コロッケの定義を確認しよう
実は前々からいつかやりたいと思っていたコロッケ神経衰弱。編集部に声をかけて、ついに実現することになった。
決行は平日、仕事終わりの夜。なんとしても定時で退勤し、買い出しを経て即コロッケパーティーというジェットコースターのようなスケジュールだ。
一分一秒を争う準備時間だ、コロッケの買い出しに迷いがあってはならない。どこまでをコロッケと呼んでいいのか、事前に定義を確認しておくことにした。
「パン粉に包まれていたらコロッケ」…いくらなんでも定義が広すぎやしないか?!この理論でいけば、とんかつもコロッケじゃないか。
さらに迷子によるロスタイムをなくすため、近隣のスーパーの場所も調べた。
地元は徒歩5分圏内に2軒(それでもかなり恵まれていると思う)。
一方、会場最寄りの都内某駅は5軒もあることがわかった。5軒!!スーパー激戦区じゃないか。さぞコロッケ集めも捗るだろう。これで準備は万端である。
都会のスーパーの惣菜売場で繰り広げられる熾烈な選抜争い
しかし当日、私を迎えたのはあまりにも厳しい都会の現実だった。
なるほど…わたしは地元の、めちゃくちゃ広くて品揃えが異様に多い、誰のどんな好みもどんとこい!なスーパーに慣れきってしまっていたのだな。
これが都会だ、惣菜コーナーの面積の小ささににキュッと心臓がちぢこまる。この小さな舞台で惣菜達は一軍を巡って日々戦っているのだろう。きっと戦い抜いた精鋭たちにファンが付いて、そのファンがお店ごと推す固定客になるのが狙いなのだ。まるでご当地アイドルのよう。
思わぬところでスーパーの生き残り戦略の厳しさを知り、心を打たれたが、おかげでなかなかコロッケを確保できず、走り回る羽目になった。
集合時間は刻一刻と迫っている。
コロッケ神経衰弱やってみてわかったこと①
都会と田舎のコロッケ戦略の違い。
都会のスーパー:出店争い激化の中で、限られた精鋭コロッケ推しから店推しにつなげる作戦
田舎のスーパー:面積の利を活かし多様な選択肢を提示することでファンを獲得する作戦
コロッケ神経衰弱はじまりはじまり
結局、スーパー5つ全てを巡り、精鋭のコロッケたちにお集まりいただいた。
ルールを説明します
今回のルールはこちら。なお、神経衰弱で作るペアは、「同じ店の同じコロッケ2つ」ではなく、「別の店の同じ種類のコロッケ2つ」である。つまり、必ずしも見た目では判断できない。
オレンジはそれぞれペアになっているもの、水色はペアにならないハズレである。
クリームコロッケだけは3つあるので、ペアを引いてあまったクリームコロッケはハズレ要員になる。
水色のコロッケを避けつつ、オレンジのコロッケ同士を揃えることができればいいのだ。
ちなみに「おやつコロッケ」という聞きなれないペアがあるが、これが後々問題になることに…。
ともあれ、ここでもう一度コロッケを見てから、ゲームを始めよう。
勝ちに行くならクリームコロッケ
それじゃあ始めましょうか、とじゃんけんをした結果一番手は橋田さんに決まった。
橋田
わたし前に北村さんの記事でコロッケ食べたんですけど、そのときも味の違いが全然わからなかったんですよ。当ててないのにまたコロッケに来ちゃったな…
3yk
今度は見た目で探すやつですから大丈夫ですよ!
橋田
クリームコロッケをねらいます。
石川
これ同じ店のものはないんですもんね、むずか……
橋田
これだと思います!
あんなに自信なさそうにしていたのに、橋田さん本気だ。本気で一勝を掴みに来ているぞ。この場にいた全員が思っただろう。
なんとなく「クリームコロッケといえば俵型でしょ!」というのは皆共通して感じているようで、橋田さんの選んだふたつのコロッケは、むしろ別の商品が並んでいるとは思えないくらいそっくりである。
橋田
ほら〜〜ははは、食べる前からね。これはね、クリームですよね!
石川
でも食べてみないとね。わからないですからね。
橋田
ふふっ、クリームコロッケです!
