林炒め
昼などにひとりで適当に野菜を炒めて食べている。それらの写真だ。
インスタグラムに投稿するために正方形で撮っているため、でかい写真でお見せすることになった。
しかし弁明しておきたい。どれも美味しいのだ。美味しいと自分に言い聞かせているわけではなく、本気で美味しいと思えてしまう。ただ、たまに妻に振る舞うと浮かない顔をしている。
今回の趣旨
野菜炒めを作っているようすをあらかじめ動画に撮っておき、それをパリッコさんに見てもらってアドバイスをもらう。
パリッコさんは酒場ライターとして脚光を浴びているが、料理の腕も確かだし、優しい(ここ大事)。
林:
僕が適当に野菜炒めを作るとベチャベチャになるんですよね。炒めた感じがしなくて。
野菜炒めって水分がなくなったら終わりと思ってるんですが、いつ火をとめていいかわかんないんです。
パリッコ:
難しいですよね。野菜炒めって。作ることも多くないしうまく作れる自信があんまりないですけど。
林:
違うとかおかしいところがあったら遠慮なく言ってください
パリッコ:
自分もあんまり本とかで勉強するタイプじゃないんで、ビシッとダメ出しじゃなくて、自分だったらこうするという感じで
林:
はい、正しいこと言われたら嫌になっちゃうので、それで。
林:
野菜炒めを作ろうと思いまして。まず白菜
パリッコ:
白菜?白菜って野菜炒めに入ってますっけ?
林:
好きだから買ってきたんですけど…あと量が分かんないんですよね
パリッコ:
白菜ってそもそも水分出そうな感じします。難易度、高い野菜だと思います。炒めるのに
林:
そうなんですか?
炒めた後の量の想像ができなくて。すごく少ないとか、思ったより全然減らなくてひとつの皿に収まらないとかあります
パリッコ
ありますね。減るのはねあるあるですけど。あれもこれもって入れていくとフライパンが振れなくなっちゃう。溢れそうになって。
パリッコ:
すでにこれ2ブロックに分かれていますもんね
林:
(2ブロック?)
パリッコ:
白い芯の部分と葉っぱの部分を一緒に入れると、葉っぱが火が通り過ぎちゃうと思うんですよね。そういう意味でも白菜って結構むずかしい
林:
へー
パリッコ:
あ、ボールに全部入れちゃった(笑)
別にしておかないで
林:
えっ?別にする、そうか
パリッコ:
葉っぱなんて最後にのせるぐらいでいいかな
パリッコ:
え、ゴーヤですか(笑)白菜とゴーヤ
林:
好きなんですよ。
パリッコ:
野菜ごとに特性ありますもんね。ゴーヤって縮まなそうだもんなあ
林:
そう、なんですよ…(知らない)
林:
いま、家のゴミ箱の上で直接捨てられるように。なかを取り出してます
パリッコ:
それは知恵じゃないですか
林:
われながら不安な手つきですね
パリッコ:
猫の手っていう感じではないですもんね。
林:
けっこう猫の手っぽいかなと思ったけど、これは違うんですね。
パリッコ:
親指がいつ切れてもおかしくない。
偉そうに言えるほどのものじゃないんですけど、角度としてはこうやって(手を包丁に正対させる)切っていくっていう
林:
ああ、そうなんですね。なるほど。猫の手の向きが違うんだ。
パリッコ:
これだと、かわいさを出してるだけですね
パリッコ
もうこの時点でゴーヤがいちばん火が通りづらそうですね。難易度が高そうです。
林:
何で作ればよかったんですかね。野菜炒めって
パリッコ:
好きで良いと思うんですけど。中華屋とかだとニンジン・モヤシ・キャベツとかなんかそういうのが入ってます。
パリッコ:
ニンジン先に炒めて、ちょっとたったらモヤシ・キャベツみたいな感じで入れていけば、難しくはなさそうな気がします
林:
あ、いまボウルに塩を入れました。多いですか?(切ったゴーヤを浸す水に塩を入れた)
パリッコ:
いいんじゃないですか(笑)
林:
こういうのってほら、書いてないじゃないですか。どれくらいの塩入れるかっていうの
パリッコ:
それよりもスプーンでさってやっただけで全然塩が溶けてないほうが問題だと思います
林:
しいたけを入れようとしています
パリッコ:
しいたけいっすね
林:
いいですよね
パリッコ:
どんどん追いやられていく感じの調理スタイル。うちもでも全然キッチンとか広くないので後ろに電子レンジがあるからフタ開けて一時的においてたりとか
林:
うちも背中の位置に電子レンジがあるんで真似します。
パリッコ
しいたけ、これ全部入るんですか?
林:
はい
パリッコ:
しいたけメインみたいになりますね。
林:
うん……よくわかってないんですけど
パリッコ:
ゴーヤは半分にしてたから、ちょっと意外で。しいたけも残すのかと思ったら豪快に全部。
しいたけ切るのって、料理にしているなかでも気持ち良い瞬間じゃないですか。
林:
気持ち良いですね。サティスファイングビデオみたいですよね
パリッコ:
あの粘土切ったりするような。
パリッコ:
軸は捨てちゃうんですか
林:
捨てちゃったんですけど、食べられました?
