特集 2018年11月26日

錯視罫で書きにくいルーズリーフを作る

なんでこんなものを作ったのか、自分でも分からない。

文房具というのはいろいろと進化していて、例えばルーズリーフの紙ひとつとっても紙が上質になっていたり、罫線が視認しやすくなっていたりと、昔と比べて書きやすいものになっている。

ただ、それでいいのかという思いも無くはない。書きやすいだけがルーズリーフの進化なのか。それが善なのか。

逆にアレだ。書きにくい方向に良くなってる、という解釈で進化してみるのもありだろう。

これは、そういう勢いだけで『書きにくいルーズリーフ』を作って後悔した話だ。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。

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書きにくさ、とはなにかを考える

なんでそういうことを言い出したかというと、ノートやスケッチブックでお馴染みのメーカー、マルマンの製品にその名もずばり『書きやすいルーズリーフ』というのがあるのだ。

自分からそう名乗っちゃう、というのも大概な心臓だが、でも実際に厚手の良い紙で書き心地もなめらか、インクの裏抜けもしないという良い製品である。

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どんだけ自信あるんだ、マルマン。 ​​​​

で、友人とこれを見ながら「じゃあ逆に書きにくいルーズリーフってどんなんだよ」という話になった。

例えば物理的に紙がザラザラしてたり、インクが乗らないほどツルツルしてるのは書きにくそう。(紙やすり・油紙のルーズリーフ化)

しかし紙から無茶するとルーズリーフっぽく罫線を引くのが大変だし、量産化も難しい。もっと手軽に印刷レベルで書きにくさを出せないものか…と考えているうちに思いついた。

罫線が真っ直ぐじゃなくて歪んでたりしたら、だいぶ書きにくそうじゃないか。

 

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思いついたら即作る。「俺はなんでこんなもの作ってるんだろう?」とかそういう心のツッコミはノイズであり邪念なので、無視しよう。

とはいえ、本当に罫線が曲がってるのはなんかフェアじゃない気もする。

できれば、文房具としての正しさは保ちつつ、使ってるあなたが勝手に書きにくく感じてるだけですよ?という立場が取りたい。責任は取りたくないのだ。

ちゃんと真っ直ぐの罫線なんだけど、でも真っ直ぐに見えない罫線…つまり錯視を応用した「錯視罫」の発明である。

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画期的な錯視罫を用いたルーズリーフの第1案。見た目もできる限り本物のルーズリーフ用紙に揃えてみた。
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拡大して見ると、書きにくさが伝わるだろうか。

これは、平行線に互い違いに斜線をいれると傾いて見える、「ツェルナー錯視」というものだそう。
拡大すると特に分かりやすいが、でも手にとって実物を眺めていると、紙面全体がガタガタと傾いて感じて本当に気持ち悪い。うっかり体調悪い時だと酔うぐらい。
書きにくいというか、気持ち悪いルーズリーフである。

ついでに、第2案・第3案も作ってみた。

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書きにくいルーズリーフ第2案は、罫線の長さは同じなのに違って見える式。
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罫線の端が矢印になっているので、長さが揃ってないように見えるアレ。

第2案は、わりと錯視としてはお馴染みの、罫線は同じ長さなのに矢印の方が短く見えるという「ミュラー・リヤー錯視」というやつ。
これも眺めているとけっこう気持ち悪いが、なによりも文字の行頭揃えがやりづらくて書きにくいんじゃないか、と考えた次第である。

そして第3案は、横罫だけじゃなくて5ミリ方眼罫も作ってみた。

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これを方眼罫と呼んでいいのかやや不安の残る第3案。
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ボンヤリ眺めてると眼がチカチカしてくる系方眼。

これは「きらめき格子錯視」というもので、白いドットの中に暗いドットが浮かぶように見える。
紙面がグレーだし白のドットはデカいしそもそも罫線の太さが1ミリあるしで方眼として役に立つかはやや微妙だが、見てるだけでも面白いので作ってみた。

今回の3案とも、記事のラストに印刷用のPDFを置いておくので、気になる人はプリントアウトしてください。

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