特集 2019年1月28日

じゃがりこサイレンサーであの騒音問題を解決しよう

新幹線の車内で思うままにじゃがりこが楽しめる画期的な装置を開発しました。

新幹線移動が好きだ。なんか「すっごい速さで連れて行かれる感じ」の適度なGが気持ちいいし、じっと座ってるしかないので原稿書くと意外に捗るのだ。

あと、復路の車中は仕事終わりの開放感がずっと長持ちするのもいい。

弊サイトでも以前に「新幹線マイルール」を募集したことがある。ちなみに僕の新幹線マイルールは「ほうじ茶とじゃがりこ」だ。

ところが今このマイルールにちょっとした懸念が生まれている。じゃがりこ、うるさくないか問題である。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

前の記事:錯視罫で書きにくいルーズリーフを作る

> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

僕のマイルールは騒音だったのではないかという不安

僕は酒を飲まないので、新幹線でビール、という楽しみは持ち合わせていない。その代わりにほぼマストで備えるのが、ほうじ茶とじゃがりこの組み合わせ。

車内販売でサラダ味を買うのもいいが、出先で地域限定の味をチョイスするのも楽しい。

仕事終わりの開放感にまかせてカップからつまんだじゃがりこをザックザックと噛み砕くと「あー、今回もよく働いた」という気分になるのだ。

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好きなじゃがりこ各種。写真下は東京駅の「Calbee+」で買えるご当地じゃがりこ。チョコバナナ味が意外とうまい。

実は先日の取材帰りの新幹線車中、前の席に座っていた人が僕と同様のマイルールで生きているらしく、じゃがりこを結構な勢いでザクザクザクザクと食べていた。うむ、分かる。うまいよね。

ところが、たまたまその時の精神状態によったのかもしれないが、そのザクザクという破砕音が妙にうるさく感じてしまったのだ。

いや、じゃがりこ食べる音がそれなりにうるさいのは分かっていたつもりだけど、ここまでだったのか?もしかして僕も今までずっと近くの席の人に迷惑かけてた?

実際にどれぐらいうるさいのか

そもそもじゃがりこの魅力は、あのザクザクバリバリと噛み砕く歯応えだ。

しんなり湿気ったじゃがりこにも別の良さはあるが、個人的にはザクバリ派を貫きたい。

そこでひとまずじゃがりこを噛み砕くあの音がどれぐらいうるさいのかを確認しておこう。

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じゃがりこオフ時はこんな感じ。我が家は裏が大きなお寺なのでたまに読経の声が聞こえてくるけど、ほぼ静か。

あくまでもスマホアプリのデシベルメーターなので精密さは期待できないが、1mほど離れた距離から計測してまぁだいたいこんな感じ。

室内での無音状態が図書館レベルの35db前後だったのに対して、じゃがりこをかみ砕くと60~70db。これは室内で掃除機かけているレベルだそう。

あっ、やっぱりうるさいな、じゃがりこ。

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じゃがりこオンだとこれぐらい。改めて数値で見るとなるほど、という感じ。

とはいえ、好きなじゃがりこを食べないという選択肢は取れない。

であれば答えは一つ。静かにじゃがりこが食べられる『じゃがりこサイレンサー』の開発が急務なのではないだろうか。

じゃがりこサイレンサーを開発してみた

「開発が急務ではないか」などとかっこつけてみたが、具体的にどうすれば良いのか。

じゃがりこを噛み砕いてる状態を妻に確認してもらったところ、主に口元と頬の辺りから音が聞こえる気がする、と言われた。

なるほど、じゃあ口と頬をカバーすればあの破砕音が減らせるかもしれない。

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ダンボールに超ざっくりとした図面を貼り付けてカット。

まずはだいたい自分の顔のサイズに合わせて展開図を描く。
顔のカーブとか測るのが面倒くさかったので、あくまでもざっくりこんな感じかなー、ぐらいで図面を顔に当ててみては描き直し、を5回ぐらい繰り返した。
もしかしたら最初からしっかり計測した方が早かったかも。

次に、できた展開図通りにダンボールを切り取る。
ちなみにOLFAの『スピードブレード』という刃(鋭角刃にさらにフッ素コーティングしたもの)を使うと、ダンボールがコピー用紙切るぐらいスパスパと切れて曲線切りも自在なので、おすすめだ。

