きっかけは妻の世界一周旅行
我が家は、今年の2月から妻が世界一周旅行に行っている。
もともと、妻が料理、僕が掃除・洗濯という形で家事を分担していたので、今は食事の担当者がいない状態だ。
そうなると当然、食事は自分で用意するということになるのだが、もともとひとり暮らしのころから自炊があんまり好きではなかったので、妻が旅に出て以来目にみえて外食が増えた。最寄り駅前のやよい軒や餃子の王将には本当にお世話になっている。
でも、この生活が始まって9か月、さすがに最近飽きてきた。
そんな中で行ったのが冒頭の魚民。白ごはんがあるうえに、数百円のおかずが和・洋・中なんでも揃っている。これなら、自分好みのカスタマイズ定食が無限に作れるんじゃないだろうか。
1,000円以内で定食をつくる
チェーンの居酒屋で定食が食べられるようになれば、晩ご飯の選択肢がかなり広がる。それはつまり生活の質が上がるということ!そんな期待を胸に、この思いつきのきっかけになった魚民に向かった。
今回は、次のルールで魚民定食を考えてみる。
ルール1:税抜き1,000円以内で考える
僕が求めているのは、普段の晩ご飯で選択肢に入る定食。それを考えると、値段はどれだけ高くても1,000円以内にはおさまってほしい。魚民のメニューは税抜き表示だったので、分かりやすく税抜き1,000円以内で考えることにした。
ルール2:お通し代や席料は含めない
居酒屋なので、厳密にいえばお通し代や席料がかかることが多い。でもそれを1,000円に含めてしまうと、ご飯と漬物だけというような、生活の質の向上からはほど遠い定食になってしまいそうなので、今回は無視することにした。
ルール3:注文するものを他の人には言わず、実際に運ばれてきてからのお楽しみにする
これは、何となくその方が盛り上がりそうだったからです。
無言になっていく参加者たち
さっそくメニューを見ながら定食を考え始める。最初は、おかずになりそうなメニューの多さにときめいたり、「これが美味しそう」などと無邪気に言いあったりしていた。
しかし10分もすると、みんなだんだん無言になり、電卓をいじったり、ブツブツ言いながらメモを取ったりし始めた。
究極の選択!「ご飯セット」か「白ご飯単品」か
みんなが無言になっていったのには理由がある。それは、メニューを熟読して情報が整理されていくにつれて、完全に理想的な定食をつくることはできないということが分かってきたからだ。
良い定食には、「メインのおかずの魅力」「バランス」「その日の気分に合う」の3つが大切だと思う。
しかし、メニューをながめているうちに、1,000円以内という制約とメニューの値段設定から、魚民でこの3つの柱をすべて満たすことは難しいということが分かってきた。その結果、全員が「何を取って何を捨てるべきか」という悩みのループに陥ることになる。
最大の悩みどころは、定食の屋台骨であるご飯を単品にするか、味噌汁がついてくる「ご飯セット」にするかということだ。これによって、おかず選びが大きく変わってくる。
ご飯セット(ご飯+味噌汁)を選んだ場合
まず、ご飯セット(ご飯+味噌汁)を選んだ場合、選べるおかずの選択肢はこの図のようになる。
この場合、味噌汁はあるし、おかずも2品つけることができるのでバランスとしては申し分ない。ただ、メインで選べるおかずの種類がすごく少なく、かつ一般的な定食と比べると見劣りしてしまう。
たまたま「今日はベーコンエッグの気分だな」という日だったら良いが、なかなかそういう日は少なそうなメインが並ぶ。
ご飯単品を選んだ場合
一方で、ご飯を単品にした場合はこちら。
餃子や唐揚げ、カマの炙り焼きなど、定食界のエース級のメインおかずがたくさん選べるようになるし、副菜もつけることができる。ただ、味噌汁がないというさびしさは残る。
野菜をどう取るか?
