日本版キムワイプがあってよかった
キムワイプという名前は、キンバリー・クラーク(Kimberly-Clark)というアメリカの製紙会社が作ったことからきているらしい。
ところで、本家キムワイプのデザインが気になったので検索してみたところ「まあ、そんなもんだよね」という感じの見た目だった。
日本版キムワイプをデザインしてくれた人に感謝しながら眠りたい。
最初にキムワイプを見たのがいつだったかは覚えていないが、かれこれ10年以上前なのは間違いない。
キムワイプを一目見た瞬間から、今日までずっと内心思い続けてきたことがある。
キムワイプの箱と、私が住んでいる京都市の市営バスのデザインが似ているのである。
キムワイプとは、簡単に言うと実験室などで使うティッシュペーパーである。普通のティッシュに比べてけば立ちにくかったり、油や水を吸い取る性能が高いので、実験器具などを拭くのにずっと都合がいい。
だから、理系の人はだいたいキムワイプを見たり使ったりしたことがある。
もっと言うと、理系の人はだいたいキムワイプのことが好きである。
相手が理系の人なら(そしてたまに文系でも)キムワイプの話題を振ればだいたい楽しそうに話に乗ってくる。いわば鉄板ネタなのだ。
実験室の一消耗品であるキムワイプが、ラボ生活のアイコンのような扱いを受ける理由は、ひとえにその秀逸な外箱のおかげに違いない。
市販の箱ティッシュと比べてずんぐりむっくりした形と、その表面をひた走る淡い緑と濃い緑、すなわちキムワイプ・グリーン(勝手に命名)の大胆なライン。ラボの備品がミスコンを開いたら、万年首位で殿堂入りすること間違いなしの可愛さなのだ。
このキムワイプは東急ハンズで買ったものだが、どうやら私が知らないうちに50回目の誕生日を迎えていたらしい。
可愛いなどと言ってしまったが、実は向こうの方がはるかに先輩なのだ。おめでとうございます、キムワイプ先輩。
眼鏡拭き代わりに使ったりするとレンズに細かい傷がついて大変なことになる(らしい)。
いつぞや「キムワイプをなめると甘い味がする」という話を聞いたことがあるので試してみたが、全然そんなことはなくてがっかりした。
「見た目が可愛いから、なめたら甘い味がするだろう」なんて、変態チックな都市伝説を最初に考えたやつの顔を見てみたいものだ。
名文である。「キムワイプ冥利」などという言葉は、寝ても覚めてもキムワイプのことを考え続けた人からしか出てこないだろう。
キムワイプの説明が済んだところで、似ている(と筆者が思っている)京都市バスの方を見ていこう。
こちらも、淡い緑に濃い緑のラインが走ったキムワイプ・グリーンと同じ配色で、瓜二つとは言わないまでも他人の空似くらいには収まっていると思う。
どう?似ていると思いませんか?
どうですか?
目が慣れてこない人のためにコラージュ画像を作ってみた。
濃い緑色のラインに合わせて配置してみた。
ほんの少し継ぎ目がずれているが、ほぼキレイに収まった。パソコンの前で、ただ一人よくわからない達成感に包まれた。
若干苦しい。濃緑のラインを合わせるのに、側面の時の3倍の時間がかかった。しかし大切なのは、両者ともに曲線があるということだ。
つい先日、スマホをいじりながら駅のホームで電車待ちをしていたところ、視界の上端を巨大なキムワイプが横切った。
ついにおかしくなったのかと思って顔を上げたら、まさしくキムワイプ・グリーンの電車がホームに入ってきたところだったため、安堵した。
京阪電車にはたまにしか乗らないからそれまで気づかなかったのだが、ここでもキムワイプ・グリーンで塗られた乗り物が日夜走っていたのだ。
先ほどと同じように適当に合成してみたのだが、市バスの時よりも違和感がない。というか、美しいとさえいえる溶け込みようにゾクッとした。昆虫の高度な擬態を見ているような、そんな気分だ。
「ふと気がつけばいつもそこにある......」
50周年の言葉が、違うニュアンスを帯びてくる。
(過去の記事によると、他にも日本全国でたくさんのキムワイプ・バスやキムワイプ電車が走っているようです)
素敵な造形美に出会ったら、とりあえず工作にできないか考える。
キムワイプにそっくりなバスや電車が街を走っているんだから、キムワイプだって走りだしてもいいはずだ。
なんだか変なことを言っているようだが、工作というのは一種の愛情表現なので、別に理屈が通っている必要はない。
本当に工作をしたと言っていいのか不安になるくらいシンプルだ。が、ネタが素晴らしいなら手を加えるのは最小限にしたほうが良いのは自明である。
なんだこれ!楽しい!
動画だけでは伝わりにくいと思うが、キムワイプが動いただけなのになんなんだこの面白さは。
自室の床をキムワイプが走り回っている。このときめきは、ルンバなどの比ではない。もちろん、ルンバと違って、たまに足元に呼び寄せて鼻をかむくらいしか使い道はないのだが。
「うちがネコを飼っていればよい遊び相手になったかもしれないな」
そんなことを思った。
硬いキムワイプでこすったせいで赤くなった鼻をさすりながら。
ここで終わってもいいのだが、蛇足になるかもしれないと思いつつ、もう少しだけ手を入れてみる。乗り物には、お客が必要だと思ったのだ。
この電球はキムワイプが前進しているときしか点灯しない。なんだかエスプリが効いているというか、嫌味な気がしないでもない。アイデアは、足踏みしていようが後ずさっていようが降ってくるときは降ってくるものだろうに。
電車やバスに似ているからキムワイプを動かしてみた。動くキムワイプは、動かないキムワイプよりもはるかに面白く、愛嬌といえるものさえあるような気がした。ただし案外激しく走り回るので、乗せられている方は大変そうである。
最後に、キムワイプが小動物的に野外で走り回る姿を4本立てでご覧ください。
キムワイプという名前は、キンバリー・クラーク(Kimberly-Clark)というアメリカの製紙会社が作ったことからきているらしい。
ところで、本家キムワイプのデザインが気になったので検索してみたところ「まあ、そんなもんだよね」という感じの見た目だった。
日本版キムワイプをデザインしてくれた人に感謝しながら眠りたい。
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