特集 2026年6月29日

書き出し小説大賞 304回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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鳳凰って伝説の鳥がいますよね? あれを発音するときいつもこれで合ってるのかな? と不安になります。ほーおー。感心したときの「ほお〜」になってないか、「ほう!うぉう!」と若干ラッパー気味になってないか。となると魚の「ホウボウ」もいいづらく感じてきて……まだまだ日本語のおぼつかない五十代男性です。

それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

溶ける小便ボール。夏の匂い。
寂寥

この作品を読んで(自分の中で)夏がはじまりました。

光、のち雨か。
いちもくれん
あくまで体育館あっての体育館裏だからな。
ガンダーラ磯崎

体育館裏の最高峰は、武道館裏かもしれない。

水曜日午後2時半。テレビは知らない再放送で、母がワイシャツを延ばすアイロンの香りで二度寝した。
まおん

この時間を体験できるのって、夏休みだけだよね。

ラジオパーソナリティの嗚咽が止まらない。お題の「こんな誕生日はイヤだ」と言ってからずっとだ。
カズタカ

おそらくパーソナリティ自身の誕生日なんだろうな。マゾっけが過ぎる! 

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空に鯨の死骸。捻れて死んだ死骸。ふわふわと場所を定めて、合図で現れる。
正夢の3人目
夜のベンチに寝っ転がって、古墳のことばかり考えていた。
タカタカコッタ
蜘蛛の巣に月明かりが、その奥には親指ほどの月があった。
タカタカコッタ

言葉による情景のフレーミング(切り取り)力がすごい!

ちぎれたミサンガが泉の裏側にたどり着いて、女神が誕生した。
尻綿知り
チョココロネのような形の洞窟に優しい恐竜が住んでいた。
もんぜん
ある植物が果実を嘔吐している。その隣で、別の植物が果実を嘔吐している。
白石ポピー

たしかに植物にとって実りは吐くことかもしれない。ピッコロ大魔王が卵を吐くみたいに。

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「早くうめよ」旦那に捨てられた私のお腹から、山百合の花が咲いた。
さくさく
駅からドリブルと壁パスで繋いできたこの石ころは必ず家へのゴールフィニッシュで終わらせてみせる。
セッドあとむ
雨上がりにピョンと飛び越えてもらえる水たまりになりたい。
タルク石
いつまで経験積んでんだ、さすがにそろそろ実績を積め。
七世
今日も下手に生きてる。
井沢

ノーミスの日なんて年に何度もない。

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つづいては規定部門。今回のテーマは『まだ名前のない感情』でした。本当の共感は言葉にできないもどかしさにこそ、宿っているような気がします。

規定部門『まだ名前のない感情』

知らない駅で降りたが、知っている人に出くわした。
かつを

驚き?よろこび?がっかり?……名前のない感情には複数の感情が混ざっている。

一発で完璧に打てた釘の、打つ場所が違った。
suzukishika
母さんから俺のアクスタが届いた。
正夢の3人目

感情の大喜利を求められているよう。

⏩ 規定部門『まだ名前のない感情』つづきます

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