味について
肝心の味についてですが、フカヒレそのものはほとんど無味無臭なので、基本的には煮込んだスープの味そのままです。
ただ、その独特の繊維っぽい食感はやはり独特のもので、たっぷりとスープが染みたフカヒレのプチプチした弾力ある噛みごたえは楽しいですよ。
手間の割には一瞬で食べ終わる量しかできませんが、サメが釣れたらまた作ろうと思います。作る工程が面倒くさくも楽しいので。
作ってインスタントラーメンとかに入れます。
二人で同じ答えを出せば正解というテレビのクイズで、「中華料理の王様といえば何?」という問いに、林家ペー&パー子夫妻は「チャーシューメン!」「ラーメン!」と答えていた。
残念、不正解。
今日は私にとっての中華料理の王様である、フカヒレの姿煮の作り方を紹介したいと思います。
※2009年3月に掲載された記事の画像を大きくして再掲載しました。
フカヒレの姿煮をつくるにあたって、まずは当たり前ですがフカヒレを入手するところからはじまります。
とはいってもフカヒレは日本の一般家庭で扱うような食材ではないので、売っている場所が限られる訳ですが、わざわざ中華街にいったりしなくても大丈夫。
海釣りを毎月のようにやっていれば、狙っていなくても年に数匹はサメが釣れるもんです。
たとえ自分で釣れなくても、同じ船で釣れた人に「ください」とお願いすれば、サメを持ち帰ろうという奇特な人は少ないので大抵くれます。変な目で見られますが。実際に私も見知らぬおっちゃんからもらったことがあります。
自分でわざわざ釣りに行かなくても、釣り好きな人にバームクーヘンでも渡してお願いしておけば、そのうち届けてくれるかもしれません。
※サメだけに危険な種類もいるので、無理はやめましょう。
釣れたサメは新鮮なうちにヒレを落とします。難しいことは考えずに、出刃包丁でざくざくと切っていけばばっちり。
さてこのように正しいことを書いている風に話は進んでいきますが、実際にフカヒレをつくるのはまだ二回目なので、あまり信用してはいけません。
しかしそうはいっても二回目なのです。基本的に一回しかつくらないようなアドベンチャー料理が多い人生の中での二回目なのです。正しいこと風に書かせてください。
今回料理するホシザメは身もうまいサメなので、もちろんヒレ以外の部分も捨てたりしません。どうしてもアンモニア臭いイメージがあるサメですが、新鮮なうちに下処理をしたホシザメに臭みは皆無。
湯引き、から揚げ、ソテー、煮物など、どんな料理にも合うサメ肉ですが、私の一番のお薦めは干物。ホシザメだけに干すとうまい。干しザメ。
このシャレは貸しボート屋のおっちゃんに教わりました。
フカヒレには大きく分けて二種類あります。皮がついているものと、剥かれているもの。
調理する段階では結局どちらも皮は剥かれるのですが、干す前に剥くか、干してから剥くかで、作る工程とその後の料理法が変わってきます。
今回は調理時の手間が少ないように、干す前に剥く方法を紹介します。干してから剥く方法を私が知らないからという理由もあります。
まず鍋に水を張り、火にかけて60度くらいまで温めたら、そこにフカヒレを入れて1分程湯通しをします。この温度でフカヒレを温めることで、「鮫肌」だった硬い表皮がつるりと剥けるようになります。
湯通ししたフカヒレの表皮は指でこすれば皮が剥がれる状態になっているので、使い捨ての歯ブラシなどできれいに皮をこすり落とします。
この作業がフカヒレ料理で一番おもしろい部分なので、ぜひぜひ堪能してください。でっかいスクラッチくじみたいです。
皮をむいたフカヒレは、安物のカツラみたいな質感です。
下処理をしたフカヒレは、晴れている日は魚干し用ネットに入れてベランダで、天気の悪い日は冷蔵庫に入れて、延々と干します。
どのくらい干せばいいのか正直よくわからないのですが、私は今回半年ほど干しました。桃栗三年鮫半年。
半年間も干していたというと手がかかっているような気がしますが、料理して食べるのが面倒くさかったので、冷蔵庫に入れっぱなしにしておいただけともいいます。
カラッカラに干しあがったフカヒレがこちら。頭の中にあるフカヒレ像とはだいぶ違う気もするけれど、細かいことは気にしないでいただけると幸いです。
はい、ここまでがフカヒレを干す話で、ここから先がフカヒレを料理する話。
フカヒレは干しシイタケなどと同じく干物なので戻さないと料理には使えません。この戻す作業が前回やったときにとても面倒くさかったので、干しあがってからも、しばらくほったらかしにしていたのです。
しかしこの週末は釣りが中止になって暇なので、気合いを入れなおしてやってやります。
まずはボールに水を張り、そこにカラッカラのフカヒレを入れて一晩待ちます。
続けて保温できる鍋に水、紹興酒、香味野菜、そしてフカヒレをいれて、沸騰したところで一晩保温。 保温鍋がなければ弱火で数時間煮てみてください。
これもあくまで調理前の下準備なので、味付けはまだしません。
茹でたフカヒレを取り出して、今度は真水でさらに一晩さらします。
ほらやっぱり面倒くさい。
本当はここからさらに蒸したりなんだりするらしいですが、ヒレも小さいので、これでよしとします。
三日掛けて柔らかくしたヒレには軟骨部分が結構ついていたので、ミミガーみたいなコリコリした部分をキッチンバサミでチョキチョキとカット。
ここまでやって下処理がようやく完了。フカヒレの姿煮が高級料理なのは、かかる手間の問題なんでしょうね。
さあ、あとはフカヒレに味をしみ込ませるだけ。鶏ガラスープを醤油やオイスターソースで好きなように味付けをして、フカヒレを30分ほど煮込んでいきます。
鍋の中、スープに対してものすごいフカヒレの割合が少なくて悲しいです。
ここまでに要した時間に対して、食べるのにかかるであろう時間も少なくて悲しいです。
地球年表における人類の繁栄の期間みたいです。
さてフカヒレの姿煮にはチンゲン菜が添えられているイメージがあるので、煮ている間に用意します。
とはいっても普通のチンゲン菜を隣に置いてしまうと、ただでさえ小さいフカヒレのサイズががさらに小さく見えてしまうので、芯部分の小さい葉っぱを茹でました。
フカヒレに味が染みたところでチンゲン菜を添えれば、フカヒレの姿煮が完成です!
このように、フカヒレの姿煮はサメさえ手に入れば誰でも作れる料理ですが、相当に大きいサメじゃないと、食べごたえはないかもしれません。
肝心の味についてですが、フカヒレそのものはほとんど無味無臭なので、基本的には煮込んだスープの味そのままです。
ただ、その独特の繊維っぽい食感はやはり独特のもので、たっぷりとスープが染みたフカヒレのプチプチした弾力ある噛みごたえは楽しいですよ。
手間の割には一瞬で食べ終わる量しかできませんが、サメが釣れたらまた作ろうと思います。作る工程が面倒くさくも楽しいので。
作ってインスタントラーメンとかに入れます。
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