パリッコ:
あれも炒めれば食べられるんです。指でぐっと潰すと繊維状になってほぐれるので
林:
そうなんですね
パリッコ:
おう豪華だ。肉ですね
林
完全に肉を置く場所がなくなってます
パリッコ:
これね、多分ちゃんとした料理人の人がやるんだったら。フライパンを2個使ったりするんでしょうね。肉をまずこっちで炒めてとか、
パリッコ:
最初珍しいって言っちゃいましたけど、この組み合わせはおいしそうですよね
林:
おれが好きなもの炒め
炒めます
パリッコ:
きれいなフライパン
林:
油を入れる量もわかってないんですよね
パリッコ:
けっこう少ないんじゃないですか?
林:
ちょっと少ないですか
パリッコ:
けっこう使った方がいいと思いますけど。中華屋さんでなす味噌炒めみたいなのを作っているのを見たら、こんなでっかい中華鍋に油が5センチぐらいたまってました。ぶっ込んでじゃあじゃあ揚げながら焼くみたいな感じで。
林:
そうなんですか!最初に肉から炒めはじめたんですけど、それはあってます?
パリッコ
僕もやるとしたらそうしますね。肉が生焼けだと嫌ですよね。
こういうのってちょっと酒と醤油で揉み込んだり、下味を付けると美味しくなると聞きますね
林:
へー豚肉に! ところで「酒をもみこむ」って何ですか
パリッコ:
適当にかけてさーっとそれで手でちょっともんどくみたいな
林:
それでいいんですね、
パリッコ:
最後の野菜炒めの味付けとは別に。
パリッコ:
肉で文字を書いてるみたい。
まだ肉をいれるんですね。良かった、なんか少ないなと思った。
パリッコ:
なぜか途中でちょっと炒めた
林:
これ、人の料理も見たいな。こういうあまり人に見せないところを
パリッコ:
シリーズ化できそうですね
みんなで酒飲みながらそうですね。
豚肉のこういうこまぎれはうまいですよね。いちばん好きですね
林:
そうですよね。次はしいたけなんですが、順番的にはどうですか?
パリッコ:
順番やっぱり肉にさっと火が通ったらゴーヤ入れた方が良いよような気がします
林:
ゴーヤだったんだ。根菜とかを入れたほうがいいんですね
(注:ゴーヤは根菜ではない)
パリッコ:
ひと素材ずっと入れてわーっとこう全体を混ぜるじゃないですか。そしたらしばらく動かさないのが良いらしいですね。
林:
そうなんですか?
パリッコ:
僕も我慢できなくて動かしちゃう方なんですけど。
底に当たっている部分が焼き目っぽくなって、香ばしくなって、それがなんか「炒め」っていう感じに
林:
いま白菜を全部入れてます。ちょっともう混ぜられないぐらいの量になっちゃってます
パリッコ:
これもう、見た目鍋ですね
林:
そうなんです!いつも鍋になっちゃうんですよ
パリッコ:
これは……(笑)
これはもう。なんだろう。たぶん全体がしなっとするまでやるしかないんですよね。思いきってたぶん1回ボウルに戻したほうが
林:
白菜を?
パリッコ:
油を足したい。全面に行き渡るぐらいの
林:
火の強さこれぐらいでいいですか?
パリッコ:
ちょっと弱めな気がします(笑)
野菜炒めって最初にジャーっと熱しておいて手早く野菜を入れるのが定石っぽいですね
林:
そういうのテレビで見ます。僕のは全然違いますもんね
パリッコ:
それで料理人の人とかはどんどん野菜を入れてって、僕なんかもうちょっと炒めたいとか思うんだけど、その手前で引き上げちゃう勇気が必要みたいな。
皿に盛ったら余熱で完成するみたいなそういう手早い世界だと思うんですけど。
パリッコ:
これは、まったり料理というジャンルかと。
林:
これいま肉が下の方にあると固くなっちゃうんじゃないかって心配しはじめて、ほじくり出したところですね。
パリッコ:
偉そうに言ってますけど、僕もほとんどあるあるですよね
林:
肉を上に避難させたら、なんかちょっと豚しゃぶサラダみたいになっちゃったんですよね
パリッコ:
美味しそう
林:
ここでやめて良かったのかな?
パリッコ:
温野菜サラダみたいな
林:
またゴーヤ入れてないですよね、おれね
パリッコ:
ちょっと怖いですね。まさかここからゴーヤが加わったら、プラスで相当時間かかることになりますもんね
林:
なんか下のほうぐつぐつ言っちゃってるんですよ
パリッコ:
やっぱ白菜の水分がでてきたんじゃないですか。白菜がそもそも難易度が高いっていうのも理由としてある気がしますね。この水に。
林:
白菜って鍋ですもんね
パリッコ:
そうですね。
林:
ゴーヤ投入しました
パリッコ:
これはこれはちょっと結構衝撃かもしれない
林:
そうですか?