コロッケ神経衰弱やってみてわかったこと②
俵型はクリームコロッケの可能性が高い
コロッケ神経衰弱やってみてわかったこと③
当たると嬉しい
その後元気を取り戻した橋田さんはさらに、高難度と思われたチーズメンチカツを当て、ゲット。
ネッシーあやこ
えー!!すごい!!
3yk
なんでわかったんですか?
橋田
こっちは小さいからチーズ入りかなって、で、こっちは大きいから違うと思って選んだんだよね…わざと外してちょっと休憩しようと思ったのに…
橋田さん、外そうとして当てちゃったのだ。まるで目立ちたくないのにモテてモテてしょうがない、小癪な男主人公の発言じゃないか。とにもかくにも橋田さんのターンは続く。
おやつコロッケの謎 そして混乱を呼ぶゲームマスター
ここで、ゲームの進行を揺るがす事態が起きる。
橋田
おやつコロッケっていうのがわからないんですよね。なにがおやつなのか…挑戦してみようかな。
石川
おやつコロッケってなんなんですかね?
3yk
私も食べたことないんですよね。
ネッシーあやこ
私もないかもしれません…
ここにいる4人全員、おやつコロッケがどういうものなのかわからない。
なのに2店舗で売られていたのだから、おそらく市民権を得ているジャンルではあるのだろう。なんだろう、おやつコロッケ。
橋田
3ykさん、どれがおやつコロッケだったか、正解覚えてますか?
これはしまったと思った。
コロッケの種類は食べればわかるから忘れても大丈夫!と安心して、どれがどのコロッケかメモっていなかったのだ。おやつコロッケという、食べてもそれが正解なのかわからない伏兵がいた。
ネッシーあやこ
おやつコロッケというのは、サイズがおやつなのかそれともおやつという概念が詰まっているんでしょうか…
橋田
(左手側のアルミホイルを開いて)あ、これは牛肉が入ってるよ。
石川
牛肉はおやつには入ってないと思うんですよね、きっと。
橋田
牛肉はおやつじゃない。
牛肉=高級品だからおやつにはもったいないという意見だ。
石川
おやつって言うくらいだから甘いんじゃないですかね。チョコレートとか。
チョコレート?え…?と橋田さんの顔が再び曇る。
ネッシーあやこ
実はおやつコロッケと言いつつただのコロッケという可能性もありますよね。
橋田
そうだよね。ただの素朴なコロッケをおやつに食べなさい、みたいな。
これがおやつコロッケだったのかどうかはわからないが、とりあえずもう一つのコロッケを開けてみる。
橋田
うーん(最初のは)牛肉が入った美味しいコロッケって感じ。もういっこのは…またぜんぜん違う感じだね!めっちゃ芋。
牛肉入りがおやつコロッケか牛肉コロッケかはわからないまま、橋田さんターンエンド!
クリームコロッケのだまし討ちと続・おやつコロッケの謎
2番手はゲームマスターでもある筆者だ。どれがどのコロッケか既に全部忘れてしまったので他の参加者と同じ土俵に立つことができた。
おやつコロッケを突き止めたい!とそれっぽいふたつを選択。
3yk
牛肉が入ってますね。
橋田
あら、これさっき私が引いたのとペアなんじゃない?次の人ラッキーなんじゃない?
石川
まあもう真相は誰もわからないですけどね。おやつか牛肉か。
おやつコロッケと牛肉コロッケの違いがわからず、場の空気もちょっぴり困り気味なのに、笑いがこみあげてしまう。
なぜか。コロッケがおいしいからだ。
コロッケ神経衰弱やってみてわかったこと⑥
コロッケがおいしいと楽しい気持ちになる
俺はというか、世の中的に、そういうルールがあると思うんですよ
うっかり者のゲームマスター、コロッケはゲットできずに石川さんにバトンが渡された。
石川
じゃがいもコロッケとクリーム、ハムカツがダミーってことですよね。それをとったらペアにならない。
石川
こうしてみると結構見た目だけでも情報量多いですね。メンチでいこうかな。
そう言うとすっと青のりの乗ったコロッケの皿を選ぶ。
3yk
迷いがないですね!
