何をどう着るべきか?永遠の問いについに答えが
たまにトークイベントに呼ばれる機会があり、いつもよりちょい良い服など着て出演したりするのだけど、果たしてこれでいいのかと迷う。どうせならもっと自分の色を出すとか、「あの格好ならあの人ね!」と一目でわかるような衣装を着たい。半裸+テンガロンハットのザコシショウ、ほどでなくていいが、アイデンティティをちょっとした工夫で表明したい。
そんな折、デニムの着物というものを知る。なるほど、着物にもデニムという概念があるのか。本式のだとハードル高そうだけどデニムなら…と傾きかけた頃、もっと衝撃的な文字を目にした。その名も「クイックキモノ」。都内のとある着物屋さんが紹介していたデニム着物で、例の「40秒で」と無茶振りをされても、これならパッと着て出動できる、らしい。これは…超ズボラな自分にも合うのではないだろうか。
まずは、その今回お世話になる着物屋さん「ゆめこもん」さんの、最近立て続けにバズった着物ツイートを紹介しておいたほうがいいだろう。
「それはもう着物じゃない」だって?俺にとってそんな境界線はどうでもいいんだ。
— きもの屋 ゆめこもん (@yume_comon) November 27, 2019
妙にカッコイイよね…
不思議と可愛いよね…それでOK。
どんなにAIが進化しても、人は何かを纏う。素っ裸では歩けないからね。だったら自分好みのファッションを楽しもうよ。
~ちょっと早い Merry X'mas 店主より~ pic.twitter.com/JP1HHYJQMJ
ドーラおばさんに「40秒で支度しな!」と急かされても、これならイケるかな。
— きもの屋 ゆめこもん (@yume_comon) February 14, 2020
“おはしょり”を作らず、さっと羽織ってベルト式の帯を締めるだけ。ポケットも付いて便利だね~♪
デニムの「クイックキモノ」は1万円(+税)。
かなり注目を浴びています。#デニム着物 #対丈着物 pic.twitter.com/pdau9OkPWa
ほら。着物に興味のあった人も、そこまでじゃなくなんとなく気になってた人も、何か感じるものがあるのではないか。「自由区」って実はここだったんじゃないか。
「おはしょりを作らず」「ベルト帯締めるだけ」「ポケット付き」等々、魅力的なコピーが並ぶ。浴衣着るとき難渋した経験のある「おはしょり」(裾を調節する儀式)とか「帯結び」(一度解いたらもうわからない)が、なくてもいいってんだから!
というわけで早速(Quickly)、試着をお願いしに向かった。
さて実はこの「ゆめこもん」、乙幡と他のお仕事でご縁のあった方がご夫婦で営んでいる。だが訪問はこれが初めてだ。まさか自分が、浴衣でもなく晴れ着でもない、普段使いの着物を試着するために着物屋さんを目指そうとは思わなんだ。人生って、生きてみるもんだなと思いますね。
池袋マルイにほど近い、雑居ビルの3階にその店はある。外から見えないので通りすがりのお客さんがポッと入って来るのでなく、ここを目指して来るお客さんばかりなのだ。
反物、帯、履物…もちろん普通に艶やかな着物もあるが、あまり見かけないようなものがたくさんあって目を引く。
この日はその店主、中村さん(以後、通称「なかどん」で呼ばせていただく)と、着物コーディネーターとして活躍中のYokoさんにいろいろ教えていただくことになっている。読者への挨拶がわりに、お2人のデニム着物コーディネートからご覧いただこう。
女性の私が着るからと、この日特別にお越しいただいたYokoさんのコーディネイトも、いい。
さあ、気分も盛り上がってまいりました。早速私たちに、クイックキモノを、さあさあ。
ここまで着て、ちょっと首元が寂しいという感じだったので、家からしてきたストライプのストールを巻いてみる。
ここで、「人生変わるよ、本当に」風フォーマットで仕上げたビフォーアフター動画もご覧ください。担当・石川さんが一生懸命つなぎました。
静かな充実感が、乙幡の胸に込み上げる。なんでしょう。洋服の試着するときは「あーあー、こう来ましたか、あーサイズね、ちょっと違うかな、じゃそっちを行ってみますか」とご存知な感覚はあるけど、それと全然違う、知っていたようで全然知らない、みたいな。祖母の娘時代にタイムスリップしたら思いの外モダンな日々を送ってました、みたいな。文才ないな。
不思議な感覚ではある。
せっかくなので、この日同行した担当石川さんの人生も変えてみようと思う。
ちなみに男性の場合、おはしょりとか元から不要なので、一般的な着物も全て「クイックキモノ」なのだそう。いいなぁ。
なぜこういう着物屋さんを?
