特集 2025年6月19日

かたつむりリアルフィギュアの衝撃。京都府木津川市にある「かたつむりミュージアム・らせん館」にお邪魔してきた

国内だけじゃない、海外にも広がるカタツムリの輪

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中国のカタツムリたち。
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抹茶ミルクみたいな殻の色がまぶしい、パプアニューギニアのカタツムリ。

ーー海外のカタツムリもありますね。これも採集に行かれたのでしょうか?

日本国内はだいぶ行ったけど、海外はほとんど行けないですね。このあたりのは、海外の博物館とか研究者とやり取りをして、研究用の殻を送ってもらって、フィギュアにしたもののうちの一体をお返しするというプロジェクトをやってるんです。

マレーシアは数少ない、自分で海外採集に行った国です。知人の研究者のつてでキナバル山っていう山を案内してもらって。生きた状態では持ち帰れないので、現地で標本にしてしまって。

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鮮やかなレモン色の殻がきれいなマレーシアのカタツムリ。
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そしてこれは、殻が退化して小さくなった、カタツムリとナメクジの中間の陸貝。マレーシアのキナバル山で見つけたもので、現地でフィギュア化して持って帰ってきた。

ーー外国産はカラフルだ。

あと、最近、発光カタツムリっていうのが新しく見つかって、殻から体が出入りするあたり「襟(えり)」と、地面と接地する腹の部分「腹足(ふくそく)」、このへんが発光する。

ーー光る!カラフルなぐらいで驚いてる場合じゃなかった。

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発光するカタツムリはこれまで、1943年に1種だけが確認されていたが、それから約80年を経た2020年に、新たに4種が発見された。

中部大学の発光生物の第一人者、大場教授に仲介頂き、タイのチュラロンコン大学から送っていただいて、やっと1個だけフィギュアにしました。

蛍みたいに、苦いから食べないでっていうアピールが、光る理由としては一番妥当かなっておっしゃってましたけど。タイも行ったことないですけど、行きたいなとは思ってます。

やることが多くて、なかなか進まないですね。

ーーしかも研究が進むにつれてやることが増えますね。これはたいへんだ。

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収集は果てしなく続く

展示スペースの一角には、大きなガラス瓶が並べられていて、中には生きたカタツムリが。

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ガラス瓶の内側に張りついたカタツムリを裏側から観察するのもまた一興。

 

ーーこれは珍しい種類なんでしょうか?

いや、今あるのはこの近くで採集できるものだけです。

ここはもともと農家だった古い家を改築して使っているんですが、地震がきたら、揺れがひどいと倒壊する恐れがあるので、あまり遠くの種類を飼っていると逃げ出した時が怖い。

ーーたしかに、外来種だけじゃなくて国内移入種(※)も在来のカタツムリの脅威になりますからね。

※日本国内の別の場所から人為的に移動させられて、定着した種

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古民家を最大限活用した展示スペースは、「古いものが好き」という河野さんの趣味を反映したものだ。いわゆる博物館っぽさの薄い、居心地の良い落ち着いた空間に仕上がっている。
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廃棄される予定だった図書館のカード棚をもらってきて展示に使っているとか。ひきだしを開けてみると、
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ここにもカタツムリが。何時間でも見ていられるくらいの展示物があるのだが、カタツムリの果てしない多様性の前では、これでもまだまだ道は半ばなのだ。

僕もお世話になってるんですが、阪神貝類談話会ってところがあって。そこに所属しておられたカタツムリ採集の草分け的な大先輩の方が生前、「今後はどんどん都市化が進んで、カタツムリも絶滅種が増えるから、採れるうちに採っときなさい」っていうことをおっしゃっておられたんです。

ーー貝は移動能力が低いから、多様化する反面、環境が変化しても逃げられずに絶滅することが多いと聞きます。

そう。僕がカタツムリを始めた頃っていうのは、すでに環境を守りましょうとかっていう時代に入ってて、あんまりたくさん採ったりはできないし、そもそも殺生はなるべくしたくないっていうのもあった。

採集による影響を最小限にとどめつつ、日本産800種に近づけて、こういう絶滅するかもしれないカタツムリを、生きてる時の様子でこう再現していきたいなと。そういう趣旨でここはやってます。

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小指の爪よりも小さいカタツムリも再現してしまう執念に脱帽!

2階にはカタツムリに関わる品々がところ狭しと並ぶ

紹介しきれなかったのだけど、2階部分は世界中のカタツムリグッズを集めた展示室になっている。カタツムリの外観は人間の想像力を刺激するらしく、ところ狭しと並んだカタツムリ関連の品々は圧巻だ。

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いろいろある中で一番気になったのはこのスペイン・アンダルシア地方の編み工芸品。どこかで似たものを見たことがあった気がしたのだが、
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帰宅してから思い出した。同じくアンダルシア地方産の牛のオブジェを見たことがあったんだった。

そういえばカタツムリは漢字で「蝸牛」って書くし、ひょっとして人類は、カタツムリについて洋の東西で同じ発想にたどりついていた......!?

河野さんのこだわりが詰まった「カタツムリミュージアム らせん館」、小さいながら一度では見切れないくらいの展示があり、本当にいろいろなことに気づかせてくれる場所だった。気になった人にはぜひ訪問することをおすすめしたい。

 

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カタツムリミュージアム らせん館

〒619-1143 京都府木津川市加茂町観音寺垣添6-1

開館時間:10:00~17:00(入場は16:00まで)

入館料:500円(税込み)

HP:https://rasenkan.com/

TEL:090-4287-4988

駐車場あり

来館時はHPまたは電話で要事前予約

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編集部からのみどころ
いいインタビューでした。こーだいさんも生物好きだからこそ聞けた話もあると思うんですよね。知識面もそうなんですけど、やっぱり聞き手としての興味の強さが違うじゃないですか。
文中ではインタビュアーの発言はかなりあっさりめに編集されていますが、それでも「ええ、採集はほんと、ワクワクしますよね」とか、こーだいさん側のテンションの上昇が漏れ出ているのが良いです。そのへんにも注目してお楽しみください。(石川)

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