特集 2022年7月6日

雲に乗れるドレスで空を飛びたい

小学生の頃、家族でよく登山をした。

山の稜線を歩いていると父が「今、雲の中にいるぞ!」と言ってきた。

まだ子供の私は、雲は触るとふわふわで乗れるものだと思っていたから、雲の正体がなんにもなくて驚いた。

 

今も雲はとても魅力的だと思う。

のんきに漂ってるだけじゃなく、雷を鳴らしたり、綺麗な雪を降らせたりする。

なんて神秘的な自然なんだろう!

雲のいいところなら3時間くらいカフェで語れる。

 

今回は、そんな憧れの雲に乗っているように見えるドレスを作りたい。ドレスを着て空を飛んでいる写真が撮れたら、それはそれは映えるんじゃないだろうか。

 

さぁ今こそ、子どものロマンを叶えてみよう!

1995年、海の近く生まれ。映画と動物とバーベキューが好きです。オレンジジュースを飲んでいたコップに麦茶を注いでもらう時でも「コップこのままでいいよー!」と言えます。

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デザインを考える

雲のドレスのデザインはすぐに浮かんだ。

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こうしたい。

足元に雲があり、ヒザの部分が透けて足が見えていれば、雲に乗っている感じが出せるだろうと考えた。

次に雲を何で作るかが問題だ。

デイリーポータルZには以前小堺丸子さんの「きんとうんに乗るという夢を叶える」という記事があり、そこではスケボーを芯にしてワタで雲を作り、ふわふわした様子を表現していた。

しかし今回のドレスではヒザが隠れるぐらい大量に雲の部分を作りたいのだ。

スケボーと違ってドレスにワタを貼り付けても雲の形にはならないだろう。

ワタを中に詰めて雲の形にするのもありだが、それだと雲の形になるような型紙を書かなければならないのだ。

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全く型紙の検討がつかないんですもの。

さぁ、どうするよ、雲。

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遠ざかる〜雲をみつめて〜

そうだ!白い風船ならどうだろう。

ふわふわ・もくもく感がだせるのではないか。

調べてみると、結婚式などで使われるバルーンガーランドがよさそうだ!

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85個。多いに越したことない。

雲に見えそうだ!一気に現実味が増してきたぞ!

雲のようにフワッとしたアイディアから、作れそう!と具体的になる過程が制作の楽しみでもある

というわけでデザインを描き直した。

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なんてドリーミーな服!

作り方はシンプルだ。

ヒザが透けた白いドレスを作り、そこに風船をくっつけるだけ。

きっとこれを着てジャンプしたら、雲に乗ってるみたいに見えるはずだ!

ドレスを作る

さて、さっそくドレスを作っていこう。

今回使用する布はこちら。

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白い布とファスナーを用意。

ドレスにはウエディングドレスに使われていそうな、ツルツルとしたハリのある生地を選んだ。

透ける部分はウェディングドレスのベールなどに使われる柔らかくて透け感のあるソフトチュールを使うことにした。

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もやっとした感じが雲っぽい。

最初のメモでは、透ける部分をPVCで作ろうと考えていたが、今回のドレスはソフトチュールのほうが合いそうだと思った。

イメージに合うように布の風合いや組み合わせを選ぶのも、洋裁の楽しいところだ。

 

さぁ、作っていこう!

まずは手持ちのワンピースからドレスの型紙を作る。

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このジャングルみたいな柄のワンピースを参考にする。

1から書くより、形やサイズ感の似た服から型紙を写したほうが楽。

修正を重ねて、型紙が完成!

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左2つが上半身の型紙、右2つがスカートの型紙。

型紙ができたらもう気が楽だ。

次に裁断して縫い合わせていく。

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早くもドレスに見えてきたが、まだまだ2割程度。

次にソフトチュールに切り替える位置で切る。

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短くなった。

ここに透けるソフトチュールをつけていこう。

ソフトチュールはふんわり見せるためにギャザーを寄せてからつけることにする。

ギャザーというのはひだを寄せて柔らかい雰囲気をだす技法だ。

こんな感じ!

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布の端をぐしぐし手縫していくと、布が寄ってカーテンみたいになる。

布が寄ったまま縫えばひだがふわっと膨らむのだ。

 

洋裁はいいな。

服に集中してる時は、歳をとらない気がする。

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待ってろよ、雲。

よし!ぐしぐし完成!

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より柔らかく繊細なイメージが出る。

これを先程のドレスにくっつけると、

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なんかイカみたいだ。

この下にもう一段白い布をつけて、風船をくっつける土台にしよう。よしよし、順調!

 

洋裁はひとつひとつの工程の達成感と、どんどん出来上がっていく疾走感がたまらない。

そのうえ上手に作れている時なんかはもう嬉しすぎて小躍りしちゃう。

でも、お腹は減るね。

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そろそろおやつ休憩にしますか。

作業に戻り、スカートの下部分をつけた。

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おぉ!ドレスになってきた!

背中にファスナーをつけて縫い合わせ完了!

ここで完成といきたいところだが、最後に裏の端処理をしていく。

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着ていると端がほつれてきてしまうので、このように端を縫い止めていくのだ。

ここでロックミシンの出番!

ロックミシンは縫い端処理用のミシンだ。

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ラストスパート!余分な縫い端を切りながら縫ってくれる画期的なミシン。

足踏みでミシンを進めていく。

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画期的だけど、床が汚くなるので1日で作業を終わらせないと掃除がめんどくさい。

縫い合わせたところを全部縫うので、裏処理は地味に時間がかかる。

もう西日が当たってきた。

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西日がとても好き。私が妖怪になったら、ニシビスキという妖怪になろう。西日が当たる部屋に現れて西日に当たるだけの妖怪。夕方に出てきて、夜になると消える。珍しいな。

できたー!もう夜になっちゃった!