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あれこれ試してみたけど、ウレタンスポンジの接着は結局ホットボンドがいちばん確実だな。

それから内側に防音用のウレタンスポンジを隙間のできないようにみっちりと貼り付けていく。

ついでにダンボールを組み立てつつ、縁には雨戸用の防振ゴムテープでカバー。

どこまで音漏れが防げるかは分からないけど、ともかくこれで顔にある程度は密着するようにできたはずだ。

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防振室のミニチュアみたいでなんとなくかっこいい。

で、できあがったのがこちら。

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完成、じゃがりこサイレンサー。

なんか音に関係なさそうなパーツが付いているのはさておき、なんとなく『マッドマックス 怒りのデス・ロード』みのあるフォルムになった気がする。
もしかしてイモータン・ジョー様も静かにじゃがりこ食べたかったのかしら。
ともあれ、これを顔に装着すれば、じゃがりこを食べても静寂が保てるはずなのだ。

ちなみにこの状態から口までじやがりこを供給するには、こうする。

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フロントドア、オープン。

口元がぱかっと開くようになっているので、ここからじゃがりこを突っ込む、という寸法だ。
開けっ放しだと音漏れし放題なので、一本入れてはドアを閉めて食べ、の繰り返しは必要だろう。面倒だけどしょうがない。

さあ、ではどれぐらい静かに食べられるのかを実際に試してみよう。
もちろんテストフィールドはいきなり実地こと新幹線車内だ。

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試すぞ、じゃがりこサイレンサー

というわけでここは東海道新幹線の車中である。
わざわざ「じゃがりこを静かに食べられるか」を実証するためだけに、東京駅から新幹線に乗ったのだ。
これで万が一にも失敗したら目も当てられない。主に同行してもらった編集石川さんが。

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石川さんが「おー、なんかかっこいいのできたじゃないですか」と妙に褒めるので、逆に気恥ずかしくなってる。デイリー編集部は基本的に褒め上手だ。

とはいえ、こんなことで新大阪まで行ってもしょうがないので、実証と撮影は東京→品川間の約7分だけ。スピード勝負だ。

「もし実験する時間が足りなかったら新横浜まで乗り越してもいいですか」と提案したら石川さんが絶妙に面倒くさそうな表情をしたので、急ぐことにする。

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そそくさと装着します。いま発車ベルが鳴ってるのでけっこう焦ってる。

装着は、端にベルクロを貼ったゴムバンドを上下に2本で固定する方式にした。

最初から実験は新幹線でやるつもりだったので、車内で悪目立ちしないよう素早く装着できるように考えてのこと。

こういうエクストリーム気味な取材にもだいぶ慣れたなーと感じる瞬間である。

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もう一月も末ですが、今年の干支のイノシシです。

装着したところは、こんな感じ。
組み立ててみたらなんとなく豚鼻っぽく見えたので、どうせならついでにと牙をつけてみた。うん、いい感じでイノシシっぽくないですか。
もしサイレンサーとしての効果がろくに出なかったとしても、雰囲気のめでたさで押し切ろうという心づもりだ。

効くのか、じゃがりこサイレンサー

新幹線はもう東京駅を出て走り始めてしまったので、のんびりしている時間はない。

いっぺん装着したじゃがりこサイレンサーを外して、まずは普段通りにじゃがりこを食べてみよう。
石川さんには僕の前の座席に座ってもらって、どれぐらい音が聞こえるかを判定してもらった。

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じゃがりこサイレンサー無しでザクザク。これが普段の新幹線スタイル。

「うーん、普通にザクザクって聞こえますね。今まであんまり気にしたこと無かったですけど、自分の体調次第ではもしかしたら耳障りに感じることがあるかも」

そうか、やっぱり聞こえるんだな。そして場合によっては気になるかもしれない、と。

では、改めてじゃがりこサイレンサーを装着したらどうなるだろうか。

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じゃがりこを食うイノシシ。改めて写真で見ると、ぼんくらな絵面だな。

