特集 2020年4月6日

金武町でキンチョウを探す

これがキンチョウ

沖縄には『キンチョウ』という名の植物が生えている。
そして奇しくも沖縄県には『金武町(キンチョウ)』なる町もある。
じゃあ金武町にキンチョウは生えているんだろうか?探してみよう。

1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:まっすぐな針で魚は釣れるか

> 個人サイト 平坂寛のフィールドノート

すぐ見つかったしネタかぶってたわ

さて、まずは今回の主役について説明を。このキンチョウ(錦蝶)とはマダガスカル島原産のベンケイソウ科に属す植物で、もともと沖縄に自生していたものではない。
資材やなんやに紛れて渡来したり、園芸用に持ち込まれたものが逸出。沖縄や小笠原など温暖な地域に外来植物として定着しているのだ。
特に沖縄本島では海沿いから市街地まであちらこちらでごく普通に見られる存在となっている。

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今回の舞台である金武町はタコライス発祥の地としても知られる

で、今回はこいつらを同名の自治体である金武町で見つけようぜ、というどうしようもなくあたまわるい感じのダジャレ記事である。ホントそれだけの記事。

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とりあえず「金武入口」のバス停に来てみたが…

ところが!取材開始時に「まさかな…」と思って「金武町 キンチョウ 植物」検索してみたところ

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ピンポイントでネタかぶってたー!!

あったァーー!すでにそのまんまな記事がネット上に出ていたァー!!
しかも写真も綺麗で僕が撮影できなかった花の画像も載ってるし、金武町以外の地域で見られたキンチョウの写真まであるゥー!
もうこの記事を世に出す意味ほぼねェー!

…いやいや。
生物を、自然を見る目というのは人によって千差万別よ。苦労しつつキンチョウを探す過程で、何か発見があるやもしれん。とりあえずここ『金武入口』のバス停をスタート地点として、僕なりにキンチョウを探してみ

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えっ
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あっ
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ああ…これだわ……。

探してみ…たらいきなりあったわ…。すぐそこの道端に生えてたわ…。
 

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めっちゃ…
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めっちゃ生えてるやんに…

なんつーかもう…。
「探すぞ!」って意思を表明する前から視界に飛び込んできたわ…。

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このまだら模様の多肉植物がキンチョウです
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金武町のキンチョウです

あー…。
えーっと…。
取材終了です。お疲れ様でした!!

もはや本記事のオリジナリティをひねり出す前に見つかっちゃったぜ金武町のキンチョウ。やべえ。記事成立しないんじゃない?これ。

でもね!こんなに簡単に見つかっちゃったのはただの偶然ってわけではないんです。

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グレーチングの隙間にみっちりキンチョウ!そう、こいつらめっちゃタフなんすよ。

そもそもこのキンチョウはとても頑丈で高熱や乾燥に強い。そうした過酷な荒地でも生育できるよう進化した植物なのだ。
そのため、灼熱の沖縄市街地でもコンクリートやアスファルトの隅までたくましく生き抜き、分布を広げている。
つまり、人目につきやすい道端こそが彼らにとって暮らしやすい環境ということ。即座に見つかったのも納得だ。

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家庭菜園だったりプランターにもよく侵入する
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キンチョウはこういう人手が入った、けれど適度に荒れた環境が好きなんだ
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大きく育ったキンチョウ。独特の妖しい雰囲気がある植物だ。
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普通、植物の芽は茎の先端から伸びるものだが、キンチョウは葉の先からも芽を出す。こういう芽を「不定芽(ふていが)」という。

 
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不定芽を軽く触ってみると…

 

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不定芽はこんなちょっとした刺激でぽろぽろと落ちて飛散する。この一つ一つから根が伸びて新しい株になるのだ。この特性ゆえに沖縄中に分布を広げられたのだろう。

なお、今回は見られなかったがキンチョウは毒々しいほど赤く綺麗な花を咲かせる。
エキゾチックな草体とあいまってとてもユニークでミステリアスな姿を見せてくれるので興味のある方は画像検索をしてみてほしい。

また、キンチョウは有毒で食用には適さない。
と言っても極端に辛いと苦いと言った特徴のある味ではなく、無味に近くわりと食べやすい味である。肉肉しくて食いでがありそうに見えるが、だからこそ腹が減っても手出ししないよう気をつけたい。