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ドレスの形がきれいにできて嬉しい!

ヒザの透け具合もちょうど良い。あとは風船をくっつけるだけだ!

風船で雲を作る

次は白い風船で雲の部分を作っていこう。

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風船の大きさは4種類。大きさがバラバラの方が雲の凸凹感を表せる。

雲の作り方は簡単!

風船を2つずつ結んだものを2つ用意。

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風船の結び目で糸を挟み、

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結び目を中心に、風船どうしを重ね合わせ、ねじって絡ませる。

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3ねじりぐらいすると固定された!

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これをひたすらつなげていくと、こうなる。

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ツヤツヤの白子。

風船は犬に似ている。

最初はいつ割れるか、どのくらいの強さで触ったらいいか、おどおどしながら接していたけど、慣れてくるとバルーンアーティストみたいな手つきで風船をねじり始める。

犬もそう。

最初は吠えたり噛まれたりするかもと思ってあんまり触れないけど、慣れてくると顔をうずめてヨシヨシできる。そんな感じだ。

 

そして風船をドレスにくっつけていく。

風船が割れることを恐れて針を使わずにテープで固定。

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真剣。

できた!こんな感じになりました!

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足が見えるといい感じ!

さぁ、飛びにいくぞ!

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白い雲のように

昨日までカンカン照りだったのに、今日は一風変わって曇り空。さらに強風。さらにこの後、雷雨予報。

青い空と白い雲の下で写真を撮ることを夢見ていたのだが、正反対のコンディションである。

 

そして相対してすぐに分かった、本日の強敵は風だ。

風で風船が暴れまわる。

足の間に風船が入ってきて、歩くのも一苦労だ。

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ドレスの中に虫が入ってきた。向かうところ敵だらけ。

映えた写真が撮りたいのに、大変そうな写真ばかり撮れる。整えてきた髪もぐしゃぐしゃ。

まって、なんかもういろいろ大変。

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ちょっと移動しただけでわかる。本日の雲行きは怪しいです。

強風で風船が引っ張られ、ドレスに固定していたテープがどんどん剥がれていく。あぁ、まって!

地面の当たりどころが悪いと風船が割れる。4つで結んでいたうちのひとつが割れると均衡が崩れて3つが飛んでいく。まっておくれ!

 

風のせいで大変なことばかりだが、風のおかげなところもある。

風船がふわふわ揺れるのだ!

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すてき!ふわりと宙に浮きそうな雲!

私は風船で動きにくいなと思っていたけど、こんなに楽しそうな雲が撮れていたんだね。

 

さぁ、こうしちゃいられない。

この後の予報は雷雨なのだ。

早いところジャンプして写真を撮りたい。

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飛んでゆく風船。

ジャンプの衝撃で崩れていくドレス。

手塩にかけて作ったのにという気持ちが少なからずある。

撮影者が全速力で走って風船を追いかけて行ってくれた時の写真がこちら。

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遠すぎる。この日の風の脅威がおわかりいただけますか。

でも、あれ?遠くから見るとすごく雲っぽい!

拡大すると、完全に雲だ!雲に乗っている人だ!

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のんきに待つな。

飛んでいった風船を走って取りに行ってくれた撮影者も最初は笑ってくれたけど、5回目ぐらいからは本当にごめんという気持ちでいっぱいだった。

ジャンプでこれ以上崩れることを恐れて、とりあえず雲に乗ってる風な写真を撮ることに。

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風のおかげで髪がなびいて飛んでいるように見える。あとゴジラを呼び起こしそうにも見える。

何枚か撮ってみたけど、やっぱりジャンプして写真が撮りたい。

ふわりと浮く雲の上に乗った写真が、今回の目標なのだ。

目指す写真が撮れないまま強風にさらされていると、数か所のテープが剥がれて崩れ、雲の形が変わった。

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風に流されて後ろの方に寄ってしまう風船。でもこれはこれでいいなと思った。

そうか、雲って形を変えてゆくものだもんね。

そう思ったら少し気が楽になって、もうどうなってもいいからジャンプしてみようという気持ちになった。

やぁ!

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やっぱりジャンプすると風船の動きが楽しい!

ふわふわした風船の動きが1番雲に見える!

よし、もう一回飛んでみよう。

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いくよー!

それ!

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全然飛べてないのも含めて楽しい。

何度かジャンプして遊んでいたら、完全に雲が壊れてしまった。

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でも、これもこれできれい。こういう雲もあるよね。

レッドカーペットを歩いてそうなセレブのドレスに見えなくもない。

 

結局全然映える写真を撮ることはできなかったけど、雲のドレスを存分に楽しめた。

風船が崩れて形が変わっても、これはこれでいいかもと思えた。

変わりゆくものをその時々で楽しむという、日常の楽しみ方にも通ずるものを、常に変わりゆく雲から改めて教わったな、と思った。


風のない日に撮影しよう

今までで1番大変な撮影だった。

でも帰りに撮影者とお寿司を食べに行き、写真を見返したのが楽しかった。

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偶然マリリンモンローみたいな写真が撮れてたり
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腰のあたりから風船がついているドレスもいいね、とか
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こっちに向かって飛んできてるみたいじゃない?とか

 

動画から切り出して写真も作った。

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足は出てるけど躍動感あるね、とか
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どうなってんのこれ、とか言って笑ったりした。

いろいろ学んだ一日だったけど、一番身に染みたのは「風の強い日に撮影はやめたほうがいい」ということだった。

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