僕が考えた海ごはん山ごはん
6月26日、代々木公園は思い思いの休日を過ごす人たちがたくさんいた。楽器の練習、絵を描く、ベンチで昼寝、フリスビーであそぶカップル。
思い思いの振れ幅のいちばん端に「缶ぽっくり」がある。
まずは缶についた汚れを洗う。この一斗缶は南青山の和食屋さん「京菜」でもらってきた。
気温は30度を超えているので水が気持ちいい。一斗缶に太陽が反射して水がきらきら光る。
いま僕、「海ごはん山ごはん」みたいじゃないだろうか。さわやかな男女が外でごはんを食べる番組だ。撮影係として同行してもらった住さんにそういうと、
「いや、どちらかというとホームレスです。」
ああ。たしかに、ホームレスの人が同じ缶でたき火をしているのを見かけるな…。缶切りでふたを開けながら話をする。
「でも、これは僕の25年来の夢ですから」
「四半世紀越しの」
「今日のことも25年後に思い出すんですかね」
「………。」
58歳の僕はどんな思いで一斗缶ぽっくりを思い出すだろう。意外に缶ぽっくりに乗っていたりするのだろうか。
ふたが取れた。我慢しきれずに缶の上に乗ってみる。
「おお!」(林)
「おー」(住)
缶は約30センチなので2メートルの視点だ。がぜんやる気が出てきた。
いろんな知恵を総動員して
ひもを通す穴を開ける。
「これでいいかな。あれ、通らない」
「なんか知恵が試されている気がしますね」
缶ジュースを買うように訓練されてるチンパンジーってこんな気分なんだろうか。ウキ?ウキキ?
穴をドライバーやペンチで広げてロープを通す。このロープは住さん提供の「船も結べるロープ」だ。ロープを適当な長さで結ぶ。結び方は住さんが知っていた「船も結べる結び方」である。
まだ片方だけだけど、乗ってみる。ひもを引っ張ってみる。
こ、こ、これは…、おもしろい。おもしろいぞ!
ひもを引っ張ると自動的に足があがる感覚、力まかせの浮遊感。