特集 2023年12月10日

書き出し小説大賞 274回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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大谷選手の移籍先が決まりました!宇宙リーグのギャラクシーズです!契約金は8000那由多ドルです!それでは今週もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

日時計の針になる。冬の午後三時はすでに寂しい。
S.マウンテン

冬の午後三時って一年の中で一番キラキラしてるよね。

背景が香る。記憶が浮かび上がる。
みよおぶ
空が高い。女は人生で初めて秋を感じた。
ゆり
今にも落ちてきそうなこの夜空の星は、ただの古い光なのだ。
おの
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ひとつ残らず白い筋々が取り除かれた蜜柑と赤いマニキュアの指が、ぼくの唇をこじ開けた。
さくさく

こたつのより椅子にしばられた状態でされたい。

陸地の無い海のような永遠を君を探して過ごしている。
正夢の3人目
フェイクファーのきみは枇杷の花に似ていた。
寂寥
窓ぎわの観葉植物は眩しそうだなとこけしは思った。
寂寥

そう言われると明るい場所に置かれたこけしって違和感がある。

窓から差し込む光の角度がおかしい。部屋のありえない場所が眩しい。ああ。冬だ。
suzukishika
斬首され宙に舞ったメデューサの瞳は最後に見た山鳩を、しかし石にはしなかった。何故か。
高田
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時間が許す限りゆれて欲しいブランコ。
あかかりん
竜巻の中にある博士の笑顔。
ジョンソン鼻炎ドジョンソン

なんか言ってるけど竜巻がうるさくて聞こえない!

浴びるほど、シャワーを飲んだ。
もんぜん
一匹狼にお歳暮が届いた。
たこフェリー
「最低な男ね」と言い放ち、彼女はオートロックの部屋から出て行った。
マミーマミー・ポコポコ・パンパン2
僕の手拍子に合わせてその物体は小刻みにジャンプしていた。
ナックルボール
この異世界では食料、移動、薬品、建材、武器、通貨に至るまでカニで賄っている。
prefab

すべての人類が道楽ものである。

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つづいては規定部門。今回のテーマは『自分語り』。すべての物語は誰かの独り言かもしれない。

書き出し規定部門・モチーフ『自分語り』

これは日記だ。絶対に私しか読まない。
suzukishika

読んでほしいものは読みたくない。読まれなくないものを読みたい。

昔から何にしても、一番に犯人と疑われる。
八王寺義昭
社会の歯車にはなれず、文学青年にもなりきれなかった。
もろみじょうゆ
僕は産道を兄に譲り、次男としての人生が始まった。
節度亜図夢

⏩ 虫歯は飼い慣らすものだ。

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