悔しいけどクセになる辛麺
宮崎に越してきて辛麺の存在を知った。前職で出張帰りに食べさせてもらったのが出会いで、そのときは「ぜんぜん辛くないじゃん!変なの!」としか思わなかった。僕は罰ゲームで使われるようなデスソースを常用しているので辛さ耐性がつきすぎている。
しかし、何度か辛麺を食べているうちに評価が変わってきた。
好みの味というわけでもないのになぜか無性に食べたくなるし、サイドメニューの豚なんこつはやたらと美味い。オリジナルのこんにゃく麺はほかで味わえない食感。
気づいたら大好きでした。ラーメンといえば人類みな麺類のmacroだったこの僕が!
(編集注:「人類みな麺類」という名店の「らーめん macro」という名のラーメンの話だそうです)
怖い!!
元祖辛麺30辛を注文
というわけでサクッと入店して早速注文しよう。
辛麺屋桝元では醤油味のいわゆる普通の元祖辛麺や、トマト味やカレー味などさまざまなベースを選ぶことができる。まあまあ、ここは普通のを頼んどきましょう。
一応辛さも選択可能ではあるものの、僕は辛いもの好きが高じて舌がイカれている。どれを選んだって変わるのは値段だけだ。でも今回は少しでも楽しみたいので一応MAXの30辛にした。
それとサイドメニューのなんこつも頼んだ。
外食はうれしいな。ところでみなさん、外食が当たり前になってませんか?それでは生き残れませんよ。
これが名物のトロトロなんこつだ
注文してから数分、先になんこつがやってきた。
トロットロに煮込まれた豚なんこつをポン酢につけて食べる最強のサイドメニューである。
辛麺の具はひき肉と卵がメインなので、脂っこさをカバーする意味でも絶対に頼まなければならない。雨が降ると地面が濡れるくらい絶対に。
最高!桝元のなんこつは骨を感じさせないほど徹底的に煮込まれていて、ラーメン屋のサイドメニューのうまさじゃない。これだけで店が開けるし、そんな店を出すなら出資させてほしい。
うっかりすると辛麺が提供される前に食べきってしまいそうなので、一切れだけ味わってあとポン酢を舐めて耐えた(まじで)。
辛麺(30辛)を見てください
そうこうしていると辛麺がやってきた。
いかにも激辛ラーメンといった風情のスープである。
具は卵の他にニラ・唐辛子・ひき肉・ニンニクがたくさん。この卵は辛さをマイルドにするほか、スープの表面を覆うことで熱さを維持する役にも立っているのかもしれない。現に辛麺は食べ終わるまで熱い。
麺はこんにゃく麺という独自のものだ。先に書いたとおりこんにゃくは使われておらず、原材料表を見ると使われているのは小麦粉・そば粉・料理酒とある。「こんにゃく麺」はあくまでも通称なのである。
さあ、御託はここまでにして思いっきりすすってやろう!
うまい。もっちりとした麺は噛むのに時間がかかり、そのぶん唐辛子の刺激が口の中に残り続けるのも独特なところだ。噛むのも辛いのもストレス発散にいい。レジャーとしての食という感じがする。
僕の舌は特殊な進化を遂げているので辛さはあまり感じないが、かろうじて辛くしようとする努力は感じる。
桝元の辛麺はニンニクを摂取するための口実なのでは
辛麺は嘘偽りなく好きな食べ物だ。自信を持ってそう言える。
でも、不思議なことに味の実体がない気がする。辛さで味覚が麻痺してるとかじゃなくて、美味しく食べているのに何味かが分からないのだ。かろうじて、ひき肉が甘く味付けされているのはわかる。
あとは……にんにくか!にんにくの味だ!
具をレンゲですくって食べると、生に近い食感のニンニクがゴロゴロと口の中に入る。自分で作る料理ではぜったいにやらない量で、スカッと突き抜けたにんにくのエネルギーを感じる。
そう考えると、辛麺は具を食べてもスープを飲んでも麺をすすっても、どんなときもニンニクが隣りにいる気がする。辛さでもなくこんにゃく麺でもなく、それこそが辛麺のアイデンティティなのではないか。
すなわち、ニンニクを食べまくるための方便として、辛麺はある!
桝元の辛麺の美味さはニンニクにあり!
ニンニクの刺激が主としてあり、そこに唐辛子の辛味、ひき肉の甘さ、粘度の高いスープの熱さ、麺を咀嚼する気持ちよさなど、人間の原始的な部分に訴えかける要素がいくつも散りばめられている。
これは理性とかじゃない旨さだ。だから頭で考えても実体が掴めなかったのだ。合点がいった。合点がいってふと目線を落とすと、飛び散ったスープが胸元に北斗七星を描いていた。