特集 2022年3月5日

日暮里から一駅目の着るネパール

カレー屋でなくアパレルショップでネパール旅行

東京の日暮里駅から常磐線で一駅目の「三河島駅」に、インドの服「サリー」が売られている煌びやかな店があると聞いた。

三河島は実はアジアの店が目立つアジアンタウン。

韓国とネパールの本格的な料理屋や食材店がある。韓国料理屋は何店もあるが、中には日本式中華料理ならぬ、韓国式中華料理店なんてものまである。

魅力的なガチ外国料理の店をかきわけて、噂のアパレルショップがどんな店かと気になって行ってみれば、すごく本格的なネパールのお店だった。

変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

前の記事:伊東に移転した北京のガチ中華を食べる

> 個人サイト 旅ライターユニット、ライスマウンテンのページ

外観から外国。近づいてネパール。

目指すはサリーを売る店、その名も「EKATA(エカタ)」。

三河島駅を出て大通りを右手に、その先をちょっと歩いて右手に曲がると、駅から5分も歩かないうちに、遠くの建物の上にネパール国旗がはためいているのが見えてくる。よく見るとチベットで見かける横断旗「タルチョ」もはためいている。一人で歩いていれば、どうやっても目に入りそうだ。

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チベット圏で見かけるタルチョとネパール国旗が空高くはためく。

店の正面が見えるともう外観からなんだかキラキラして外国の景色という感じで、ワクワクドキドキが止まらない。

扉に手をかけてガラガラっと開けると、そのキラキラが視界すべてに広がり圧倒される。外国に来た!インドのあたりに来た!と気分が高まる。

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入口からわくわくが止まらない。

同行してくれた2人のアジア好き女性「茅さん」と「スイさん」も、店内に入るやいなやテンションがあがる。感動のあまり、まるで掘り出したばかりで勢いよく湧き出す温泉や石油のように、「なにこれすごい!」「素敵!」とこちらが聞き取れないほどしゃべり続けていた。それくらい最初からとんでもなくインパクトある店だ。

別世界に入って興奮する一行を笑顔で迎え入れてくれたのは店長で社長のティングさん。ネパールからやってきたというティングさん、物腰柔らかそうな方だ。

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丁寧な商品説明が印象的な、店長にして社長のティングさん。
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ティングさんが見せてくれる商品を前に興奮がとまらない茅さんとスイさん。
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アクセサリがどどんと並ぶ。海外旅行気分というか、日本にいる感じがしない。
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ガラスのショーケースにも小物がずらり。しかも値段もあちらプライスで、安い!

店舗を見回すもとにかく知らないものばかり。

ビンディーと呼ばれる女性の眉と眉の間につける丸い印や、イヤリングやサリーなどが売られている。またタルチョも売られている。…とティングさんは教えてくれた。

とにかく知らないものばかりで、外国旅行の醍醐味を、日本に居ながらにしてこれでもかと体感する。

落ち着いて店内を見渡すと、スマートフォンの台がある。ティングさんによると、インスタグラムやフェイスブックなどに商品の画像や動画を配信するためにあれこれ撮っているのだという。

写真をSNSにアップすれば、気になった日本国内のネパール人などの客が問い合わせてくる。それでオンラインショッピングが成り立つのだそうだ。

ところで旗がはためく屋上の3階について聞いてみる。あのフロアには何があるのだろう

「あれはネパールのお店だと遠くからでもわかるようにしたのです」

なるほどわかりやすかった!

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わからない商品ばかりだけど、訊ねるとスマホ片手に日本語でどう説明すべきか調べながら教えてくれた。

日暮里は繊維の街として、また服が激安な街として知られているが、インドから輸入したサリーもかなり安い価格で売られている。

キラキラしていて高そうに見えるかもしれないが、アクセサリは数百円から、上下揃った正装でも全てついて1万円台~2万円台である。茅さんとスイさんは「この値段は安い、ありありあり!」と興奮する。

そんな商品を見ているうちにひとつ気になった。誰が買うんだろう。

「留学生が晴れの日に出身の少数民族の伝統衣装を着ようとします。そこにニーズがあるのです」

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高級なドレスが素敵すぎた。

留学生の卒業式でのニーズに応えたのだ。なかなか斬新で大勝負な感じがするんだけど、すごい。

ティングさんはなぜこの店を開いたのだろう。

「もともとはネパール人留学生向けの住宅サポートなどを行っていました。でもコロナでネパール人留学生が来日できなくなった。それで去年から民族衣装を売るようになりました」

