特集 2025年12月24日

新しいカラオケの楽しみ方、カラオケ前口上選手権!

昔の歌番組、特に演歌やムード歌謡には前口上がつきものだった。

「今宵一羽の渡り鳥 飛んでいきます あなたの町に。私の恋があの海を 越えていく日は 来るのでしょうか。それでは聞いてください。石井公二で『渡り鳥慕情』」

司会者が七五調の美文をイントロの尺ピッタリに語り終えると、静かに歌手が歌いだす。歌手は勿論、前口上を語る司会者も気持ち良さそうだった。いつか自分もやってみたいと思っていたが、最近の歌番組ではあまり見なくなった。

ある日、思いついた。「あれ、カラオケで出来るじゃん!」

1980年、東京生まれ。片手袋研究家。町中で見かける片方だけの手袋を研究し続けた結果、この世の中のことがすべて分からなくなってしまった。著書に『片手袋研究入門』(実業之日本社)。

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まったく新しい競技が今、始まる!

ある日の夜、JOYSOUND品川港南口店514号室は静かな熱気に包まれていた。

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選手を紹介します。左から石井(筆者)、DPZライター唐沢むぎこ、架空CMソング作家やなせ京ノ介

勿論「前口上?ああ、得意です!」なんて人はそうそういない。私自身初体験だ。それでも競技としてちゃんと成立させてくれそうな人を思い浮かべたら、このメンバーになった。唐沢さんは20代なのに古い文化にも造詣が深いし、落研出身なので口跡も良さそう。

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唐沢さん、参考資料として『流行小唄集』という謎の古い冊子を持ってきていた。知的に戦略を構築してきそうだ

やなせさんは「キシリ徹」という架空のCMソングを作るユニットをやっている。過去の作品の中には、存在しない地方都市のカラオケ店のCMもある。ライブ慣れしてるので声量もばっちり。こちらも期待できる。

結論から言えば私の読みは的中した。世界初開催にも関わらず「カラオケ前口上選手権」は大盛り上がりとなったのだ。これからその様子をじっくりリポートしていきたい。

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果たしてどんな大会となったのか?
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ルール&審査員発表

ルールを説明しよう。挑戦者は「規定部門」と「チャレンジ部門」の2回前口上を披露し、その合計点を競う。

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採点はふたりの審査員が行う。

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JOYSOUND佐藤さんは審査員&歌手役。我々の前口上を聞いてから実際に歌ってもらい…
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どのくらい歌に入りやすかったかを50点満点で採点
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DPZ林編集長は…
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5つのポイントをそれぞれ10点、計50満点で総合得点を採点。佐藤さんと林さん、それぞれの点数の合計が得点となる
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1回戦:規定部門『ライラック』Mrs. GREEN APPLE

それでは早速規定部門から。佐藤さんが事前に課題曲として指定したのは、2025年、カラオケで最も歌われた曲としてJOYSOUNDの年間ランキングでも1位に輝いたMrs. GREEN APPLE『ライラック』。前口上は三人とも既に考えてきている。

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前口上は演歌などのイメージが強いので少々意外な選曲

約25秒という短い前奏時間に、三人はそれぞれどんな物語を綴ってきたのか?まずは言い出しっぺである私の試技を動画でご覧頂きたい。

難しい!家で練習もしてきたが、実際に歌い手を横にやってみると全然違う。文字を読み上げるのに精一杯で、感情をこめて抑揚をつけるなんて至難の業だ。

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さすがに暗記は無理なのでプロジェクターで前口上を投影している
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尺調整も難しくて歌い出しにかぶってしまった

唐沢さんとやなせさんはどうだろう?

落語経験者とミュージシャン。私の前口上と比べると、明らかに発声が良い。できると思ったから呼んだのだが、でき過ぎである。

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焦りのせいで笑顔が引きつっている私

それにしても同じ曲を題材としてるのに、「トリオ」「野球」「青りんご」と前口上のテーマがまったく被らなかったのが面白い。

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規定部門:採点

それでは1回戦の採点を見てみよう。

・石井

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林さん40点(うち6点ボーナス)佐藤さん33点、合計73点

林:節回しは雰囲気あったが、尺がおさまってない。Mrs. GREEN APPLEのトリオという要素だけを抽出したのは乱暴だけど独自性はあった。ミセスはTMネットワークを経由しなければ伝わらない存在ではないです。トップバッターなのでボーナスで6点追加。

佐藤:「なんのこと言ってるんだろう?」というハテナがずっと頭に残ってしまった。あと歌い出しにかぶっちゃったのが…。最初なので何点付けて良いか迷ったが、ずっとトリオのことを言ってたので33点にした。

・唐沢

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林さん44点、佐藤さん48点、合計92点

林:発声も節回しも良く、尺も綺麗に着地した。「忘らりょか」など言葉の響きも心地良い。最初「なんで野球がテーマ?」と思ったが、野球アニメの主題歌だと教えられて勉強になった。このままいくと満点になってしまうので独自性を少し下げた。

佐藤:私も発声が良かったと思う。気持ち良くなってきたところで、ちょうど歌に入るのも見事。ただあまりに尺ピッタリでオーバーするかもしれないとドキドキしたので、マイナス2点。

・やなせ

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得点表 (5).png
林さん48点、佐藤さん49点、合計97点

 林:声の大きさも尺も完璧。最初「なんの話?」というモヤモヤがあったが、最後に「青りんごの話か!」とスッと霧が晴れるような気持ち良さがあった。これも満点になりそうだったが、古典的な前口上より少し粗さがあったのでそこを下げた。でもそれはそれで良かったとも思う。

佐藤:最後「Mrs. GREEN APPLEでライラック」のあと1拍、間を置いてくれたのが非常に歌いやすかった。私も最後に「青りんごか!」となる気持ち良さがあった。マイナス1点は少し声に圧があり過ぎて圧倒されてしまったから。

 いきなり大幅に出遅れた私。主催者の意地にかけて、第2試合で絶対に取り戻してみせる。

⏩ 第2試合はチャレンジ部門

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