特集 2019年9月6日

「クタクタ orz」おもちゃは作れるか

絶望のその先の淵へー。

「orz」の文字で「ガクッと膝を付き絶望するさま」を表す。ネットでおなじみの表現である。

その文字でクタクタおもちゃを作りたいと思ってしまったのです。

1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

前の記事:ことでん(高松琴平電気鉄道)の琴を作った

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「orz」その1:まずコンセプトの変更を迫られる

まずはこのおもちゃの元ネタである「クタクタ動物」を紹介しよう。小さい頃に遊んだ方も多いと思う。

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何か作れないかとネットで買っておいた。海外のちゃんとした木製のおもちゃである。
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クタクタだワン…シャキーンワン!

過去には、べつやくさんがこうした構造に目をつけ、ユリ・ゲラーになりまくっている(この記事:「どこでもユリ・ゲラー」)。いいなぁ、と思いつつ、胸の片隅にずっとクタクタをしまいこんでいた。

それを、最近3Dプリンタを買ったこともあり、思い出したのだ。今なら部品をプリンタで出力して、思い通りの形のものができるのではないか、と!

そこで、「orz」である。文字がこう、手と膝をついて絶望しているように見えるわけだが。

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ヨガでいう「orzのポーズ」である(嘘)。

ガクッとうなだれるこの感じ、クタクタおもちゃに合うのではないだろうか?

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説明せずとも意図を読み取っていただきたい適当なラフ。

押せばぴょこんとorzの文字が立ち上がり、絶望の淵から生還する。そんな希望に満ちたおもちゃを作れないものだろうか。

結論から言うと、より深い絶望へ続いていたのでした。はっはっは。

ともあれ、制作の様子をまずはご覧いただこう。

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もったいないけど内部構造を把握するために分解しますよー、チョキン。

 

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ふむ、こうなってる、と。

ケースの下部にバネがついていて、そこから伸びる紐が人形の各部につながり、ケース上部にしまいこまれている。その下部を押すと紐がゆるまり、人形もクタッとなるのだ。把握した。

「orz」その2:3Dでも手間省けず

把握はしたがどう「orz」をあてはめればいいかまったくわからない。わからないままに、3Dモデリングを開始してみた。「orz」の中に紐を通す穴を開けたいので、文字をパイプ状にする、というミッションは絶対こなさねばならぬ。

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ベジェ曲線などでまず文字を作る。
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ベベルとかフィルとかの機能で文字をパイプ状にし、厚みをつける。

Blenderというフリーソフトでなんとか作ってみた。文字はデータでは中空になっている、これでいいはず。

これを3Dプリンタで出力すれば、中空のままできあがってくるはずだ。本当に、夢のようなマシーンである。

ソフトからデータをプリンタに読み込ますため、スライサーというソフトでデータを変換する。

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orzがこうして立体になっただけで眼福である。
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サポート(支え)をつけて保存。ファイル名も「orz」である。

 高さ3.5cmほどの小さいものなので、3時間半くらいでできあがってきた。中空は、どうなっているかな。

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ででんでんででん♩ででんでんででん♩(このシーンはこの先しばらくはターミネーターのBGMでお送りするだろう)
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中空になってるっぽい!そして「o」は中空の出口がないのでレジンが中に溜まってて地味にイヤだ!

おそるおそる台から外し、サポートを切り取ってアルコールで洗うなど手順を踏まえた後、中空がどうなってるか確認する。

あらかた穴は開いているようだが、中に詰まったレジンとアルコールを拭き取るのが面倒だ。ティッシュを細くして、こより状にして穴に突っ込む。いったいこれが夢に見た3Dプリンタ生活だろうか。

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こよりを詰めてくしゃみが出そうな「r」。「o」は穴を開けて吸い出した。

しかも3Dモデリングソフトの初心者でもあるため、文字の分岐点で明らかに穴が貫通していないのであった。 

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ドリルで仕上げ。いつもと代わり映えしない作業が待っていました。

やっと「orz」が用意できた。これで完成です! 

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「orz」その3:構造把握が甘すぎた

全然完成じゃない。これからが大変なヤマ場である。こいつらを、シャキッとさせたりクタッとさせたりせねばならぬ。

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テグスで、いろいろに試してみる。うーむ…
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マグネットまで持ち出す。主旨が変わってきた。
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どうしても「シャキッと」にならない…

本来なら、「orz」をシャキッと、先のラフ絵の左側のようなイメージで立たせたかったが、

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理想

どうも私の頭と技術とこの日数では無理なようだ…(なのでラフに大きくバツ印をした)。

予定を変更して、「orzさんがより深い絶望を味わうが、またそこから一歩踏みとどまる力を得る」というおもちゃを作りたいと思います!いろんな意味で前向き!

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そうと決まったらテグスをじゃんじゃん接着だ。以前誕生日にいただいたUV接着剤が、微細な接着に便利すぎる。
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ケース下部に一通りテグスをめぐらせた。あとはケース上部をかぶせ、文字の組み込みである。
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テグスを仮止めして何度かクタクタさせてみるが、「r」が屹立しっぱなしだったり、文字の向きがバラバラになったり、クタクタ道はなかなか険しいのだった。
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ようやく方向性も決まり、本番です。ケースも塗った。地層をイメージしている。
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ちなみに裏側はテープで止めて作業している。こうしないとバネでケース下部が飛んでってしまう。

 

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ああでもないこうでもない。こんなにorzと向き合うことってあるか。

3日ほど「orz」ばかり見ていた。今後日常では絶対orz表現は使わないであろう。

過去の記事で何度も、作業真っ只中の描写で「私は今なぜこんなことをしているんだろう」と書いてきたが、その文章の集大成としてここにまた記したい。私、なんで毎晩「orz」を立たせようとしているんだろうか。

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やっと形が決まる。そしてこの瞬間が一番楽しい。文字通り草を生やしているこの時が。

とうとうここに、「クタクタorz」が完成しました!
いったいなんだこれは。

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地面に膝をついているイメージで地層にしたが、余分な情報だったか。

動かしてみましょう。 

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「絶望…からのより深き落胆…からの踏みとどまり!」(以下繰り返し)

驚きました。3日ほど徹夜して、これを作っていたのですから。

本来の目的である「絶望から希望へ」は叶わなかった。が、一条の光を見出したorz氏なのであった。

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実写にするとこうです(※犬はついてきません)。

 


まとめ

少なくとも、クタクタおもちゃの原理はわかってきたので、次はこの方式で「LoL」を笑い転げさせてみよう。

【告知】

1)9月19日(木)、とんでもないタイトルのトークイベントにゲストで出演いたします。
「たいがー・りーの潔癖症を治さNight!」
たいがー氏の潔癖症を皆で治さんとするイベントです。
【出演】たいがー・りー、片桐仁、乙幡啓子(妄想工作家)、カルロス矢吹(作家)
OPEN 18:30 / START 19:30
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/126538

 

2)9月25日〜10月5日、松戸市にある「せんぱく工舎」というナイスな場所にて展示をいたします。C号室「星子スコーン」さんのカフェにて13時から17時まで。乙幡は25日と28日に在廊いたします。
詳細はこちら:https://www.hoshikoscone.com

 

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