混ぜるという発想
ミックスジュースというものがある。いろいろなものが入っているジュースだ。中には卵が入っていたりもする。カクテルも何かと何かを組み合わせることで完成する。つまり混ぜるというのは美味しさを引き出す方法なのではないだろうか。
それはたとえば、単体で成立するものを混ぜることで問題ない。りんごジュース、間違いなく美味しい。ぶどうジュース、いつだってグレープだなという感動を与えてくれる。彼らは単体でも成立するジュースではあるけれど、混ぜたっていいのだ。
つまりである、既存の単体で成立しているスープを混ぜることで今までにないスープが生まれるのではないだろうか。いや、断言しよう。生まれるのだ。「よくかき混ぜなさい」と母に言われていた。そう先祖代々、かき混ぜてきたのだ、人類は。
クノールカップスープ
いろんなスープがあるので、集め出したらきりがない。そこでクノールカップスープのノーマルをほぼ全て集めた。プラスでクノールカップスーププラミアムも全種類。減塩のものや冷たい牛乳で作るものは除外した。
いきなり全種類揃っている写真だけど、なかなか全種類は一つのお店では売っていなくて、何件も回って集めた。チキンコンソメスープがあんまり売っていなかった印象だ。逆にコーンスープとオニオンコンソメは鉄板。確かに飛行機に乗るとオニオンコンソメを絶対に飲む。
まずは近くにいた人にどんなスープを飲みたいのかテーマを聞く。バーテンダーみたいな感じだ。「初恋」というオーダーをいただいた。スープにもカクテルのような調合があってもいいと思う。さっそく初恋スープを作って行こう。
トマトのポタージュ、栗かぼちゃのポタージュ、ブイヤベーススープトマト仕立て、チキンコンソメ、クリーミージンジャーポタージュを調合した。トマトで初恋の甘酸っぱさ、ジンジャーで二人になる温かさ、かぼちゃで恋の甘さなどを表現している。
味は非常にタイっぽい感じになった。初恋は今まで知らなかった世界に踏み込むのでエキゾチックな味わいで正解なのだ。これを頼んだ方も美味しいと言って飲んでいた。初恋にもいろいろあるんですね、と言いながら。
次のオーダーは「失恋からの回復」というテーマだった。悲しいんだか、前向きなんだかわからないオーダーだったけれど、おまかせください。スープで素晴らしい味わいを生み出してみせます。
失恋の甘酸っぱさを「トマトのポタージュ」。鉄のように強くなれという思いを込めて鉄分ありそうな「ほうれん草のポタージュ」。悲しい涙の傘になればという願いから「きのこのポタージュ」。一歩踏み出す力強さを「ベーコンとポテトがたっぷりのポタージュ」。あと君のベースは素晴らしいということで、人気の所の「オニオンコンソメ」と「つぶたっぷりコーンクリーム」を入れた。
飲んでみると太陽のような力強さを感じる太陽の恵みスープのようになっていた。イタリアを感じさせる一品だ。これをオーダーした彼にイタリアの思い出はないそうだけれど、イタリア人の陽気さを、という願いを込めてのスープだ。結果、そうなっただけだけど感じ取って欲しい。
全部混ぜる
バーテンダーのスープ版を行った。数人でやるとなかなかに盛り上がる試みだった。ただ私が本当に作りたいものは究極のスープだ。この世の全てが詰まったようなスープ、それを作るために全てのクノールカップスープを集めたのだ。
かなり豪勢なスープとも言える。もし本当にこれらのスープを作り混ぜるとしたら、何個もの鍋と時間が必要だ。それがこの粉でできちゃうからいいよね。美味しいかは謎だけど。混ぜたらカラフルでもなんでもなくなったけど。
色は美しくなった。匂いはなんと説明していいかわからないけれど、いい匂いと言っていいと思う。そして、味。混沌の中で保たれる平和という味だ。「あの味だ!」みたいなことはなくて、混沌の中にある平和という味なのだ。
いろいろ混ざり深み的なものがある。美味しいと胸を張って言える。ただこんなスープ飲んだことがないので、何味とは言えない。強いて言えば「混沌の中の平和味」ということになる。つまり美味しいのだ。今まで出会ったことのないスープなのだ。