない。中には砂利が入っていた。あと値札が付いていて「100円」とある。どこで、何を思って買ったのだろう。郷土玩具なのかも怪しい。ただ一人で狂ったように酔拳の真似をして遊んだので、最後の載せてみました。
いつかは西日本編を
今回紹介したのは東日本の郷土玩具が中心だ。いつか西日本の郷土玩具を記事にしたいとも思う。もっとも東日本だって、もっともっと郷土玩具はある。キリがないほどある。ただ無くなっていく郷土玩具もあるので急ぐ必要はある。一番急がなくてはいけないのは、私が郷土玩具を置けるような広い部屋に引っ越すことだけど、無理だろうな、家賃高いから、広い家は。
参考文献
郷土玩具の旅—東日本編—(保育社)
日本の郷土玩具(保育社)
日本郷土玩具事典(岩崎美術社)