加えて、野菜をどう組み込むかという点も、我々の悩みを加速させた。
副菜としてサラダを入れたいところだったが、居酒屋のサラダは最低でも498円と、メインのおかず並みに高かった。
となると、428円/398円/328円といった中から野菜系のものを入れようとなるが、こちらはこちらでお酒なしではしょっぱそうなものが多く、定食の副菜として迎え入れるには二の足を踏んでしまう。
もし小学生の僕にこの定食づくりをやらせたら、迷うことなく唐揚げと焼き鳥を組み合わせていただろう。でも、大人になった僕はそんなことはしない。心の中の自分が「野菜も食べなさい」と働きかけてくるからだ。
その結果、野菜をどう取り入れようかということにこんなにも悩んでいる。大人になると悩みが増えるというのは本当だった。
悩むこと30分。ついに注文。
こうやっていろいろな方向から悩んだ結果、メニューを見始めてから30分以上がすぎていた。とても定食を選ぶためにかかった時間とは思えない。
そんな、悩みに悩んだ我々が最終的にたどりついた定食を見ていただきたい。
まずは私のものから。
沖縄風ニラ玉定食
当初、絶対に味噌汁はつけたいと思っていたけど、ご飯セットの時に選べるメインのおかずがいまいちだったので早々にあきらめた。
ならば鶏の唐揚げ(498円)をメインにしたいと方針転換したものの、合わせられる副菜で野菜系のものが「かちわり梅塩キュウリ」だけで、しょっぱそうだったので、この路線も断念。
副菜の選択肢を広げらるように、メインのおかずを428円と448円の中から再検討したところ、「沖縄風ニラ玉」ならメインのおかずで野菜が取れることに気づいた。ならば副菜は野菜が入っていなくてもさっぱりしていればOKと思い、「ネギダレ塩昆布やっこ」と「桜海老としらすのめちゃうまネギ」で迷って前者をチョイス。定食ができあがった。
これだけの検討プロセスを経て誕生したオリジナル定食。全ての品が運ばれてきて並べてみると、「おぉ、俺の定食!」と嬉しくなった。
メニューでは1つ1つの写真しか見ていなかったので、合わさるとどんな感じかなと思っていたけど、並べてみたらしっかり定食として様になっていたのも嬉しい。
海鮮モダン焼き定食
続いてはタナカさん。「かなりお腹がすいていたので、とにかくガッツリ食べたかった」ということでこのチョイス。自分の欲求に素直に従って、1,000円ギリギリを狙おうとしていないのが潔い。そしてやはりこう見ると味噌汁がうらやましい。
定食はもっと自由で良かった
寿司定食
最後はナトリさん。
まさかの寿司に、僕とタナカさんがざわつく。
話を聞くと、「最初はやっぱりご飯セットにするか単品かというところで考えていたけど、普段あまり外食をしないから、せっかくなら家ではなかなか作れないものを食べようと思った」とのこと。
今回僕はチェーン居酒屋に「やよい軒の代わり」を求めていたので、白ご飯ありきの定食を勝手にイメージしていたが、確かに言われてみれば世の中に寿司定食というものはある。定食は、もっと自由で良かったのだ。
こうして、三者三様という言葉が当てはまりすぎるぐらいに、方向性の違うそれぞれの定食ができあがった。
他のチェーンでもやってみる
魚民での定食づくりがすごく盛り上がったので、別の日に他のチェーンでもやってみることにした。各チェーンの特徴が出て面白かったので、こちらもご紹介したい。
定食づくりに向いている「金の蔵」
安めの居酒屋代表ということで選んだ金の蔵は、まず何よりメニューがすごくシンプルだった。
魚民で迷いのもととなった「ご飯セット」もなく、おかずの料金体系もシンプルなので、1,000円以内ならおのずとご飯+おかず2品に導かれる。魚民では注文まで30分以上かかったが、ここでは10分もかからなかった。金の蔵は定食づくりに向いている居酒屋だ。
漁師町の食堂「磯丸水産」
続いて磯丸水産。ここは海産物をそのまま活かしたメニューが多く、期待通り、漁師町の食堂のような定食ができた。
食後にさらに盛り上がる
さて、無事に定食もつくれたし、お腹も満たされてひと段落。と思いきや、実はここからさらにもう1段階盛り上がりが待っていた。みんなでもう一度メニューを見ながら、もっとこうしたら良かった、この組み合わせもありだったかも、など振り返る時間があったのだ。
特に今回、注文するまでは他の人と相談しないというルールにしていたので、話したくても話せなかった迷いや葛藤が食後にあふれ出した。
しかも、いちど定食づくりを経験してそれぞれのメニューの味やボリュームを確認した後なので、みんな最初よりもう一段階深い視点でラインナップを検討できるようになっている。
最終的には、「◯◯を固定にして定食をつくるとしたらどう組むか?」などお題を出し合うところまで発展していた。
居酒屋で定食をつくると、食後にそのままメニューを肴にした飲み会もできることが分かった。
居酒屋で定食をつくるというゲーム
「晩ご飯のバリエーションを増やす」という目的で始めたチェーン居酒屋1,000円定食チャレンジだったが、実際にやってみると、思っていた以上に迷うポイントがいろいろあってゲームとしても盛り上がった。これ、カードゲームにできるんじゃないだろうか。
自宅の最寄り駅周辺を調べたら、「土間土間」や「はなの舞」など、まだまだチェーンの居酒屋がたくさんあった。これからも開拓して、ひとり暮らしの晩ご飯ライフを充実させていきたい。
過去記事より、こちらもどうぞ
居酒屋を定食屋づかいする