パリッコ:
ちょっと長期戦じゃないですか、だってゴーヤがまた温まるまで
林:
今どうしようもなくなって、上のゴーヤをつまんで食べてますね
パリッコ:
ふふふ
林:
ゴーヤが火が通るまで豚肉がカチカチなっちゃうと思って避難させますね
パリッコ:
肉だけ炒めていちど避難させといて、野菜を炒めて最後合流という形が良かったのかもしれないですね
林:
こうやって今さら肉だけ取るの大変ですもんね
パリッコ:
そうですね。食ってる映像みたいに見えますもんね。肉が大好きで、先に。
料理としては絶対おいしそう
林:
なんか思ってたのと違うのがいつもできるんですけど
パリッコ:
やっぱり野菜炒めだったら基本的には、多めの油で強い火力で、火の通りにくいものから順番にジャーと炒めていくのがのが正式っぽい作り方だと思うんで
林:
この食材だとパリッコさんだったら、まずはゴーヤですか。それから白菜?
パリッコ:
ゴーヤの次はしいたけですね。
でもぱっといっちゃうかもしれないです。ゴーヤ1分くらい炒めてしいたけ1分くらい炒めて。やっぱり肉はあらかじめ炒めておいて取り分けておくか、ゴーヤがいたまった後ぐらいに。
白菜は本当に最後の方で芯の部分を。また1分くらい炒めて。生でも食えるぐらいの野菜なんで
林:
完全にいま鍋になってますね
パリッコ:
すごいですね。無水鍋っていうやつですよね。野菜のから出た水だけで
林:
味どうしていいかわからなくなってオイスターソースをだしました。あ、肉もどした。
パリッコ:
いいですね。
林:
オイスターソースとかもどれくらい入れるものかよく分かんなくないですか?
パリッコ:
これはもうあれですもんね。オイスターソース炒めっていう料理になるんじゃないですか?
林:
そうか、野菜炒めじゃなくて。
これ、自分が作っているものだからうまそうだなと思いますけど、人が作ってこれびちょびちょ出てきたら嫌ですね
パリッコ
ここまできたらちょっと最後に。火を止めて水溶き片栗粉とか加えてとろみつけちゃうみたいな。
林:
そういう発想はまったくないです!(感動)
パリッコ:
火を強めたんですか?
林:
いやわかんないからあわてて消しました。
パリッコ
これも美味いっすよね、うん。
林
豚がちょっと火が通り過ぎてる。
パリッコ
うまそう。なんか一品料理を見ている感じですね。
作りたかったものとビジョンとは違うと思うんですが
林
もっとカラっとしたものを作るつもりがいつもの鍋ができた。
振り返って
(ここ、世の中の大半の人は知ってることしか書いてません)
林:
素材が難しかったということでしょうか。
パリッコ:
結果的にできたものが美味しそうだったので、何の問題もないと思うんですけど。
いわゆる一般的に想像される野菜炒めを作るには、白菜で水分が多いので、キャベツだったらまた違ったのかな。
やっぱり弱めの火でじっくり火を通すと水分が出てきて柔らかくなっちゃうんじゃないですかね。強めで短時間で火を通すとカラッと仕上がる。
パリッコ:
順番とかもなんか。雰囲気でいいと思うんですよ。ニンジンは堅そうだから、最初に入れるかとか。白菜の葉っぱの部分はもう最後の最後に入れてさっと混ぜて火を止めるぐらいで。
林:
野菜って基本。生で食べられるものなんですかね?(人として基本的な質問)
パリッコ:
生で食べるの好きですね。僕は。今回で言うと、きのこと肉にしっかり火が通れば、あとは問題ないんじゃないですね
林:
なるほど、そういう順番で考えて作ればいいんですね
パリッコ:
フライパンが小さかったか、具材が多かったですかね。あの具材が半分だとわーっと入れたときに、全面に広がると思うんですよね。
それでほっとけば下の部分がパリッと焼きあがって香ばしい、みたいになる
林:
野菜の量が多いとこうなっちゃうってことですね。
パリッコ:
そうですね。なんかほじくっていないと火が通らないという
本式の鉄鍋じゃないですけど、結構でか目で深さもあって、ちょっと底は丸くなってるようなフライパンが家にあって、炒め物とかそういうのでやってますね。
ジャーっと入れて混ぜちゃってしばらく動かさないで火を通していくみたいな。
林:
それ買います。
どこで間違っていたのか
パリッコさんに見てもらった結果、以下の点が違うのではないかとのことだった。
・食材選び
・切り方
・油の量
・火力
・入れる順番
つまり、全部である。
全員犯人でした~というミステリーの結末のようだ。それでも美味しくなってしまうオイスターソースと自分で作ったものをうまいと感じるバイアスに感謝である。
うまい人が料理しているところはテレビやネットにあふれているので、もたもたしている人の料理動画がこれからは注目されるだろう。
まったり料理の時代である。