石川
僕、青のりが乗っているのはメンチカツだと思うんですよね。
橋田
俺が(思うんだよ)ね。
石川
いや俺がと言うか、世の中的にそういうルールがあると思うんですよ。
橋田・ネッシーあやこ・3yk
オオ〜(格好いい!!)
名探偵なんとかみたいな鋭い眼光が大変格好良かった。真実はいつもひとつ!そしてホイルを開く。
おやつコロッケのおかげで、もうゲームが楽しくなくなっちゃったかもとハラハラしていたが、この笑顔を見て「今日やってよかったな」と思った。
そしてもうひとつのホイルを開けると
コロッケ神経衰弱やってみてわかったこと⑦
正円で青のりが乗っていたらメンチカツ
コロッケ神経衰弱やってみてわかったこと⑧
正円で面が平らなのはハムカツ
そして石川さんのターンは続く。
残るは牛肉コロッケとおやつコロッケのペアを探し出すのみである。
ネッシー
ぜんぶ茶色だなって思うと、細部の情報に目を向けなければという気持ちにになりますね。
3yk
揚げ色とかもね、気になってきますよね。濃いのと薄いのがある。
石川
消去法的にもな〜。これとこれが普通の牛肉コロッケだと思うんですよね。
牛肉がしっかりしてるし、おやつというには大きい!よって牛肉コロッケ!合格!ということにした。2ペア目をゲット。
このあとうっかりペアにならないクリームコロッケを引いてしまい、石川さんも2ペア=4コロッケゲットでターンエンドです!
おやつコロッケの謎が解き明かされる
そして最後は満を持してネッシーあやこさん。
この会のためにおなかの空き具合を調整してきてくれたのに、ずっと観客側でコロッケが減っていくのを見守っていたのだ。ネッシーさんの番までコロッケが残っていて本当によかった。
ネッシーあやこ
あっ甘い!
ネッシーあやこ
あと衣が軽い。さっき石川さんが引いたコロッケはもっと衣がガッツリザクザクしてそうでしたよね。こっちは衣の大きさが細かいんですね。
ネッシーあやこ
わたしが食べているのは、衣がちょっとしっとりしているというか。片手で持って食べても大丈夫そうですよね。さっきの(牛肉コロッケ)はポロポロ衣が落ちちゃう可能性がある。
橋田
箸とお皿で食べるのが普通のコロッケなんだね。
コロッケ神経衰弱やってみてわかったこと⑨
衣がしっとり細かく、片手で食べてもこぼれないのがおやつコロッケ(たぶん)
さて、これでペアのコロッケは全てなくなってしまった。
橋田さんと石川さんが同着一位で4コロッケ、ネッシーさんが2コロッケ。
そして残るコロッケは3つである。
橋田
てことは、これ3つの味を当てたら5コロッケゲットということにして、優勝でいいんじゃない?
3yk
逆転優勝だ!
石川
え、ネッシーさんイケるんじゃないですか??
そして、ゲーム終了〜〜!!
【ご提案】子ども会や親戚の集まりでいかがでしょうか
勝負には必ず勝ち負けがある。勝ったらうれしいし、負けたら悔しく、悲しい。こと神経衰弱においては、他人との戦いと己の記憶力への挑戦というふたつの側面がある。そうすると負けたときの悔しさもひとしおだ。
その点、散々混乱を巻き起こしたコロッケ神経衰弱だったが、「おいしい」というのはすごい強みだと思った。コロッケをかじる瞬間は誰もが笑顔になった。「まちがえた!」「しまった!」という気持ちよりも「おいしい!」が先に来てしまうのだ。
見分けがつかず、それでいて間違えても悲しい気持ちにならないというのは、神経を衰弱させる者としてすばらしい才能ではないか。
ここはひとつ、子ども会や親戚の集まりなど、元気な胃が集まる場所でやってみてはいただけないだろうか。大人4人ではこの数でも少し多いくらいだったが、この2倍3倍あったほうが絶対盛り上がる。テーブルいっぱいに並ぶコロッケと、それを囲む子どもたち。夢の中の話みたいだ。