特集 2020年3月29日

書き出し小説大賞187回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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目に見えない敵を相手に在宅を余儀なくされた私たちは、もうひとつの見えない敵と戦わなければならない。それは「退屈」である。では今回もめくるめくヒマつぶしの世界へご案内しましょう。

書き出し自由部門

白飯の上にサクランボが乗っている。
オメガ

サクランボが温かい!

壁に日記を書く。余白がなくなりそうなので、そろそろ引っ越す。
kwsk
顔認証は執拗に木陰を狙う。
インターネットウミウシ
遅れて生えてきた親知らずは、剣岳に似ていた。
轍眼鏡
食材は空へと消えた。
xissa

すべては食材とそれ以外に分けられる。

向かい風が歯に沁みる。
八重樫
君は季語になっていた。
にかしど
西日の中の駄菓子屋は暖かく、暗く、虎が眠る洞窟のようだった。
井沢

実際は寝間着のおじいさんだけど。

どうにか職務質問されずに、この服装で君のところに行きたい。笑わせたい。
さくさく

状況のシリアスさと、見た目のコミカルさ。

分身の術の、解き方だけが分からない。
さくさく
毒は蓋の裏に塗られていた。
住民パワー
希望の光が、ブルドックソースの中に落ちた。
タクタクさん
軽いイビキが交差するなか、『読み聞かせの魔女』がゆっくりと本を閉じる。
人馬一体勘
腕の長い男、土管に住んで、宝石を食べる。たまに月を見て泣く。
正夢の3人目

マンガで読んでみたい。貧しく美しいファンタジー。

「それプラセボ効果やで」駅のホーム、出勤前のキャバ嬢たちの会話のそれだけが、いやにはっきりと聞こえた。
葱山紫蘇子

雑踏の中からふいに思いがけない言葉が飛び込んでくることがある。リアル。

喪主は香典で賄った。男には譲れないオプションがあるのだ。
けー
三味線マンの妹が死んだ……。
寿代〔ヒサヨ〕

まだキャラ設定もされていない三味線マンに、一気に感情移入してしまう。

駅前の托鉢がキャッシュレスに対応し始めた。
くのゐち
いったん広告です

続いては規定部門。今回のお題は「バカ」。こんな時期だからこそ、頭をからっぽにしてお楽しみ下さい。

規定部門「バカ」

靴下は手袋だ。
もんぜん

逆も真なり。

ストラップの重さが五キロある。
オメガ
初めて見る漢字に会釈する。
ともきよ
拍手をしすぎて鼻血が出た。
住民パワー

スタンディングオベーション3日目突入。

点呼を取るたび人数が変わる。
紀野珍
週3で薄いハムを贈って来る。
モリダイ
回しすぎて中華テーブルが飛んでいった。
巻坂
祟りが効かない。
terayo
すぐ財団にいう。
terayo

財団?(笑)

学歴より、何秒潜れるかだ。
シロイルカ

三分以上潜れる者だけが入会できるMENSA的なグループ

履歴書の顔写真が星空を見上げている。
IWA
賞味期限過ぎてる!ちゃんと不味い!!
イモ天
メガネザルというあだ名だったが、コンタクトするようになってコンタクトザルに変わった。
いそうろう
ヒューマンビートボックス用に飼われています。
いそうろう

普段は座敷牢に。

サソリみたいな馬の糞にびっくりして、思わず目の前のサボテンに抱きつく。
インターネットウミウシ

バカとして一切無駄のない流れ。

ハーモニカは吹いても吸っても音が出るので、毎回過呼吸になる。
インターネットウミウシ
わたし、夏子。北条政子から一文字もらって、夏子です。
昼行灯

なにひとつ合ってない。怖い。つづきを聞きたい(笑)

ポケットが多い。耳栓がデカい。いつも、おちょぼ口。
昼行灯
バカ。鏡。坐薬。
寂寥
一部上場だ?ならこっちは全部上場だ!
モンゴノグノム

脳内BGMはmihimaru GTの『気分上々↑↑』

今晩はまぜごはんだから早く帰りたかったが、CIAからの拷問はまだ続いた。
菅原 aka $UZY
バカがやっと円陣に加わろうとするとまた、別のバカが円陣から外れていく。
にかしど
まだ踊ってる。まだ笑ってる。私が泣き止んで、もうだいぶ経つのに。
正夢の3人目
丁寧に磨いていたら天才が顔を出してきた。
吉田髑髏

最近の溜まった鬱憤を吹き飛ばす、束の間のバカを楽しませて頂きました。
前半を埋めた五月雨式のバカチェックをはじめどれも面白かったのですが、とくにインターネットウミウシ氏の「サソリみたいな馬の~」と昼行灯氏の「わたし、夏子~」が白眉。バカをどう捉えるか、というより、書き手自身がバカになる手法で書かれた作品。こうした作品は一線を越えると「分からない」や「シュール」で片づけられがちだが、僕個人としてはこの境界線上にこそスリリングな笑いあると思う。「分からない」をどう面白がるか、それは書き手よりむしろ読み手のセンスが問われる問題かもしれない。

それでは次回のモチーフを発表する。
 

次回モチーフ
『楽園』

いま現在の見通しでは、目に見えない敵との戦いはまだ長引きそうである。こんなときこそいっとき現実を逃れ、脳内楽園に身を委ねてみたい。不安も心配もなにもない世界。その描写と暮らしぶりを妄想してください。締め切りは4月10日正午、発表は4月12日を予定しています。下記の投稿フォームから部門を選んで送って下さい。力作&脱力作待ってま~す!

最終選考通過者
うなたま 嘘みたいな犬 いずも カントーン はらげん にら将軍ハルナ 月嫁 ともきよ かわいい寝顔 あひる たこフェリー ビールおかわり prefab
 

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