ザ・モデル慣れしてない人々だったが、一気に雰囲気がガラッと変わっただろう。特に高価なものを着たとか込み入った過程を踏んでないのにだ。
しかしデニムのクイックキモノがなんだか面白いのはもとより、この店自体もあまり和服屋さん然としてなくて面白い。
なかどんさんは、なぜこういう着物屋をやろうと思ったんですか?
そこから少しづつ、着物イベントとか動画とか作るようになって。
着物はアパレル
いわゆる”キモノ警察”(着物の着方に厳しめな方々)も、デニム勢には何も言ってこない(笑)もちろん、デニムだってきちんと着物らしく着ることもOK。
俺が言いたいのは「着物ってアパレル」なんだよ。普通に普段の服として、どんどん楽しんで着てほしいわけ。
そうなのだ。デニム着物とかクイックキモノを軽やかな入り口として、まずそこで楽しんじゃう。そしてそこから深く入ってもいいだろうし、そのままでもいいだろう。
着物の入りにくさとして考えていた、裾の長さや結び方などのたくさんの不確定要素。無数の目盛りを自分で整えていかなくてはならない(洋服はボタン留めるだけだ)。そんな不確定要素を飛び越えていいジャンルが着物にあったとは、なんだか世界が一気に広がった。
そして着物フォーマットという、かっちりしてそうな枠組みがあるからこそ、そこからハズしたアレンジがすごく斬新で光って見える。「制約の中の自由さ」という言葉が頭の中をグルグル回っている。
いずれ私も、自分のデザインした布でクイック帯作るぞ、とまで思えてきた。もしかして自由な生き方ってやつを考えるとき、着物が新たな突破口になったりして?などとそんなことを真面目に考えております。
なかどんさん、Yokoさん、ありがとうございました。
40秒で支度できるのか
さて私、このクイックキモノ一式を買って帰り、40秒で支度できるかどうか家でやってみた動画がこちらになります。
5回目くらいのトライでなんとか40秒ギリギリで出発できました!細かい調整は、道中コソコソやればいいや。
まとめ
記事では触れられなかったが、「ゆめこもん」では布の持ち込みで着物をあつらえてくれるそうで、今までにも男性客が日暮里の布屋さんで選んだのを持ち込んだり、インドのお土産バティックだったり、染色の卒業制作品だったり、自由度もここに極まれりという感じだ。気になった方は「ゆめこもん」さんのツイッターなど御チェックください。
お2人とも「自由でカジュアルで遊びたい人向けの、着物よろずやご相談窓口」とのことですので、さあさあ奥へどうぞおあがんなさい。
ゆめこもんツイッター
@yume_comon
HP
https://yumecomon.com/
Yokoさんツイッター
@405yangzi0206
インスタ
kimonoantiquerose405
【筆者告知】
昨今のコロナ禍で中止にならなければ、4月11・12日のデザインフェスタに「G-47妄想工作所」として出ます。
そして4月17〜26日は西小山「umi neue(海の家)」にて、初の張り子作品の展示をいたします。在廊日時などはツイッター「@otsuhata」を御チェックくださいまし。