特集 2023年10月1日

書き出し小説大賞 269回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


前の記事:書き出し小説大賞 268回秀作発表

> 個人サイト バカドリルHP 天久聖一ツイッター

ようやく、やっと少しだけ秋めいてきました!非常に個人的は感覚で恐縮ですが、秋と言えば自分にとって玉置浩二なんです。哀愁を感じる歌もそうなんですが、全盛期の玉置浩二ってなんか秋メイクを煮詰めたようなブラウン味があって、秋を擬人化したような印象がありました。
それでは今回も、めくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

いったん広告です

書き出し自由部門

秋の光が、書架の埃を射抜いていた。
タカタカコッタ

書き出し小説の自由部門が、季節の変わり目を教えてくれます。

カーブミラーの縁に映る空が秋めいてきた。
みよおぶ
私は絶望であり、あなたの幸福です。
おの
夕焼け空はカクテル。深酔いの夜に一人。
ぐるりん
知りたい。知りたくない。知られたい。知られたくない。
カズタカ

花占いのような。

孤独なダイオウイカはマッコウクジラに抱きつきクジラの体に一生の傷を残したのを見届けて食われた。
ぐるりん

深海でそんなロマンスが!かっけーー!

全て隠し通すと誓って証明写真のブースに入る。
S.マウンテン
長夜の真ん中、箸でパスタを食べている。
タカタカコッタ
見向きもされないブイに朝日が差す。
ふじーよしたか
幽霊のポケットの中でフリスクが鳴った。
みよおぶ
私があなたの遺作で、贋作になろうとしている。
井沢

贋作画家の妻……?作家性つよめの映画みたいで良い!

大量の明太子が宙を舞い、スポットライトの光の筋を通ったときだけ、雪のように見えた。
もんぜん

中島美嘉の『雪の華』が聴こえてくる。


続いては規定部門。今回のテーマは「出オチ小説」でした。読むのは苦手だけど読後感だけ得たいZ世代の方、どうぞ。

いったん広告です

書き出し規定部門『出オチ小説』

透明になれる薬も透明だった。
タカタカコッタ

受精しなかった精子のように、はじまらなかった物語は無数にある。

ボタンを押し、コーヒーが勢いよく注がれた後、満を持して紙コップは登場した。
南極行太郎

コップには『完』の一文字が。

すまん弊社、御社が悪かった。
いずも
下着泥棒が盗んだのは上着でした。
ナックルボール

弓の名人が弓を忘れるような、達人の域を感じる。

⏩ 敵の正体は、生き別れた双子の兄だ。

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