特集 2024年2月6日

黒子の見えないオシャレ道〜先輩が一番こわい

黒の衣装をまとい、ササッと舞台で仕事をこなす黒子。「目立たない」が黒子のモットーですが、黒子も舞台人、やっぱり少しはオシャレを楽しみたいのではないか。

黒子の「見えないオシャレ」を考えてみました。

アイデアを出していく中、脳内で架空の「黒子の先輩」が登場し、先輩から目をつけられないように知恵をしぼることに・・・

大阪で生まれ育ちました。工作と漢字が好きです。チェキで盆栽を撮影したり、豆腐を千切りしたりしています。

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黒子の衣装をもらった

先日、デイリーポータルZのあまった備品の配布会があり、そこで

黒子の衣装をゲットしました。

「地味ハロウィン」のときに編集部の橋田さんがスタッフとして着るために購入したそうです。しかし、いつも当日もっていくのを忘れて、実際に着用したことはないそう。しかも毎年、去年買ったことを忘れて新たにもう1着買っていたらしいです。熊手と同じペースの購入です。

早速黒子の服に着替えてみました。

やはり、地味です。

役者の邪魔にならぬよう、影のようにササッと仕事をこなす訳ですから、地味なのは当たり前です。

ふと、

こんな疑問がわきあがりました。

黒子だって舞台人、見えないところでもいいから、オシャレがしたいんじゃないか。自分だけのアレンジ加えて周りと差別化したいはず。

私は黒子をやったことがないし、今のところやる予定もないですが、黒子の気持ちになってオシャレをしてみましょう。私的黒子オシャレの花道がはじまりました。

(歌舞伎などでは「黒衣」が正しい表記ですが、一般的な「黒子」と書いております)

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オシャレ①裏地〜黒子の先輩とのたたかい

オシャレ大改造が終わりました。

これが私なりのオシャレ黒子ファッションです。
パッと見は普通の黒子ですが・・・

襟をめくると、

柄の入った裏地が!
帯の裏もこのように・・・!

見えないおしゃれといえば裏地。裏地が工夫されている黒子の衣装を着ているだけで「私ってばシャレオツなんだから」というルンルンがわきあがりました。黒い頭巾の下は半ニヤケです。

オシャレを考えるとき、

いろんなアイデアが出るには出るのですが、
お客さんから見えるかどうかがまず気になります。

なので、裏地も

本当は派手にいきたいけれど、
自然と黒っぽい地味な裏地に手が伸びます。

チラッと見えてもわからないようにという意識がはたらくのです。黒子として舞台に立った経験ゼロでも、黒子のプロフェッショナルって芽生えるんですね。

裏地のアレンジとして、

頭巾の布の内側にレースをいれました。
「手を加えるんやったら、前ぜんぶレースで行きたいねん!」と伊達な心が爆発していた時期もありましたが、

目立たない黒子の仕事に誇りはあるわけで、

幅の狭い帯状のレースを頭巾の内側に貼りました。

このように「お客さんが気にならないようにする」、これは舞台に立つ黒子として当然の心配りですが、

色々考えていくうち、
黒子の先輩の目すらもめちゃくちゃ気になりはじめました。

私にはそんな黒子の先輩はいないのですが(そもそも黒子やってないし)、なんかどうしてもその架空の先輩が気になるのです。

どれだけお客さんに見えない小さなアレンジでも、舞台上​で一緒に動く先輩には気付かれる可能性大。もし気づかれたら、

こうやって釘を刺してくるでしょう。

先輩はきっと「お客が舞台に不満を持たないように注意しているのだ」と「お客さん第一」の衣をまとってくるので、反論の余地はありません。

また、「そうやってアレンジする態度がよくない」と、オシャレ行為がエスカレートする前に芽を摘もうとする論調でくるはずなので、「お客さんから見えない」という口ごたえもできません。

