特集 2023年9月17日

書き出し小説大賞 268回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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阪神タイガースが18年ぶりの優勝!! 恒例の道頓堀ダイブは厳しい警備体制でほとんどいなかったようです。
このご時世当然といえば当然、でも一方で寂しい気も、いやそう思うのが年寄りの悪いクセ、でも思うのは勝手だろ! とひとり悶々としながら道頓堀に飛び込みたい衝動に駆られています。

それでは今週もめくるめく書き出しの世界へご案内しましょう!

書き出し自由部門

夏はまだ廊下に立っていた。
ナックルボール

残暑もこう擬人化すれば許せる。

ベビーカーに親切をはたらいたあと、ぼくののこりわずかだった優しさが底をついた。
信号待ち
図書館のバーコードに光が座る。
みよおぶ
ついでに私のハートも射抜くと、流鏑馬は走り去った。
さくさく
手術は成功しました。あとは初夏に繁るのを待つだけです。
いちもく

初夏に繁ってくれますように。

小惑星に枯山水をつくっている。
S.マウンテン
そこ、コーヒーカップに入ってるやつ。ハリネズミ。
おの

なにこのジグソーパズルにしたい光景! 

出してない手紙の返事を欲しがっている。
井沢
いったん広告です
グラスが倒れ、サボテンは喜んだ。
坂上田村麻呂の従兄弟
入道雲を背景に、死神が立っている。きっと来年の夏もこの光景を見る。
正夢の3人目
壁に座る。からっぽの膝小僧が鳴る。
タカタカコッタ

背中をつけて中腰になった姿勢かな? オリジナリティしか感じない視点と表現。

父の死に顔に産毛が輝いていた。
g-udon
ゆるい活動と銘打ってる奴ほど必死なのだ。
ナックルボール
止まらないうんこの話をしよう。
葱山紫蘇子

聞くからうんこ止めてから話して。

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つづいては規定部門。今回のテーマは『小さな戦い』でした。平和しか感じない戦いの記録が集まりました!

規定部門・モチーフ『小さな戦い』

少しずつ少しずつ、リクライニングを倒す。
ぐるりん

俺って日本人だなと思う時間。

おれの「すいませーん」が今日も届かない。
suzukishika
帰りたくない犬が引きずられている。
タカタカコッタ
お前より俺の方がもっと勉強してない。
高田

「もっと勉強してない」という言い方がかわいい。 

⏩ まもなく青信号に変わる。電動ママチャリには絶対に負けない。

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