おっさん二人のひな祭り
初回の配信はひな祭りに決めた。
そう、実はひな人形トークバラエティ『ヒナ談』はすでに初回を配信している。ただ前回の記事では、公開の告知が精一杯だった……。
本当はその過程も記事にするつもりだったけれど、動画づくりが過酷を極めたため、とても舞台裏までをレポートする余裕がなかったのだった。
ではまずあらためて、当時の状況をお伝えしたい。
おひな様トークバラエティ・ヒナ談01巻(3月3日配信)
構想三日。制作一週間。
撮影はDPZ編集部にて、デイリー主宰の林氏と行った。
動画といえど相手は人形、ほとんど静止画だろ──と軽口を叩きながら臨んだ撮影だったが……ごめんなさい!完全に舐めてました。
出来たばかりのセットを組み立て、総勢15人に及ぶひな人形たち全員に烏帽子を被せ、小道具を持たせる。
その烏帽子のヒモが、老眼のおっさん二人にはどうにも結べないのであった。
あまりの手際の悪さに、柔和なおひな様の顔にも、次第に苛立ちの色が見えてきた(ように思えた)
結局仕込みには2時間近くかかり、そこから試行錯誤を重ねながらの撮影も遅々として進まず、取り終えたのは終電間際。
重いトランクを引きずり、マスクだらけの最終電車に揺られながら、とんでもない修羅の道に足を踏み入れたことを実感したのでした。
もちろん動画は撮影だけではない。
人形に魂を吹き込むアフレコは、知り合いの劇団『地蔵中毒』の役者さんたちにお願いしたのだが、急遽用意したレンタルスペースは、なぜか東西線の線路脇にあり、数分おきに通過する電車をぬっての録音作業。実働より電車待ちの方が長く、予定した二話ぶんは無理だった……。
ちなみに日を改めた二度目のアフレコ現場も大久保のど真ん中にあり、ひっきりなしにパトカーと救急車が通る。日本はいつの間にこんな犯罪大国になったんだ?
編集はAdobeのpremiere。これも実ははじめて触る。
いままで電気グルーヴのPVなど、何本か監督した経験はあるものの、僕が担当するのは絵コンテと、それを元にした素材づくりや演出であって、撮影や編集はいつもプロの方にお任せしていた。
今回はYouTubeの流儀として、できることは一通り自分でやると決めてはいたが、実際仕上がったシロウトの丸出しの映像には我ながら心が傷んだ……(まあ、これもYouTubeの味わいか)(いや、お世話になった方々に対してこの出来は失礼だろ)というはげしい葛藤の中、最終的には(ただ、眠い)という半睡状態で、初回の動画はほぼ無意識のうちにアップされていたのだった。
核家族、ヒナとの共生
今後『ヒナ談』をつづけるとして、撮影のたびに編集部まで出向くのはキツ過ぎる!それに林くんにも悪い……というわけで、セットとひな人形は自宅に送ってもらうことにした。
家族三人に、いきなり15人の公家と従者が仲間入りしたのだった。華やかではある……が、確実に場所を取る。
ただでさえ狭い我が家は、今後立って寝ることになるだろう。
せめて子供が娘ならまだ呑み込めるが、仮面ライダーのことしか頭にないバカ息子(6歳)であることも、残念でならない。
二話目の撮影日、東京は雪が降っていた。今年は暖冬で雪らしい雪などなかったのに──。
流行病の影響で全国の小中高は休校となり、息子が通う幼稚園も休園になった。リビングにはなぜかバラエティ番組のように並べられたひな人形がいる。
非日常であるはずなのに、撮影は家族総出で淡々と進んだ。
もちろんまだ使い慣れない一眼カメラで、イメージした画とはほど遠い。編集がこなれるのも、まだまだ先のような気がする。が、開き直るほかない。
いい歳こいた中年がなぜこんな大変なものに手を出してしまったのか、自分を恨み、また巻き込んだ方々に申し訳なく思うが、動画の内容は思いっきりクダラナイので、それで勘弁して欲しい。
おひな様トークバラエティ・ヒナ談02巻