特集 2018年12月17日

キリンケンタウロスになりたい

2018年、やり残したことはなんだ

次の記事は何にしようか、とぼんやり考えていたある日、突然「キリンケンタウロス」というフレーズが思い浮かんだ。

そんな生き物はいない、もっと真剣に考えるんだ。振り切ろうとするもキリンケンタウロスが頭のなかを右へ左へと走り回る。ええいわかった、自分に正直になろう。

おれは、おれはキリンケンタウロスになりたい。

埼玉生まれ、神奈川育ち、東京在住。会社員。好きなキリンはアミメキリンです。右足ばかり靴のかかとがすり減ります。(インタビュー動画)

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キリンケンタウロスになりたい

皆さまはケンタウロスのことはご存知かと思う。上半身がヒト、下半身がウマというギリシャ神話に登場する架空の種族だ。ウマがいるなら、下半身がキリンという亜種がいてもなんらおかしくないだろう。それがキリンケンタウロスだ。

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THE BOOMは風になりたいと歌った。スピッツの草野マサムネは猫になりたいと歌った。

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これはキリンケンタウロスになりたいと思った男の話。

背を高くするために考えた

時をさかのぼること1週間。キリンケンタウロスになるためにはどうすればいいか思案していた。キリンになるためには何せ高さが必要なのだ。
うーむ、キリンならではの、馬にはないその高さ…馬?そうか、竹馬だ!

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衝動的に描いた設計図。竹馬だ!!

竹馬に乗り、下半身に後脚をつけた胴体を巻きつける。これしかない。

というわけで早々にAmazonで竹馬を購入する。その値段7,180円。お届けに時間のかからない、大人でも乗れるやつはこれしかなかったのだ。めちゃくちゃ勇気を出して買った。

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“GOGO STICK TAKEUMA”という名前のゴキゲンなやつだ

さてゴキゲンな竹馬を手に入れたはいいが何しろコイツに乗れなくては企画が成立しない。はやる気持ちで公園へ繰り出す。

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今の竹馬ってすごいのだ。収縮自在で専用のポーチまで付く。結果的にはこのコンパクトさが移動の上で非常に重宝したので良かった

大の大人が竹馬を練習するのは少し気恥ずかしい。ベンチで楽しげなカップルが、犬の散歩をする女性がこちらをチラチラ見ている気がする。

忘年会で隠し芸をするのだ、おれの課は竹馬に乗りながらDA PUMPのU.S.Aを踊るのだから…と無い記憶を作り出して平常心を取り戻す。

取り戻しました。

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乗れるかなー

キリンの赤ちゃんが約2m。ならばそれを越える2.5m程度にはなりたい。すると竹馬の乗る部分を70〜80cmの高さに設定しなくてはならない。

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目盛りは55cmまで。メーカーも想定していない高さだが果たして…

70cmといえばカラーコーン(パイロン)と同じ高さだ。いざ不安定な状態で乗るとなるとそれなりの高さである。小学生のとき以来の竹馬、1週間程度の期間で乗りこなすことができるのか…?

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乗れた

乗れたので次に行きます。

下半身を作ろう

存外に15分ほどで竹馬の練習を終えることができたので続けてキリン部分を作っていく。

工作技術はないので素材には段ボールを選んだ。切りやすい、くっつけやすい、軽い、夢の素材だ。

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60×90cmのダンボールを2枚並べ、切り込みを入れて丸くする
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めちゃくちゃキリンっぽい布を見つけた。勝ったと思った

布屋で絞り染めのような黄色い布を見つけ小躍りする。これで胴体を覆ったら次は後ろ脚を作っていこう。

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適当にカットしたダンボールに綿をあわせ
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布で巻いたらいい具合のふくらみができた。奥はキリンの胴体

四足歩行の動物の後脚のふくらみが好きなので、ここは譲れない愛着ポイントである。
なお、ほとんどの作業は”ボンドでくっつける””ガムテープで留める”から構成される。

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これだけくっつくものがコンビニで190円くらいで売られているのすごい
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さらに筒状にした後ろ脚を継ぎ足す

家に帰るたび、床にキリンの下半身が横たわっている。そんな日常もあるのだ。

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そのままだと脚がプラプラしそうなので重りとしてテニスボールを入れる。これは良い判断だった

続けて、竹馬をキリンの前脚とするため、黄色のニーハイソックスを購入した。楽天からレディースファッションニュースが届くようになった。

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母さん、おれは竹馬にニーハイを履かせてお金をもらっています

竹馬にニーハイを履かせると感情が複雑になりすぎる。
他にも、毛糸でしっぽを作ったり、人間の手を作ったりなんだり。なんやかんやで過去最大規模の工作になってしまった。

モノが揃ったら最後に塗装をする。キリンをキリンたらしめる縁模様を無心で塗っていく。

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ぐりぐりと塗る、この作業はけっこう好きだ
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キリンのチャームポイントは背の高さと見せかけてこのおしゃれな模様だと思う。メジャーなアミメキリン柄にした

さぁさぁいよいよ完成したぞ。キリンケンタウロスになろう、公園へ行こう。

平穏な日曜の公園に現れた半人半獣

というわけで竹馬やら下半身やらをひいこらと抱えて昼前の公園に訪れた。

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遠巻きに見るとスキーヤーのようでもある
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慣らし運転的にふつうに竹馬に乗る

公園で竹馬に乗るのも悪くないものだ。フリスビー、バドミントン、竹馬。なんら遜色ない。さぁ身体が温まったらさっそくキリンを身につけていこう。

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紐でくいっと巻きつけて…
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上着を羽織り…

