ジェスチャーゲームの新しい形
本家の「ここはどこでしょう?」と違い、地理的な推測がほとんど働かず、ほとんどジェスチャーゲームだったが、答えが場所を表しているというのは面白い。応用例として、あらかじめ正解の場所に宝を隠しておいて、ジェスチャーでそのありかを示すと盛り上がりそうだ。
また、別のwhat3wordsの遊び方として、面白そうな3単語の組み合わせで検索してみるというものがある。これはもはや「ここはどこでしょう?」ではないが、これはこれで楽しい。


what3wordsという仕組みをご存知だろうか。世界中の場所を3つの単語の組み合わせで表すというものである。これを使って「ここはどこでしょう?」のようなクイズをやってみたところ、けっこう楽しかった。
場所の伝え方にはいろいろある。住所はその一つであり、緯度・経度もそうだ。比較的新しい伝え方として、what3wordsというものがある。
what3wordsは、地球上を3メートル四方に分割し、それぞれを3つの単語の組み合わせで表すというものである。例えば、東京駅の銀の鈴には「れんあい・ただいま・すもう」が割り当てられている。場所は公式サイトやアプリで簡単に検索することができる。
地球の表面積は約510兆㎡であり、これを3m四方(=9㎡)で分割すると、約57兆個のマス目になる。what3wordsでは英語版で4万個の単語が用意されており、3つの単語を組み合わせると、4万×4万×4万=64兆通りになる。これで全てのマス目をカバーできるというわけだ。
世の中には緯度と経度という便利な仕組みがあるので、わざわざ3つの単語を使わなくても数字で世界中の場所を表すことができる。しかし、よりキャッチーで覚えやすいところがwhat3wrodsのいいところである。「35.681184, 139.767363」よりも「れんあい・ただいま・すもう」の方が場所を覚えやすいし伝えやすい。
ならばこの仕組みを使ってクイズができないだろうか。ルールは次の通り。
編集部の石川さん、安藤さんに二子玉川駅に来てもらい、what3words版の「ここはどこでしょう」で遊ぶことにした。
まずは私が事前に自宅で撮影した問題を見せる。ここはどこでしょう?
この動画に3つの単語が隠れている。
みなさんもお考え下さい。単語が分かったら、公式サイトやアプリで場所を探そう。動画から導かれる三つの単語をひらがなで「・」(中黒)で区切って入力しよう。答えは二子玉川周辺の場所です。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
石川:「いりごま」は分かるんだけど、二個目がなんだろう…。
安藤:これ「きざむ」じゃない?「いりごま・きざむ・はいいろ」か
安藤:けっこう簡単でしたね。最初だから簡単にしてあるんですか?
ほり:はい。まずは簡単な問題にしたんですけど、簡単すぎましたかね…
確かに簡単な単語の組み合わせを選んだのだが、さすがに簡単すぎたか。私としては「はいいろ」が引っかけポイントで、「ねずみいろ」とか「グレー」に引っかかることを期待したのだが、二人とも真っ先に「はいいろ」で調べていた。うーん、予想通りにいかない…。
「きざむ」も引っかけポイントで、「りょうり」「きる」などはハズレである。しかし、少しは悩んでもらえたものの、すぐに「きざむ」にたどり着いていた。なぬ…。頑張って問題を作ったわりに一瞬で正解されると、くやしいしむなしい。
回答者のコツとしては、とにかく試すことだ。ローラー作戦で試しまくればいつかは答えにたどりつくようだ。
最初の問題は簡単に解かれてしまったが、実はもう一問用意している。今度はもう少し難しいはずだ。
石川:「こいぬ」かなぁ…。「こねこ」の可能性もありますね。
石川:「かさねる・あんぜん・こいぬ」は…エクアドルですね。
安藤:あ、なんかサジェストが出たよ。「かさねる」ってやったら「かさねて」が出た。「かさねて・あんぜん・こいぬ」か。すぐそこですね。
またしても思ったより簡単に解かれてしまった。どの絵がどの単語を表すかも考える必要があるので、けっこう難しいと思っていたのだが…。「あんぜん」はともかく、「こいぬ」とか「かさねて」は一発でたどり着けないとにらんでいた。しかも、「かさねる」ではなく、「かさねて」である。謎の連用形だ。
しかし、安藤さんの言う通り、ここでサジェスト機能が役に立つ。
実は、what3wordsでは、音の似た単語はわざと離れた場所を表すようになっている。正解の「かさねて・あんぜん・こいぬ」は二子玉川だが、「かさなる・あんぜん・こいぬ」はブラジルで、「かさねる・あんぜん・こいぬ」はエクアドルである。これにより、うっかり3つの単語の一部を覚え間違えても、明らかに違う場所なので間違いだと気づくことができる。
今度はジェスチャーで3つの単語を表してみる。出題するのは石川さんだ。
石川:事前に問題を考えてきたんですよ。
ほり:どきどき…?
