特集 2024年12月12日

「くしはらヘボまつり」でヘボ(クロスズメバチ)を食べ、ヘボに刺され、そしてヘボを抜く

ついに巣箱の蓋が開く!

会場がざわつき始めた。どうやら巣箱を開ける準備が整ったようだ。くしはらヘボまつり一番の見せ場がついに始まるのだ!

開いた巣箱からは、当然怒り狂ったヘボたちがあふれ出てくるため、開封作業は閉め切ったビニールハウスの中で行われる。

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巣箱が開くところを見物したい人たちが一斉にビニールハウスの方へ。

ビニールハウス越しに作業を見学させてもらう。

まず巣箱を載せた軽トラごとハウスに乗り入れ、そのまま荷台の上で煙を使って巣箱を燻してヘボを弱らせる。中の巣を取り出したら、空の巣箱を積んだ軽トラがハウスの反対側から出てくる。これが作業の流れである。

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ビニールハウスの中に巣箱を積んだ軽トラが入る。
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当たり前だが、ハウスの中で作業する人たちは全員が蜂用防護服を着用していた。
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「煙幕」と呼ばれる、大量の煙が出る花火みたいなものを使って巣の中のヘボを弱らせる。
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巣箱の天井板を取り外すと、張り付いた巣が!
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うわ、大きい!
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ノコギリで巣を板から切り離して
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そのままゴミ袋に入れて密封。煙幕で弱っているとはいえ、まだまだ巣の中には生きているヘボがわんさかと詰まっているのだ。
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巣箱が開封されたハウスの軽トラは反対側から外へ。

列をなした軽トラが入っては出て、入っては出てを繰り返す様子は、まるで工場のベルトコンベアーを見ているようだ。巣箱を開ける人たちの迷いのない手さばきも、一つの仕事に精通した人たちの動作に表れる美しさが滲むようだ。すべてが、淡々と効率的に進んでいった。

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それはそれとしてヘボの数がすごい。
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出てきちゃった!とばかりに、ビニールのこちら側を這いまわるヘボ。

軽トラが出入りするときにハウスの壁が開くため、どうしたってヘボは外に出てくる。そもそもビニールハウスの密閉にしたって完璧ではない。ヘボサイズの昆虫からすれば穴だらけも同然だろう。

巣箱の開封が始まるやいなや、会場は家を追い出された大量のみなしごハッチが飛び回る蜂の迷子センターと化したのだった。

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手にとまっても大丈夫。ヘボはおとなしいから。おとなしいよね?ね?
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いたるところヘボまみれ。目の横にも。

幸いヘボは、スズメバチの名を冠する割には気性のおとなしい蜂である。体にくっついてきたとしても、無理に追い払ったりちょっかいを出したりしない限りは刺されることはあまりないのだ。

顔面を這い回られたときはさすがに怖かったけれど、ほっておくとそのままどこかに行ってしまった。よかった、ヘボを信じて。

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ハウスの角にたまったヘボを掃除機で吸う。
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掃除機には「ヘボ吸い取り意外禁止」の文言が。

空中のヘボの数が増していくことにハウスの外がざわついている間にも巣の取り出しは着々と進む。取り出された巣は計量へと回されていく。

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計量。ランキングと値付けに関わる大切な作業だ。
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計量された巣は、重さごとに1キロ台、2キロ台......と書かれた机に置かれていく。
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ヘボはかっこいい昆虫

ヘボことクロスズメバチはほぼ日本中に生息している昆虫だが、じっくりと観察する機会はなかなかない。この機会によくよくその姿を目に焼き付けて帰ろう。

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胴体と触覚が長いのがオス。
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短いのが働き蜂。働き蜂はすべてメスなので、これはメスの蜂。

ハチはアリと同じ真社会性と呼ばれる生存戦略をとった昆虫だ。その社会は生殖や産卵を一手に引き受けるごく少数の女王蜂とオスの蜂、そしてその他大勢の自分では繁殖しない働き蜂で構成される。

サラリーマンのことを働き蜂とか働き蟻と言って揶揄することがあるけれど、本物の働き蜂には余暇もなければ職業選択の権利もなければ自分の家庭をもつチャンスもない。だからあの例えは間違いである。

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スズメバチとしては小ぶりだけれど、牙のあるその顔には肉食昆虫の獰猛さが。
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巣の切れ端が落ちていた。
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中にはウネウネ動く幼虫が。

巣や巣箱の動線には取りこぼされた巣の欠片がたくさん落ちていた。中には、まだ幼虫が残っているものも。

ところで、ヘボの幼虫は生でも食べられるというのはいろいろなところで言われていることだ。これは千載一遇のチャンス、試してみよう。

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食べてみよう。

 

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ぐにっとした食感に、うっすらとした旨味と甘味が。

他のなにかに例えるなら、豆味のジュレを仕込んだ甘味の薄いグミ。味は薄めだが、その分作業の合間に手を伸ばすのにちょうどよさそうな味。

⏩ 刺されるとちゃんと痛い

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