特集 2024年7月15日

書き出し小説大賞 281回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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トランプ前大統領が狙撃された。幸い弾丸は耳をかすっただけで命に別状はなかったが、あらためて米国における銃社会の脅威が露呈するかたちとなった。それにしても銃社会。なんと物騒な言葉だろう。怖いので違う漢字を当てはめたい。麺社会とか桃社会とか、あるいは孫社会とか……あとはそれぞれ考えてね!
それでは今月もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

曇ると山は重くなる。晴れれば上へと伸び上がる。
カズタカ

一読したあとのイメージ喚起力がすごい!たしかに山が伸び上がる。

その子の匂いが知りたくて借りる文庫本。
水分宝給
初めましてと挨拶したその人に消費期限を感じた。
自由人

そういう人にはくっきりとしたマニュアルみがある。

そよ風の中にサンダルを逃がした。格子に下がる脚指で、風を擽るために。
merumo
図書館で本を借りてみたらいい。タダで突き刺さった言葉は本物だろう。
もろみじょうゆ
純喫茶のメロンソーダが飲みたい。そう言った君はまだ来ない。
七世

このリクエストを出して来ないってそうとう性悪。

おまつりはぼくのあたまのなかにある。
寂寥
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ひとりは気付くまでひとりじゃない。
正夢の3人目
AIが書いた長編小説が次々と売れ始め、数年後全て同じオチで終わった。
うにねこ

AIのアルゴリズムが人類の総意だとしたらこの結末もあり得る。

デジタル時計をじっと見ていると、時間が1秒、2秒、と戻ることってあるじゃないですか。
ウウタルレロ

ないのにありそうw

ここを押して痛いなら脳ですね。
タルク石
満潮の海と同じじゃん。おい月、私の頬も引き上げてよ。
ビールおかわり
ビッグバンが起きて、いろいろあって、キュルキュルちゃんの等身大抱き枕が誕生した。
もんぜん

アニメ美少女の抱き枕がある現実も、そうとうな世界だと思う。

大量のアサリと共に水桶に溶かされて、塩は「海」だった頃を思い出した。
さくさく
三日月は皮肉な笑いで、身分違いの恋を祝福した。
S.マウンテン
ポリバケツいっぱいのゲロに、ゆっくりと体をうずめる。
人馬一体勘

ゲロの破壊力。

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続いては規定部門。今回のテーマは「雨」でした。滴る小品たちをどうぞ。

規定部門・モチーフ『雨』

あなたと帰る雨は好き。
えむけい

直球で打ち取る秀作。

夕立が僕らの夏を加速した。
東ことり
雨粒をかわして佐藤さんが出社して来た。
おの

⏩ あんたと出会ったのは

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