安藤:「どきどき」と「さいほう」かなぁ。二個目が何だろう。メモ?
ほり:「のーと」とか「しゅざい」もちがう…。
ほり:そもそも「さいほう」じゃなくて「ぬう」かもしれない。
安藤:あ、これだ!これだろ!!!「どきどき・めもがき・さいほう」
石川:正解です。意外といけますね。なんで分かったんですか?
安藤:これも、いろいろ試すうちにサジェストで出ました。
私は3つ目の単語を「さいほう」と「ぬう」の両方の可能性をにらみながら、2つ目の単語を探していたが、安藤さんは3つ目の単語を「さいほう」に決め、2つ目の単語をたくさん試していたようだ。そういう戦略の違いが出た。
とはいえ、私はいくら時間があっても「めもがき」にたどり着ける気がしない。いったいどんなサジェストで出るんだろう…。
石川:これ、正解の場所に行くには入場料がかかりますね。
ほり:そうですねぇ。まぁでも、別に行かなくてもいいですよね。
別に行かなくてもいい。誰もがそう思っていたものの、ここまで言わなかった言葉だ。冒頭のルール説明で、答えが分かったあとに「答えの場所に行く」と書いたが、別に行ったところで何もない。あるのは、場所である。
でも、できれば行ったほうが楽しいです。いろんな発見があるし、宝探しをしているみたいで楽しいので。さっきのエスカレーターの下に隠し扉みたいなものがあるなんて、行かなきゃ分からないことだ。実際に行った者だけが、そういうのに気付くことができる。
今度は安藤さんが出題する。
ほり:「たすき・まえかけ・くちどめ」ん~。違うか。割と自信あったのに。
安藤:3つ目の単語は過去形です。
石川:2つ目はさかさま…?
安藤:そうそう。
ほり:「たすき・さかさま・くちふうじ」違うなぁ。
石川:「たすき・さかさ・いわざる」だと外国が出てくる
安藤:ほらー。もっと、ほら
石川:あ…。「だまった」
安藤:「だまる」ならまだしも「だまった」となると、時制をジェスチャーするのが難しいですね。
ほり:そもそも、時制の違いを単語に入れないでほしいですね。
what3wordsはイギリス発祥だ。英語だと過去分詞が形容詞的に使われることがある。時制の違いというより、品詞の違いなのかもしれない。
ここで小ネタをひとつ。what3wordsは43の言語で利用可能であるが、面白いことに、3つの単語の単純な翻訳ではない。例えば、さっきの「たすき・さかさ・だまった」の場所は英語版のwhat3wordsでは "scuba.gent.painted" である。これを日本語に訳すと「スキューバ・紳士・塗られた」である。
これも、先ほど述べた間違い防止の話に関係する。what3wordsでは、音の似た単語はわざと離れた場所を表すようになっている。当然、言語ごとに音の似た単語は違う。英語の ”meet” と ”meat” は同じ発音だが、日本語の「会う」と「肉」は似ていない。言語ごとに考慮すべき類似単語の組み合わせは異なるので、言語ごとに3単語の配置を設定しているようだ。
いよいよ次が最後の問題。出題者はほり。ただし、これまでと違うのは、出題者があらかじめ正解の場所で待っているというものだ。先に再会できるのは石川さんか、安藤さんか。
では問題です。
ほり:では、正解の場所で再びお会いしましょう。さようなら。
安藤:もう行っちゃうんですね。
みなさんもお考えください。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
ちゃんと来てくれるかなぁ。誰も来なかったら寂しい。かくれんぼで隠れてる間にみんな帰っちゃうやつだ。それはあまりにも残酷だ。
よかった~。ちゃんと伝わってた。ジェスチャーで示した場所に人が来る面白さよ。
石川:さっき、安藤さんの前をスッと通ってきましたよ。すぐそこで悩んでました。
安藤:なかなか分かんなかったよー。ヒントがないときつい。
どんどんヒントを出したほうがスピード感が出て楽しい。いったん行き行き詰まってしまうと、永遠にたどり着けないような絶望感がある。最初の文字とか、文字数とか、動詞・名詞・形容詞とか、簡単なヒントを出すとスムーズだ。
本家の「ここはどこでしょう?」と違い、地理的な推測がほとんど働かず、ほとんどジェスチャーゲームだったが、答えが場所を表しているというのは面白い。応用例として、あらかじめ正解の場所に宝を隠しておいて、ジェスチャーでそのありかを示すと盛り上がりそうだ。
また、別のwhat3wordsの遊び方として、面白そうな3単語の組み合わせで検索してみるというものがある。これはもはや「ここはどこでしょう?」ではないが、これはこれで楽しい。
![]() |
||
▽デイリーポータルZトップへ | ||
![]() |
||
![]() |
▲デイリーポータルZトップへ | ![]() |