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金武町観光してきたよ

はい。以上でキンチョウについての話は終了です。
普通に金武町にキンチョウ生えてたね。いやー、ダジャレ成立してめでたしめでたし。

でも時間が余っちゃったし、せっかくなので金武町をさらっと観光してきたよ。

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金武町には米軍基地(キャンプハンセン)がある。それゆえ、米国文化が色濃い街並みが見られる。
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GATE1こと1番ゲート。

まず、取材を介した「金武町入口」はキャンプハンセンの1番ゲート(GATE1)のすぐそばで、裏手には異国情緒がこれでもかと溢れる金武町「新開地」が広がっている。

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新開地とタコライスとチーイリチャー

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おお異国情緒…
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日本語と英語が入り混じる通り
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金武町と聞いてこの風景を思い浮かべる人も多いはず
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ちょっと入るのに勇気いるかも
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お店の一軒一軒が、そして街全体がいい味出してる
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タトゥーショップも多数

 

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は、入ってみたい…!ミリタリーカットされてみたい!でも休業日だったし僕は文民なので断念。

半分アメリカだな…という新開地の街並みを歩いているとこんな看板が。

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タコライスはここ新開地で生まれた料理なんだそうな

「ようこそ、タコライス発祥の地、金武町『新開地』へ」
ああ、そうか。タコライスはここ新開地の今はなき「パーラー千里」で誕生したメニューだった。
今日はそのパーラー千里の姉妹店である「キングタコス」でタコライスを食べよう。

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金武町といえば!タコライスといえば!キングタコス金武本店!略してキンタコ。

 

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最近はイートインでもプラスチックパックで提供されるキングタコスのタコライス(数年前はお皿に盛られて出てきてた)。デカ盛りすぎて明らかに収まりきっていない(今回注文したのは白米の代わりにチキンピラフを使用したタコフライライスチーズ野菜 900円)。

なんかもう今さら僕が語る必要もないだろうが、キンタコのタコライスは美味い。金武町民の、いやもはや沖縄県民のソウルフードである。
味はとにかくおいしい。そして大の男でも腹一杯になるデカ盛りぶり。
炭水化物とタンパク質と脂肪と塩分とスパイスと野菜を一気に大量摂取できる、ややもするとゴリ押しな美味さ。
こういうのがイイんだよなッ!!

…しかし、金武町にはこのタコライスに勝るとも劣らないガッツリ系名物料理が存在している、

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『キングタコス』お隣の居酒屋『じんじん』には「チーイリチャー有ります」の看板。これぞ金武町が誇るもう一つの、よりトラディショナルなソウルフード!!!
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よくよく探すと街のあちこちにあるチーイリチャーの文字。知らない人には謎でしかないが、知ってる人ならよだれがだだ漏れ。

それがこの『チーイリチャー』だ!!

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これが豚の血の炒めもの、チーイリチャーだ!!濃くて重くてうまい!!(久松食堂さんにて)

チーイリチャーとはブタやヤギの血液を肉、ニンニク、野菜と炒めた沖縄独自の料理である。

養豚が盛んな金武町ではブタのチーイリチャーが有名だ。これがもう、ほんと美味い。
語彙不足が否めないが、もうほんと美味いの。

もう素材の味も味付けも脂っ気もニンニクもビジュアルも、濃い濃い濃い濃い濃い!!
すげえ美味い!でも濃すぎて食べた後は胃がえらいことになってしばらく動けなくなる!タコライス以上にHeavy!
これをランチに食べて午後も働く金武町役場の人たちすげえわ…(職員さんたちの人気メニューらしいです)。

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沖縄そばの麺にチーイリチャー、レタス、チーズ、刻みニンニクを乗せた久松食堂「チースパ」!!濃くて重くてうまい!!

最近は『チースパ』なる派生メニューを提供する店も現れた。これもガッツリ美味くて、食後動けなくなるのでおすすめ!

