西武・秩父・疲れ飛ぶ
同日のうちにもう1件取材を済まそうと、浅草から池袋経由で飯能にやってきた。とサラッと書いたが1時間半かかっている。かかったのだよ。
得た情報では、ここから西武秩父へと向かう列車が「栓抜き列車」だというのだ。これはいくつかの記述を見つけており、確かそうな情報ではある(ただし土曜と休日は池袋から直接出ている栓抜き列車もあるらしい)。
なんだか懐かしい列車が入ってきた。私事だが学生の頃に西武線沿線に住んでいたことがあり、この3本ラインのライオンズカラーの列車にはたまにお目にかかっていた。よく乗ってたのは黄色いやつだけど。
空いている場所を探し、先頭車両へ。
そうそう「こじる」って書いてあるのだ。「こじる」って、こじ開けるの「こじる」だが、単独ではもうめったに使わない動詞だ。今goo辞書で調べたら「抉じる:物のすきまや穴などの中に棒状の物などを入れ、強くねじる。えぐるようにねじる。(提供元:大辞林第二版)」と出た。立派な出自なのに、なんだか幼児語みたいな響き、こじる。
と、辞書引っ張り出して考証入れようとしたりして、冷静さを保とうとしているが、このときの気持ちを言葉で表すならば、「ピーーーーーーーーー(音波)」となって人間の耳には聞き取れないだろう。
やっと飲める!(ぬるいけど)
では早速、早速、開けてみたいと思います。ピーーーー!
右手にカメラ、左手にビンを持っているせいで不安定だし、カメラ越しの視点では作業しづらいし、だいいち栓抜き自体そんなに開けやすくないしで、実は2度目のトライだった。すでに空気穴が少し開いてたので、ため息交じりみたいな開栓である。が、そんなことは実はどうでもいい。
この取材に備えてビンビールを買ってあったのだが、普通の日本のビンビールをひとりで開けると車窓が飲み屋のカウンターみたいになりそうで、ここはベルギービールとしゃれてみた。外国のビールなら、「世界の車窓から」のように見ていただけるのではないか。
それに、日本のビールはほとんどが缶でも売られているが、外国のビールはほとんどがビン。ならば栓抜きがある列車イコール、車内で外国のビールが飲める、ということではないか!古い栓抜き列車がパブ列車に変わった瞬間だ。
車窓には秩父の自然。空いた車内。ひとつ置いたボックス席には観光とは無関係な、DSをやり続ける地元中学生がひとり。ああ旅情。
そこに「栓抜き探し」という旅の目標が加わる。目標を達成する喜び、これも旅の一形態ではないか。酔って書いたメモにはこんな壮大なことが書いてあって、今読んでびっくりだ。
最後は、あの路線のあの列車。ちょっと意外かもしれない。