さらに、

黒子の初日に言われたことをおさらいされ、
イヤミを言ってくるでしょう。

オシャレアイデアを考えていると、いもしない黒子の先輩が言ってきそうなことの妄想が際限なく膨らんできます。

先輩は、

しばらく時間が経った飲み会でも、「そういえば前も注意したけど・・・」と蒸し返してくるでしょう。

せっかくのたのしいお酒に水をさされたくありません。

私の中で、黒子オシャレ道の輪郭が見えてきました。

黒子の先輩からの目、重要度ランク2位です。
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黒子のオシャレ②かわいいボタン

お客さんからも、そして先輩も絶対見えないアレンジ、それは

袴の裏ボタンです
手芸用品店で見つけたお気に入りのボタン。

袴の内側なので、たとえ先輩にバレたとしても「お客さんから見えたらどうするの」という釘をシュッと回避できるのです。

ハッと気づいたのですが、

発想が学生服の改造っぽいことに気がつきました。

黒子も制服も規則があり、「目立ってはいけない」「華美に流れてはいけない」というお題目があります。ユニフォーム・制服のアレンジはどんどん裏にもぐっていくし、そんなとき、ボタンは色んな形や色があるから手軽なデコレーションとしてもってこいです。

私が学生だったときは、上に羽織るカーディガン、靴やカバンが自由だったためか、制服アレンジ熱は広がっておりませんでした。ガチガチのルールから細かな改造が生まれるのでしょう。

Amazonで裏ボタンが買えるみたいです。
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黒子のオシャレ③刺繍 内なるかがやき

学生服改造魂が宿ったあとにすること、それは刺繍です。中学時代、やや古風なタイプのヤンキーの同級生がおり、制服をプチ改造していました。卒業式、彼らはバーンと背中に刺繍が入った特攻服を着てきました。コツコツお小遣いを貯めて刺繍をいれてもらったそうです。「カツアゲじゃないんや」とほっこりしました。

私は黒子という役柄、目立つ刺繍は入れられませんが、

黒い足袋のくるぶし上に、
刺繍を入れちゃいました。

あこがれの歌舞伎役者の紋です。こっそりマークを身につけることで、いつでもその役者を感じられ、連日の舞台仕事にもハリがでるってもんですね。

これこそが「見えないオシャレ」の真骨頂です。外にアピールできないからこそ、自分だけがそのオシャレを知っているからこそ、内なる輝きが増していきます。

 

日頃、シワッシワの服を「俊敏に動いてたら目立たんやろ」と外に着ていくような私が、こんなオシャレ境地にたどり着けるとは思いませんでした。

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黒子のオシャレ④肩パッド たぶん怒られる

ラストオシャレは、
肩パッドです。

黒ずくめなので、肩がしっかりしてた方がかっこいいかなと縫い付けました。

しかし、黒子は基本的に体を小さくせねばなりません。ギュッと縮こまる姿勢をとることも多いです。肩パッドを入れると、気持ちが大きくなって自然と背筋が伸び、胸を開いてしまいます。そんな堂々としすぎている黒子はいません。

なので、肩パッドは十中八九先輩に見つかって怒られるでしょう。

肩をガシッとつかまれ、「肩に何か入れてる?」とささやかれるのは必至。

それを承知の攻めのオシャレです。たまには先輩から怒られるのも一興です。「悪い人じゃないけど、ねちっこいなあ〜」と思いながら、飲み会で蒸し返されるのもいい思い出にしてしまいましょう。


黒子オシャレ道はまだまだこれから

以前、「​マスクの下でドキドキお歯黒ライフ」という記事を書きました。コロナがかなり流行していてマスクが必須だったころ、1週間お歯黒をして過ごしました。

その時、「私は見えない所で大胆なことをしている」というワクワクを感じたのですが、今回の黒子オシャレもそれに通じるものがありました。

「黒子オシャレ道」は学生服改造と共通点があったように、スーツなどほかの服にも応用可能です。黒子でないときも、黒子オシャレ道を歩いていきたいと思います。

黒子の先輩はよく差し入れしてくれて優しい

編集部が毎年買っていたのはこれです。

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