東京なら好みのラックが、きっと見つかる
好きな店がある、好きな人がいる、好きな空気がある、住みたい街の条件は様々だが好きなラックがあるから住んだっていいじゃない。あなたがこれから住みたい、行きたい場所を探すうえでの一助になれば幸いである。
R25とかスーモとか街歩きとか、この社会でいい感じにやっていくためのお役立ち情報満載のフリーペーパーが百花繚乱な駅の、なんていうかラックががんがん置いてある所のはずれで一輪の白糸草のようにしとやかにたたずんでいるのが行政区からの情報を発信する広報誌のラックである。
そのしぶみに魅かれた私は東京都23区の広報ラックを見て回るラック採集を敢行したのだった。
「駅はラックばかりだな」毎日の生活で行き来する駅のコンコースを歩きながら、ここ数年そんな思いを抱いていた。
もういい歳なのでもっと知的かつ戦略的な事を考えながら毎日を送るべきだとは思うがよくよく見てみると形状も陳列している印刷物も様々で興味が尽きない。
ただでさえ情報が多い駅構内の景観の中で、ラックの存在が俄然、鮮烈に立ち上がってきたのだ。
リクルート系のフリーペーパーなどの存在感あるラックに紛れて星より密かに、雨より優しくたたずまっているのが行政区の情報を伝達する広報誌のラックである。
駅という生活のターミナルで商業味を廃したシンプルかつクラシカルな装いで区の顔となっている広報ラック。東京23区では各々区報が発行されており、区報の数だけラックもあるに違いない。めぐろう、23区を!生きる活力をもらおう!というわけでいきあたりばったりであたふた巡ったのだがざっくりとエリア別に紹介する。
◽️練馬区
先に挙げた練馬区の「ねりま区報」ラックだが上記のような練馬グリーン(勝手に呼んでます)の他にブルーバージョンも見つかった。
いずれにせよ、このスマートな「ヘラ型」が存続していて何よりだ。
◽️杉並区
阿佐ヶ谷、高円寺、荻窪と独自の中央線沿線文化圏を形成し、街歩きスポットとしての人気も高い杉並区。駅のラックにもそんなコンテンツがみっしりと充実。
そんな中で広報ラックは実直に住まう人への情報を発信している。
◽️中野区
オリジナルのラックというよりは既製品にラミネートした看板を付けたものが多かったが、いろいろ回るとぽつぽつとオールドスタイルないいラックを発見できた。
◽️板橋区
東京のベッドタウンとして成熟した高島平。最近まで私が住んでいたところである。夜遅く仕事帰りに改札を抜けると、このラックが私を迎えてくれていたのだ。
◽️北区
北区を走る様々な鉄道網の中心たる赤羽駅では広い通路に威風堂々と広報ラックが構えていた。
◽️世田谷区
東京都区最大級の広さ(最大は大田区)を誇り多摩川流域に覇を唱える世田谷区だが広報ラックはいたってコンパクト。
◽️目黒区
目黒と聞くと私の脳内には俊速で寄生虫館が想起されるが、たいていの人にとってはハイソでアッパーな街である。そんな中でも広報ラックは息づいている。
目黒区最南端で世田谷区との区境にだいぶ近い東急線自由が丘駅では双方の広報ラックが壁面に並んでいる。
◽️品川区
シンボルマークの基本カラーである品川パープルがラックをふちどっている。東急線やりんかい線の駅で比較的容易に発見できた。映えますね、パープルは。
◽️大田区
なごり惜しいが西部のラストを飾るのが大田区である。
◽️豊島区
豊島区といえば池袋、導線が破綻したかのように人で溢れかえる巨大駅の通路にもしっかりとラックさんは立っている。
◽️渋谷区
池袋とならぶ都心の巨大駅渋谷、あんなビカビカしたところにあるんだろうかと思ったら、ありましたぜ。
◽️文京区
都心部の中でも下町的な情緒で知られる文京区、そんないい雰囲気のところは他のメディアで堪能してもらうとして、ここではラックの写真を載せようと思う。
◽️中央区
都心部でも都心3区と呼ばれる中央区、千代田区、港区は広報ラックとしてはなかなか不作だった。
◽️千代田区
既製品と思われるラックにテプラで広報誌用ラックである旨を表記。まあ広報誌が入っていればそれだけでわかりやすいわけで必要十分なのかもしれない。
◽️港区
港区は今回の調査で唯一「広報誌ラック」が見つけられなかった区だ。平台のワゴンに他の情報誌やパンフレットなんかと一緒に並べられている駅が多かった。
◽️新宿区
だいぶ苦労して探したが区のサイトに設置場所の詳細が記載してあり、JR新宿駅みどりの窓口付近にかわいらしいやつを見つけた。この「でかい駅で困ったらみどりの窓口に行ってみよう」というメソッドは後に私を助けてくれるのであった。
◽️荒川区
東部になると俄然マッシブで存在感のある広報ラックが増えてくる。頼もしい限りだ
◽️足立区
記事の冒頭で紹介した「本屋かよ!」と思った雑多なラック並びはこの足立区だった。
◽️隅田区
ラックに墨田区報とは書いていないものの、その個性的なフォルムですぐにこれだとわかるやつになっている。
◽️江東区
荒川区と並びスタンド自体に存在感があるのが江東区である。
◽️葛飾区
葛飾といえば下町の典型であるが、広報スタンドはシンプルでシュッとしていた。わりと新しかったので最近リニューアルしたのかもしれない。
◽️江戸川区
東京最東端の江戸川区だが広報ラックがかっこいい事は意外と知られていない......はずだ。でかくて見所しかないのでぜひ堪能してほしい。
◽️台頭区
東京東部随一のターミナル駅である上野駅を探しても広報ラックが見つからず、ならばと地下鉄日比谷線や銀座線沿線各駅を回っても影すらつかめなかった。
意気消沈したが先に紹介した新宿駅で「みどりの窓口を探ってみれば」というメソッドを得て無事スキルアップしたうえで再度上野駅へ出向くとあるじゃないのさ。
どこにニーズがあるかわからないがここで紹介した広報ラックを一覧でまとめた。大雑把にいうと西部はスマートで東部になると重厚感のあるやつが多くなる。
おおきい画像はこちら(PDF)
まだほんの一部を回ったに過ぎない。どこかの駅の改札や自販機の横で潜んでいるまだ見ぬ逸品との出会いを期待したい。
好きな店がある、好きな人がいる、好きな空気がある、住みたい街の条件は様々だが好きなラックがあるから住んだっていいじゃない。あなたがこれから住みたい、行きたい場所を探すうえでの一助になれば幸いである。
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