特集 2024年8月19日

書き出し小説大賞 282回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


前の記事:書き出し小説大賞 281回秀作発表

> 個人サイト バカドリルHP 天久聖一ツイッター

オリンピックが終了しました。夜型の自分はけっこう見ていましたが中でも印象深かったのが、今回初のメダル獲得に湧いた高飛び込みです。考えてみれば10メートルの高さから面白く飛び降りるというたった2秒の競技が、オリンピック競技になっていること自体、なんだかすごいと思いませんか?
書き出し小説も文学界の飛び込み競技として、切磋琢磨していく所存です。

書き出し小説 自由部門

大聖堂に足を踏み入れると、コンビニの入店音が鳴り響いた。
もんぜん

ファミマケルン大聖堂店

アスファルトに誰かが忘れた通り雨。
カフェイン・コスギ
月明かりに羽虫が群がる夜。
もろみじょうゆ
免許証ブルーを背に入道雲はますます白くフレームをはみ出した。
ビールおかわり

キタノブルーと並ぶもうひとつのブルー

「トイレットペーパー変えた?」私の変化に気付きもしない男の敏感な尻。
ぐるりん

ソムリエ肛門

いったん広告です
バイパスを静かに降りて観光バス。
さらだじゃがいも

自由律も採用します。

「今のは手品じゃなくて、まぐれなんです!」
ろっさん
風を見たくて草原にきた。
S.マウンテン

ジブリのアニメーターかもしれない。

逃げ水と一緒に街を抜け出して、しろいいるかをさらいにいくの。
白石ポピー
空の向こうに百田尚樹のあとがき。
DE:THIRD

百田尚樹氏の本読んだことないけどなんか笑った!

いったん広告です
和尚のうしろでサマーヌードを呟いていた。
寂寥
外したブラジャーが勝負を挑んで来た。
人馬一体勘
適当に入ったファンクラブの、名前も知らないあの人を見失う。
豆ん棒

適当にファンクラブに入るってすごくアナーキーな態度だと思う。

このイルカショーが終わったら、俺は、隣の席に座っている刑事に、手錠をかけられることになっている。
六井象
全部の指に結婚指輪をはめた男が、毎日窓口を訪ねてくる。
次郎の刺身
布団に抱きついた。胸に残る花火の鼓動。Tシャツに残るブルーハワイ。返信を待つバタ足。
なかもりばなな

最後のバタ足が良い。

限り有る暮らし。食らうは無限キャベツ。
薈林
いったん広告です

つづいては規定部門。今回のモチーフは『怪談』でした。恒例の書き出し怪談2024、一瞬の恐怖をご堪能ください。

規定部門・モチーフ『怪談』

入院しているはずのおじいちゃんが家の近所をウロウロしている。どっちだ?
タルク石

たしかにどっちにも取れる笑。見事な一本!

「死体 におい 消し方」スマホを手に彼氏は、わたしの事で頭がいっぱいだった。
さくさく
せんせい、サヨナラ。生まれ変わったらまた「いきもの係」で面倒見てあげる。
さくさく
逃げ水の水面を渡り、ぼくの葬列は山懐に抱かれて消えた。
さくさく

さくさくさんの秀作、選びきれず三本採用。

あの頃使ってた鞄の底から出てきた色褪せたメモ「2025年9月3日高木駅5番出口」
なかもりばばな
父が遺した写真に繰り返し現れる見たことのない一族。
xissa

長編の伝奇ロマンになりそう。

今度のジョロウグモは委員長の顔をしていて、蝶々をおいしそうに食べている。
葱山紫蘇子

⏩ 次ページに続きます

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