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特産品『田芋』を使ったスイーツ

さらに新開地周辺を散策しているとこんなのぼりが。

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田芋チーズケーキに田芋パイ!これがまたうまいんだわ…

金武町の名産、『田芋』を使用したスイーツだ。これがまた美味いのよ。

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その他、田芋まんじゅうなど金武町特産の田芋を使ったスイーツを製造販売している名店「きん田」

田芋とは…
水田で栽培される里芋の一種で、南方から伝わったかなり古い作物です。水田の中で子芋を次々と増やすことから子孫繁栄を連想させるので、沖縄では正月や盆などの行事料理には現在でも欠かせない食べ物です。独特の粘り、風味がなんともいえないほどあと引くうまさです

……って店内に掲示されてる張り紙に書いてあったよ↓。

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店内の張り紙。ミズイモとも呼ぶらしい。

今回は金武町内のみならず那覇空港にも出店している有名店「きん田」で田芋パイと田芋チーズケーキを買って帰った。
まあこれも美味いからさ。金武町へ行ったら、いや沖縄へ行ったら食べてみるべし。

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これが田芋パイ。サクッとしてホクッとして甘〜くてうめえ〜んすよ。

 

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これが田芋チーズケーキ。しっとりしてねっとりして芳醇でうめえ〜んすよ。

なお、田芋はお菓子だけでなく唐揚げやどぅる天(田芋をすりつぶしてドゥルドゥルさせたものを揚げたおいしいやつ)などにしておかずやおつまみなどとして食べられることもある。

そうだ、ついでに田芋を栽培している様子も見ていこう。

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金武町東部、億首川下流域に広がる田芋畑。いや、こういう場合は田芋田と表すべきなのか?

田芋はその名の通り、水を張った田んぼで育てられる。
沖縄本島、特にここ金武町はじめとする中部地域では水田が広がっていても稲作ではなく田芋栽培地帯だったりすることが多い。

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すくすくと育つ田芋。見ての通り里芋の仲間だ。

 

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マングローブと海とガジュマル

ああそうだ。
金武町といえば億首川のマングローブも外せない。
ちょうど田芋畑(田芋田?)の密集地のそばにそれは広がっている。

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田芋畑のそばを流れる億首川の河口には見事なマングローブが広がる。

素晴らしい景色!
休日にはカヤック体験会なんかも催されている。
付近にはキャンプ場もあり、金武町民のみならずアウトドア派ウチナーンチュの憩いの場となっている。

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田芋畑のそば、マングローブのほとりにはネイチャーみらい館なるキャンプ場も。

 

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タコライスとチーイリチャーと田芋スイーツを食べた後はマングローブを見ながら、潮風にあたりながらキャンプ…というのも乙だろうなぁ(残念ながら僕は日帰りでした)。

 

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ネイチャーみらい館には沖縄のマングローブのアイドル、トントンミーこと南トビハゼの顔はめ看板が。

 

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シオマネキと怪人ノコギリガザミ男(?)の顔はめも。挟まれ役にもなれるぞ!なりたいか!?

もちろん、海も綺麗だ。
金武町の位置する沖縄本島東海岸は西海岸に比べてサンゴの発達が控えめで非常に遠浅なのでダイビングこそあまり盛んでないが、潮干狩りや波打ち際でチャプチャプやる海水浴にはもってこいである。

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金武町は海も綺麗。遠くに見えるのは沖縄電力金武火力発電所。県内でもトップクラスの発電量を誇る沖縄のエネルギー庫だ。

……あ。この記事、植物の記事だったね。
じゃあ最後に金武町が誇る巨大植物である伊芸地区の『フンシーガジュマル』を紹介しよう。

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原点に戻って植物でシメ!伊芸地区にそびえるガジュマルの巨木も見もの。樹齢約300年とも言われる金武町指定天然記念物だ。

フンシーとは風水のことで、かつてはこの木のたもとでノロ(女性の祭司)による祭事や地域の行事が行われていたという由緒ある巨木なのだ。

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幹周3.9メートル、樹高11メートルとも。ご立派!!

マダガスカルから来たキンチョウではなく沖縄在来の植物の魅力を味わいたいという方は、ぜひマングローブとこのフンシーガジュマルを見るべし!!


金武町いいとこ一度はおいで

と、こんな具合に文化面でも自然面でも興味深い事柄の多い金武町。ぜひ沖縄観光の折にはふらっと訪れてガツっとタコライスやチーイリチャーや田芋を食べてみてほしい。
もちろん、この記事ではとても見所の全ては書ききれない。他にも金武観音寺や金武鍾乳洞の古酒蔵などたくさんの素敵なスポットが……
あっ。主役はキンチョウだったね。あの植物はキンチョウに限らず、那覇でも名護でもどこでも見られるよ。沖縄に出向くことがあったらぜひそのたくましさとしたたかさを見てみてね。

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「気味が悪い」という人もいるけれど、よくみると不思議な柄がなかなかかっこいい植物だと思う。でもできればマダガスカルで見てみたかったよね。

 

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