さらに聞いてみると、もともとはお兄さんが日本でビジネスをしており、お兄さんを頼って東京の田端に。日本語学校で勉強したあと専門学校にも通い、2017年に田端でネパール料理屋をやったあと、ここで学生サポートをはじめた。その後コロナで業態を変えた。

ところで三河島はネパール人にも評判で住み始めたのだろうか。

「日本語学校が(店の近くの)西日暮里にありまして、その近くに住んでいました。他のところに行くつもりはなかったです。」

三河島にネパール料理が多いのもそのせいなのだろうか。ティングさんはネパール料理「ダルバット」をよく食べているという。故郷の食事をちょっと外出したら食べられるのは便利だ。

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外国のような店内で、むしろガリガリ君ファミリーの「シャキ子さん」が異質だった。

奥にはガリガリ君の段ボールがあった誰も気づかなかったのは、きっとあまりにまばゆい店内で目がくらんでいたかもしれない

「好きでよく食べます」

ティングさんはガリガリ君が好きだった。

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試着する

ところで外国文化にアンテナが立っている茅さんとスイさんに同行してもらったのには理由がある。試着してみたかったのだ。

「いいですよ、2階にいっぱいありますので」

やった!独特なペイントがされた急階段を上がって2階へ。祭壇スペースを抜けて、試着スペースへ。

茅さんは「『インド周辺国=サリー』という先入観が打ち砕かれた!」と驚く。そこにあるのは、1階と違ったネパールの服の大量在庫だった。

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二階もネパール人のニーズに応えた圧倒的なラインアップだった

服の種類が多いのにはわけがある。ネパール人といっても様々な民族がいる。

「タマン族」「マガール族」「シェルパ族」「グルン族」などティングさんから様々な民族の名前が出てくる。その各民族の正装をそれぞれサイズ別で扱ってるというのだ。そんなネパールの民族の服を日本語で買うことができる。

茅さんは「遠い祖国の品がバリエーション豊富に並べられていて、さぞ留学生の方にはありがたいでしょう!」と感服していた。

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「よくネパール料理のお店で見る伝統的な服ですね」

ティングさんは「試着してみますか?」といい、タマン族とマガール族の服を持ってきてくれた。いよいよ試着だ。

ティングさんは上下の服を持ってくるだけでなく、各民族に合わせたアクセサリを持ってきた。

「店主さんが試着を促してくれるどころか色々アクセサリーまで持ってきてくださるところに愛を感じました!」とスイさんはしみじみ。

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タマン族の服をスイさんに。
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ティングさん、小物をつぎつぎと渡す。
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妥協しないアクセサリを身にまといタマン族に。
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茅さんはマガール族に。
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マガール族再現のため、ティングさんは店内を駆け巡り小物をとってくる。

ふたりが更衣室で着替える間、カーテンの中から資本主義とか社会主義という単語が聞こえてくる。普通の服屋ではなかなかない光景だ。

ところで着るのは難しいのだろうか。

「サリーよりは面倒くさいかもしれないです!でも慣れたら1人で着れると思います!」と茅さん。

「そうですね、そんなに難しくはなかったです!個人的には普通の服のセットアップを着る時と近い感覚でした。後ろで紐を結んだりするので、そこは一人だと慣れるまでなかなか難しいかもしれません」とスイさん。

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三河島はネパールでした!

着るネパールも楽しい

「少数民族の服がたくさんあって面白かったです!こういったものはなかなか手に入らないので、貴重なお店だと思いました(茅さん)」

「店主さんが試着を促してくれるどころか色々アクセサリーを持ってきてくださるところに愛を感じましたし、ベスト型のものなど、日常にも取り込めそうなアイテムもありました!(スイさん)」

と大満足。同行するだけだった僕も、知らないものばかりですごく楽しめた。

エカタは3月5日(※この記事の掲載日)に一周年を迎えて割引セールを行うそうだ。また記事を読んだというとちょっと安くしてくれるそうだ。海外に行きにくい今、行ってみてはどうだろう。

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