「なんか登場人物が増えたぞ」とお思いだと思う。申し遅れたが、今回はライターのトルーさんに「見届け人」として駆けつけていただいたのだ。

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心強い味方

内心とても不安だったのだ。一瞬でも冷静になると「キリンケンタウロスの魅力が伝わるだろうか」「この竹馬は今後どうしよう」と様々な不安たちがこの半人半獣を襲う。

誰かに見守ってもらいたい。そんな想いが心優しいトルーさんを呼び寄せた。キリンケンタウロスは一人でなるものではないのだ。

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ところで下半身は端切れのキリンの皮で覆う

本当は黄色いズボンを買いたかったがなかなか見つからず、妥協案として余りの布を巻くことにした。居酒屋サファリという居酒屋があったら店員はきっとこんな格好をしてたろうと思う。

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さぁ、準備は整った
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おれ、キリンケンタウロスになります

「なんかもっと登場人物が増えたぞ!」とお思いだろう。隣の女性はトルーさんの奥さんである。

なんと今回トルーさんに「30分もかからないので見守ってくれませんか」と声をかけたところ「じゃあ家族で見に行きます!」という力強い返事をいただいていたのだ。

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お子さんも来てくれた

さあ大変なことになった。聞けばお子さんは今月で1歳になると言う。そんなめでたいタイミングでいきなりキリンケンタウロスを見せつけられるのだ。

生誕→キリンケンタウロスを見る→1歳の誕生日

なのだ。感受性豊かな子に育てばいいが…決めた。おれは今日は、絶対にこの子を笑顔にするんだ。

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あ、だめだすげぇ警戒されてる

そしてキリンケンタウロスは歩き始める

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前段が長くなったが、行きます!!
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おおっ
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うまく歩けてる!見届け人も思わずガッツポーズだ

できたできた!あの、凝視すると、絶対に違うのはわかってるんですけど、こう、実際に動くと遠巻きには結構キリンキリンしてるんです。

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こんにちは、キリンケンタウロスです
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ひとは、誰かになれる

いつもより70cm縦方向に移動した視界が新鮮だ。過去一番背の高いバスケットボール選手の身長が231cmらしい。それをひとまわり上回るいまの目線。なんて見晴らしがいいのだ。

ちなみに上着から見えている人間の手は段ボールで作ったダミーである。本当の手は黒い手袋をして竹馬を握りしめている。

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手の表情をつけられる針金入りだ。いろいろ用意した
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普通に手を出すと手が4本になったみたいで楽しい。副産物としての四妖拳

キリンケンタウロス、歓声を浴びる

しばらく公園を悠然と歩いていると、想定外の事態が起きた。なんと園内の子どもに大人気だったのだ。

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「キリンだ!」「キリンだ!」という子どもたちの声がこだまする

両手がふさがっているため手を振ることもできず「キリンだよー」と声で応じる。キリンではない、キリンケンタウロスなのだが、そんなことはいいのだ。うれしい。

5歳くらいの男の子がこちらを見上げながらキラキラした目で「おもしろーい!」と叫ぶ。世界中の人間がみんな5歳ならどんなにいいかと思った。大肯定時代の幕があけたのだ。

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女の子はクルクル周囲を回り出す
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どこに行ってもついてくる

こんなに子どもにチヤホヤされることがあるのか、というくらい持て囃され、記事を書く前の時点でポーッとしてやりきった感に満たされてしまった。
だめだだめだ、半人半獣と言えども〆切は守らねばならない。

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少年よ、これがキリンケンタウロスだ

そんなことよりどうだろう、トルーさんのお子さんも興味を示してくれたろうか。

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あー、ハトのほうがいいよねぇ
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トルーさんは終始困惑しながら拍手してくれた

あと、途中からトルーさん一家がざわついているなと思ったら、

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トルーさんのお父さんがたまたま公園に来てた

「散歩してたら偶然」らしい。そんな奇跡があるのか。親子3代の前でケンタウロスになった人なんてなかなかいないと思う。

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見届け人のトルーさんにむりやりコメントを寄せてもらった

いい情操教育になったなら良かった。
おれはついにキリンケンタウロスになることができた。2018年もいい年だった。

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それではまた

…と、ここまでが本編だったのだけど、編集部より「やたら満足そうだから"ケンタウロスになったおれ"の写真集ページ作ってもいいよ」との温かい言葉をもらったので、次ページ完全におまけの写真集をお送りします。45.jpg

以下、キリンケンタウロス写真集

そんなわけで写真がたくさん撮れたのでおまけです。

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キリンケンタウロスの朝は早い
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上着の前を留めてもらう。キリンケンタウロスになるにはみんなのチカラが必要だ
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このあと後ろ脚が岩に絡まってパニックになります
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まいったな、紅葉がこんなにキリンに合うなんて知らなかった
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少しでも胴体が下がると後ろ脚を引きずってしまうので調整が難しかった

公園が変な空気になったらどうしようと危惧していたけど、みんな優しかった。

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左からトルーさんのお父さん、トルーさん、キリンケンタウロス
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竹馬に乗る息子を笑顔で見守る父、という名シーン。竹馬はいいぞ
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男の背中
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えー、本当に以上です。ありがとうございました

次回は上半身裸で眼鏡を外して挑みます

キリンだキリンだ、と子ども達に褒めそやされたが、トルーさんの奥さん情報によると、奥でブランコをこいでいた女の子が「眼鏡かけてるからキリンじゃない」と話していたらしい。判断基準は眼鏡の有無だったのか
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大人が竹馬に乗ると”何かやり遂げたような顔”になってしまう
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