パカッとドアを開けてじゃがりこを挿入し、素早く閉めてからザクザクザクと噛み砕く。

振動が直接耳に響いているので、自分ではさっきと変わらずに音が聞こえている。が、問題は周囲へどれぐらい聞こえているか、だ。

どうですか。うるさくないですか。

「あっ、すごい!さっきまでと違ってほとんど音が聞こえません」

おお、やった。成功だ。

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念のため、普段よりもわざと大きい音が出るように勢いよく噛んでみてます。

「耳障りな高中音域がカットされてるっぽいので、ぜんぜん気にならないですよ。よーく耳を澄ますと低音域がやや残ってるんですが、それも新幹線の振動でかき消されてます」

ちなみに石川さんとのこの会話もじゃがりこサイレンサーを装着した状態で行ったのだけど、フロントドアを閉めたままだと僕の声もほとんど聞き取れないらしく、何度も「えっ、なんですか?」と聞き返されてしまった。
うん、間違いなく効果あるよねこれ。

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ちなみにデシベルメーターではザクザク音を計測できず。

よし、あとはデータで裏付けも取れれば…!と思って石川さんの席にデシベルメーターを置いて測ってもらったのだが、これは残念ながら新幹線の振動音の方が大きすぎて駄目だった。

ずっと65〜75db前後の音が続いているので、サイレンサー装着前後ともじゃがりこのザクザク音が数値的に拾えなかったのである。
惜しい。

慣れれば意外と快適…とまでは言えないけど

さて、なんとか5分以内で実験と撮影が終わったので、品川まで残りの2分はじゃがりこサイレンサーの快適性を確かめてみよう。

まず意外だったのは、制作時から面倒だろうと思っていたフロントドアの開閉が、わりとすぐにルーチンとして受け入れられた、ということ。

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リラックスして、スマホ見ながらザクザクいってます。

開ける、じゃがりこ突っ込む、閉める、ザクザク、開ける、じゃがりこ突っ込む、閉める…という流れが気付くと自然になっていて、そんなに面倒くさくないのだ。

いや、そりゃ開閉動作なんか無い方がスムーズなのは分かってる。でも、開閉があるとじゃがりこを一本ずつしっかり食べるようになるので、カップが空くまでに時間がかかる。

今までは下手すると新大阪→京都間の13分で食べきっていたじゃがりこが、もしかすると名古屋あたりまで保つかもしれない。コスト的にお得だろう。

対して、当たり前だけどデメリットもあった。
じゃがりこ(に類する細長い食べ物)以外はまず食べられないということ。

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同じく音がうるさめの食べ物として持参したうなぎパイ。うん、入らない。

ドアを小さく作りすぎたせいで、他の食べ物が通らないのである。

よしんば通ったとしても、ドアから口までの距離があるので、長いものじゃないと届かなかった。この辺りは次の改良点だろう。

もちろん飲み物も駄目だ。お茶を買う時には「ストローください」とお願いする必要があるな。

あと、当たり前すぎるけど、そこそこ息苦しい(医療用マスクより空間があるだけちょっとマシ、ぐらい)。

とはいえ、これさえ着けていれば周囲への音を気にせず自由にじゃがりけるのが分かったのは福音である。


…で、ここから追記。
実はこの取材の時は焦っていたため、動画を撮るのをすっかり失念していたのだ。

あとから「やっぱり動画があった方が、どれぐらい音が減衰しているか分かりやすかったかもですね」と石川さんと話していたが、まぁ時間も無かったししょうがないかなー、と。

ところがタイミングの良いことに本稿の〆切直前(前日)に新幹線で大阪へ行く私用があったので、なんとか動画が撮影できたのである。

なるほど、確かに食べ始めの「カリッ」という音とか、ほぼ聞こえないな。

というわけで、こちらがじゃがりこサイレンサー有る無しの比較動画となります。ご査収ください。 


改めて動画の音量を上げて良く聞くと、まだやっぱり低音の「…ザクザク」という音はかすかに残っているっぽい。

しかし改良を進めてこの低音部までカットできる性能を得ることができれば、夢の「映画館でじゃがりこ」や「クラシックコンサートでじゃがりこ」「お葬式でじゃがりこ」なんてことも叶うかも知れない。

カルビーさん、新たな市場開拓のチャンスかもしれないので、良かったらネオじゃがりこサイレンサーを共同開発しませんか。

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ほんとギリギリだったので、サイレンサー外す時間もなく新幹線から降りました。焦った。
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