特集 2019年2月10日

書き出し小説大賞第163回秀作発表

書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。(ロゴデザイン・外山真理子)

雑誌、ネットを中心にいろいろやってます。
著書に「バカドリル」「ブッチュくんオール百科」(タナカカツキ氏と共著)「味写入門」「こどもの発想」など。最近は演劇関係のお仕事もやってます。


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インフルエンザに罹った息子(5歳)の熱が翌日には下がり、すごく元気なウイルス持ちとして、家の中で暴れ回ってます。
それでは今回もめくるめく書き出しの世界ご案内しましょう!

書き出し自由部門

遊びなんかじゃない。雪道は。
さくさく
猫の足跡が雪だるまを一周して、車の下に消えている。
紀野珍
ブランコを大きく漕ぐ。前に進むときだけ月を仰ぐ。
紀野珍
口に行った痰がすぐ喉に戻ってきた。
prefab
民、どうやらぼくが開いた幕府に不満があるみたいだ。
八重樫
この苦しみは、確か時間が経つと無くなるヤツだ。
魚子
瓢箪に入れた水がまずい。
ビールおかわり
ホタルのオスは星を作り、ホタルのメスは地を這いずる。
陳が刀削麺を鍋に削り入れると、一人また一人、小さな人魚に化けていった。
昼行灯
虹は2色だ、という部族で育てられた。
スリッパ
渋谷は改良を重ね、概念のみとなり実存しなくなった。
川ハム
あなたに渡したチョコが一向に噛めないようで、冬の海のような静寂が鳴る。
花瀬いをり
笑い声をあげる度、宝石がこぼれ落ちた。
茂具田

寸評

●さくさく氏「遊びなんかじゃない~」武器なんかじゃない。つららは。
●魚子氏「この苦しみは~」こういう言葉があれば自己啓発本も信用できるのに。
●スリッパ氏「虹は2色~」味覚も「食える/腐ってる」しかない。
●茂具田氏「笑い声をあげる度~」その宝石を高田純次が口に含む!

続いては規定部門。今回のテーマは「気まずい」でした。回転寿司で対面にいた人が、電車でも対面にいた気持ちで読んで下さい。


規定部門・モチーフ『気まずい』 

きび団子が、ない。
タクタクさん
友人の頼んだ定食が来ない。
g-udon
閉園間近の観覧車が相席でスタートしていく。
人馬一体勘
沈黙を破る言葉が重なった。
ビールおかわり
カウンターの乾き物が瞬く間に消える。
suzukishika
「いくつに見えると思う?」の答えが見つからないまま二駅が過ぎた。
ふじーよしたか
イオンモールでデートをしていたら前方から元カレ、斜め後ろに元カノがいることに気づいた。
こっぺぱん
二度寝、二度見、二度恋。
まじいい
打ち水で聖火が消えた。
住民パワー
満員電車で母とキスする寸前である。
もんぜん
着地に失敗した猫と目があう。
xissa
嘘泣きはバレてからが勝負だ。
xissa
さーて、人類全然滅びなかったけどどうする?
おる・にちん
バイバイする手を、上空の虫を払う手に変える。
カズマンヌ
手を洗ったとき跳ねた水の染みなんだ。本当に。
紀野珍
大尉をパパと呼んでしまったであります。
紀野珍
「すみません、今電話中で」と電車の中で電話に出た。
井沢
深夜2時のキッチン、ゴキブリは気まずそうに会釈をした。
ろっさん
二ヶ月にもわたったフラッシュモブの練習は、「ごめんなさい」という終わりを迎えた。
さくさく

寸評

●タクタクさん「きび団子が~」コンビニで買った「忍者めし」しかない!
●g-udon氏「友人の頼んだ定食~」
●xissa氏「嘘泣きはバレてから~」嘘泣きからの理詰め?!
●紀野珍氏「大尉をパパと~」名人は「先生をママと~」ネタをこうアレンジする。
●ろっさん「ゴキブリは気まずそうに~」そのあと二度、同じ方向に避けた。


それでは次回のモチーフを発表します。

次回モチーフ
「歴史上の有名人」

次回のモチーフ『歴史上の有名人』については過去にも何度か募集した。そのときは『国内編』『海外編』などある程度の「縛り」をもうけたが、今回は自由に募ってみたい。お気に入りの偉人をテーマに書いてみてください。言行録スタイルで書くか、一人称で書くか、史実に基づくか、完全なフィクションか、アプローチの仕方にも工夫して欲しい。締め切りは2月22日、発表は2月24日を予定しています。下の投稿フォームで部門を選んで送って下さい。力作待ってます!

最終選考通過者/今回はなし

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