特集 2024年4月19日

書き出し小説大賞 278回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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大谷選手の通訳、一平容疑者の事件。裏切りの罪はたしかに重いけど、本質は親の財布から黙って課金するような幼稚な行為。特別悪人でもない彼にこんな特大スキャンダルを起こさせるところも流石ショウヘイ!……というのは不謹慎ですが、やーマジすごい事件でしたね。

それでは今回もめくるめく書き出しの世界へご招待しましょう!

書き出し自由部門

街の息継ぎみたいに真夜中のファミマは光る。
みよおぶ

街中のコンビニもいいけど、広い道沿いにあるコンビニのポール看板も情緒があって好き。

雑食性のぼくら、禁断の実に手を伸ばして食いあらためる。
さくさく
マンホールから出てきた子がマンホールへと帰って行った。
いそうろう
あくびをしたら一人消えた。
井沢
いったん広告です
完成された陰謀論というものは、幾万の凡人には目もくれずたった一人の天才だけを踊らせる。
高田

陰謀論を芸術に置き換えてもいい。

教わった「なんでやねん!」をトムが楽しそうに繰り返す。
ろっさん
毛の代わりに全身に桜の花を咲かせている犬がぶるぶると体を震わせた。
もんぜん
自己増殖を始めたソーラーパネルが空を覆い、日陰の街が生まれた。
みよおぶ
二分の一を繰り返し毒魚は食用になった。
タルク石

規定に来てましたがこちらにしました。人類の食い意地に敬礼。

二十世紀の終わり、我々は定規戦争のさなかにあった。
東ことり
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誰も私を覚えてない、そういって私はちゅんちゅんと鳴くの。
田中えっぬー
受刑者は落語で泣いた。
節度亜図夢
かわいくしてるひとたちは、そのままでいようとするひとたちをにらむものだった。あの目付き。せっかくかわいくしてるのに。
首廻り寝具
スマホの中の、器の中の、水の中の、ぱくぱくと光の粒を食べる、死なない、美しい、金魚。私の中に住み着いた浴衣姿の幼女がうっとりと見つめる。
あおすけ
山肌が見えてきたなら春の証。計画書を今一度読み直して最後の暖炉の火にくべた。
カズタカ

文脈を捉えきれないぶん、想像が枝分かれしていく。

続いては規定部門。今回のテーマは『あの頃』でした。故郷には戻れるけど「あの頃」には戻れない。あなたの「あの頃」には誰がいましたか?

書き出し規定部門・モチーフ『あの頃』

あの頃は、などと言うのはあの街を出た私だけである。
suzukishika

グサリと真実を突きつけられたような、地元で活躍するコピーライター鈴木くんの秀作。

あなたがひとつ、星を捨てたとき、わたしは産まれてきたのです。
たごさく
「あの頃までお願いします」定年を迎えるタクシー運転手久遠の後部座席に、最後の客が乗り込んだ。
ぴすとる

⏩ あんなに眠かった日々はない。

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